EVANGELION : LAGOON
Welcome to H.S.D. RPG.
CAR-BATTLE in TOKYO-3, 2015.
by N.G.E. FanFiction Novels,
and RACING LAGOON.
Episode 12. | She said,"Any happiness is not needed, if it's with you." |
第3新東京、NERV本社。
ゲンドウの執務室には、冬月先生と赤木博士がいた。
冬月先生が電話で話している。
部屋の空気が張りつめている。……状況に大きな進展があったようだ……
「……分かった。君たちは引き続き追跡を続けてくれたまえ。こちらからも追撃部隊を送る。
…………ああ、そうだ。……では頼んだぞ」
通話機を置く冬月先生。
「……六分儀。……
ついに彼らが動いたぞ。東名高速経由でこちらに向かっている」
「………………」
さすがに焦った様子で言う冬月先生。
ゲンドウは腕組みをしたまま黙っている。
「……赤木君、葛城君に連絡を取ってくれたまえ。
出撃だ、とな」
「了解しました。……レイにも、伝えますか?」
赤木博士が尋ねる。
「ああ、そうだな「……待て」」
冬月先生の言葉をゲンドウが遮る。
ゲンドウが顔をわずかに上げ、サングラスがきらめく。
「BlackKnights小隊は目標の後方2kmで待機。こちらからの指示があるまで交戦は控えさせろ。
……レイには状況のみ伝えておけ」
「しかし、六分儀会長……
……分かりました。では私はKnight-1に同乗します」
「うむ。良い報告を期待しているぞ」
赤木博士は聞き返すが、ゲンドウは視線でそれを止める。
冬月先生は退室する赤木博士を見送る。
ちなみに「BlackKnights小隊」というのは葛城のチーム「横須賀BlackKnights」のNERV内での呼称、「Knight-1」とは葛城のNSXのことだ。
部屋に残った冬月先生は、ややあってゲンドウに聞いた。
「……六分儀……
この機会に捕獲はせんのか?逃すとまたやっかいだぞ」
ゲンドウは得意の腕組みポーズを崩さない。
「たとえTRIDENTを接収したとしても……WON-TECは返還を求めてくる。
……ならば消すまでだ」
「…………しかしな…………まあ、それはそれでアリ、か……」
冬月先生は窓際に立ち、眼下に広がる第3新東京市を見下ろす。
街は地上の星空、そして首都高は銀河。
……僕たち走り屋の戦場……
………なんびとたりとも冒すことのできない海………
新首都高速、横浜環状線。
……今はまだ、沈黙を守っている…………
耳障りな電子音が響く。
……微睡んでいた僕の意識は、眠気を残したまま覚醒へと引き上げられた。
電話か……綾波先輩の携帯だ。
「……もしもし」
僕には電話の内容は聞こえない……
『もしもし、レイ?赤木です。
……TRIDENTが現れたわ。今、横羽線を第3新東京市に向かって下ってる。
ミサトたちが追撃に向かったけれど……レイ、あなた今どこにいるかしら?』
「……今は自宅ですが」
『分かった。じゃあそのまま待機していて。進展があれば連絡するわ』
「……!私はすぐに出られますが……?」
『六分儀会長の命令よ。今回は私たちだけで対処するわ』
「………………分かりました……それでは」
通話を切る。
僕はベッドから身体を起こし、綾波先輩の顔をのぞき込んだ。
「なにかあったの?」
「……いえ、なんでもないわ。……ごめんなさい、起こしてしまったわね」
綾波先輩は僕の身体を再び横たえる。
見下ろされて……僕は、ゆっくりと目を閉じる……
「…………今はまだ……休んでいて…………」
覆い被さるように……僕の身体を抱く。
僕は再び、微睡みの中へと沈んでいく…………
綾波先輩の、重みを感じながら……
横羽線を下る2台のスープラ。
一般車もほとんどいなくなり、スピードレンジは軽く200km/hを超える。
あたりは、静まりかえっている。
「……静かすぎるな……走りやすいことはいいんだが……どうも、やな感じがするぜ……」
呟くムサシ。
ほどなく、その予感は的中することになる。
スープラたちから離れること、距離にして約3km。
横須賀BlackKnightsメンバーは、リーダー葛城のNSXの指揮のもとTRIDENTを追跡していた。
葛城のNSXにはNERVのホストコンピュータとリンクした端末が搭載されており、各所に設置された交通モニターを通じて目標の追跡ができる。
「このまま第3までいっきに行くみたいね……」
葛城は無線のキーを押し、他のメンバーに連絡する。
「日向君?目標をとらえたわ。奴らは横羽線を約200km/hで第3新東京方面へ走行中。
横浜環状で迎え撃つわ。石川町ICで待機していて」
『了解、葛城さん』
TRIDENTの後方から葛城のNSX、伊吹さんのMR-S。石川町ICから日向さんの33R、青葉さんのS2000。
そして、横浜環状でTRIDENTを挟み撃ちにする。
今夜は日曜のためか一般車はほとんどいない。
ちょっとでもクリアがあればすぐにトップスピードに到達する。
……いつもとは、感覚が違う。
一方、廃工場での耐久バトルを繰り広げている惣流のFDと霧島の180SX。
バトルは5周目に突入していた。
「……なんとか……コースは覚えてきたけど……
走りにくいったらないわ……!」
レイアウトという概念をまったく無視してコーナーが折り重なる。
一見通れそうでも、見た目通りのラインを描けない。
トリッキーを通り越して危険なコースだ。
先行するFDのラインをトレースすることでどうにかついていけてる。
そのことが、霧島の焦りをさらに大きくする。
どんなに攻め込んでも差を縮められない。
近づけない。裏返せば、一度ミスしたら二度と追いつけない。
「くっ……私は……負けられない……!」
霧島は、惣流、綾波先輩、そして僕が同じランクにいると思ってる。
だからここで惣流に負ければ、もう一生僕についていけない、と思ってる。
いつか、雨の湾岸でバトルしたとき……
交流戦の夜、元町Johnny'sから帰るとき……
いつも僕にあっさりちぎられて、ついていくことすらできなかった。
それがなによりも悔しい。
部屋に帰れば、手の届くところにいるのに。
自分がもっとも価値をおいている場所で、最も遠くなってしまうそのもどかしさ……
これが最後のチャンス。自分の中で、けじめをつける場所。
目の前のFDに、Zをダブらせてる。
「…………マナ……分からないわね。どうしてそこまで自分を追い込むの?
今のアンタはそう……自分から破滅を求めているよう。
まるで……あのZみたいに…………」
必死に食いついてこようとする180SXをバックミラーに見て、惣流は呟く。
いつ吹っ飛んでもおかしくない。
限界を分かっているのか……
これ以上踏んだら死ぬ、その境界を分かってそこまで攻めているのか。
「何があったのか知らないけど……マナ、アンタ入れ込み過ぎよ……
気持ちばっか先走ったって、速くは走れないわ…………」
わずかな直線にさしかかり、惣流はハザードを1回つけてFDを左に寄せた。
「ま、前に出ろって……?」
一瞬面食らう霧島。
ためらっていると、FDがアフターファイヤーで煽る。
前に出れば、たどれるラインはない。自分でペースを作らなければならない。
霧島は思いきってFDをパスする。
ヘッドライトをハイビームに切り替え、すこしでも広い視界を確保する。
「さあ、ここからが本番よ。アンタの走り、アンタ自身の走り……アタシに見せてみなさい……!」
180SXの後方につき、バンパーを軽く押す。
誰も助けてはくれない。
誰も、見てはくれない。
……そこにいるのは、自分一人だけ……
どこまでも果ての見えない、虚無の闇の中へと……
……未来なんて、見ていない。
「……ムサシ…………
…………シンジ君………………!!」
終わりのないバトル。
その先に何があるのかなんて見えない。
ただ、過ぎ去った想い出が惜しい。
もしこのまま自分が消えたとしても、誰も見つけることなんてできない。
今、この世界にいるのは自分だけなんだ。
果てしない孤独……
………いや、違う………
惣流がいる。今、バトルしている相手がいる…………
1人じゃ、ない。
「走りは孤独…………でもっ!
仲間がいれば……ひとりじゃないっ!!」
触れることはなく……それでも、近くにいると感じる。
同じ風を切って走る仲間……自分にも確かにいた。
振り切ってきたはずの過去が……再び、よみがえる。
『……マナ、お前も来いよ。
一緒に……やろうぜ』
霧島とムサシ、ケイタは幼なじみだった。
霧島は小さい頃からメカやクルマが好きで、将来は走り屋になりたいと思っていた。
……だけど、霧島の実家は経済的に苦しい家庭で…………金も手間もかかるスポーツカーを購入して、さらには走りを極める、なんて余裕はなかった。
半ば、夢をあきらめかけていたその時……ムサシの誘いで、WON-TEC社でドライバーの仕事を得ることができた。
極秘裏に進められていた新型スーパーカーの開発…………だが当時の霧島にとって、そんなことは関係なかった。
ただクルマに乗れることが……好きなだけ、走り回れることがうれしかった。
もっともまだ免許を取れる年齢ではなかったため、公道は走れずテストコース内だけでの走行だったが……
霧島のドライヴィングはすぐに上達し、3人の中でもいちばん速くなった。
そのおかげもあって、「TRIDENT」と名付けられたその新型車開発プロジェクトは順調に進んでいった。
不思議な気分。
わずかな心の乱れも許されない極限のバトルなのに、なぜかこうして暖かい思い出に耽ることができる。
ストリートに出るにあたって手に入れたこの180SX……TRIDENTとは性能も何もかも違うけど、こうして走っているとすべてが鮮やかに思い出せる……
「あの頃は……厳しい性能テストもぜんぜん苦にならなかった……
わずかなパーツの、フィーリングの違いを感じながら走る……そのことに、かけがえのない歓びを感じていた……」
開発スタッフは皆自分よりずっと年上で……だけど、そんなことは現場では関係なかった。
クルマという機械を愛し……無機的な金属とプラスチックの集合体であるはずのクルマに、愛されること……
走りを志す者なら……誰もが、共通の感覚を持ってる。
充実した毎日……これ以上の幸せなんてないと、思っていた。
「今」が、崩れ去るということがなければ。
「もう……これで何周めだろ……?さすがに、ちょっときつくなってきたなぁ……
…………でも、私はまだまだ平気……苦しいのは、180SXだって一緒なんだから……」
タイヤは熱ダレがひどく、もうグリップ力はかなり落ちている。
エンジンは油圧がすこし落ちているが、まだいける。
ブーストもまだしっかりしてる。
……あとは自分の体力がどこまで持つか……
長いストレートのあるサーキットと違い、このようなストリートのステージではコーナリング状態にある時間の方が圧倒的に長い。
すなわち、強い横Gと格闘しなければならない時間がとてつもなく長いということだ。
身体をしっかりサポートするバケットシート……固定された身体で、コーナリングに伴う重力をすべて受け止めなければならない。
「それにしても…………タフな奴ね、見かけによらず…………」
180SXを追うFD。
「アンタ……確か19だっけ?……このスタミナ、一朝一夕で身につくもんじゃないわよ……
地道な走り込みを何年も続けて……そうして初めて、横Gにシェイクされてもゲロを吐かないタフな内臓ができあがんのよ……
……ハッタリは通じない……このアタシに……どこまでついてこれる!?」
惣流も体力に自信はある。
この形式での耐久勝負も何度となく経験している。
疲労によって集中力がなくなれば、マシンの挙動に対する反応が遅れ、制御できなくなる。
だが霧島の180SXは、グリップの低下によってペースが落ちていること以外は決定的な破綻をきたしていない。
まだ、マシンコントロールを保っている。
一方、FDも長丁場のバトルに備えてパワーを落としているもののハイチューンエンジン故に熱ダレが激しい。
ドリフトによって走行風を受けにくくなるため、水温が危険領域に近づいている。
……だが、まだこれからだ。
疲労が限界に達し……すこしでも集中が途切れれば、そこで勝負はつく。
互いの手の内はもう出し尽くしている。
あとは、隙を見せた方が負ける。
「正直、アンタのことはただの雰囲気組だと思ってたのよね……それがどう?ここまでアタシとタメ張れる奴なんて、そうはいないわよ……
……くくくっ、いい根性してるわマナ。
意外とアタシら……気が合うかもねっ!!」
接近ドリをかまし、プレッシャーをかける惣流。
もうクルマの差は関係ない。
ドライバーとドライバーの勝負。
……互いのすべてを、ぶつけあう。
「この感じ……味わうの、すごく久しぶり……
……私、忘れてたのかもね。……大事なこと……私が求めてたこと、それはそんなに特別なことじゃない……」
畳みかけるように連続コーナーへ飛びこむ。
イン側のFDを抱き込むように……180SXと、FDのラインが重なる。
気持ちが、シンクロしてる。
「……近づくのも……離れるのも……そう、それは他でもない私の意思……
シンジ君に近づきたいなら……自分の意思で、もう一歩踏み込んでいかなきゃならない……
……いつだって、手を引いてくれるヒトがいるわけじゃない……
………私の意思で………私の力で、目指すものに向かって、走り出す…………」
二度と、交わることのない時間。
奇蹟は誰の目にもとまらず……誰よりも、何よりもその当事者たちだけが、共有してる。
誰も見守る者はいない……
ただ蒼い月だけが、2人を照らしてる。
横羽線。第3新東京市に近づいてきた。
TRIDENTは生麦JCTを直進、横浜環状内回りに進入する。
葛城は石川町ICで待機する2台に連絡する。
「日向君、目標は内回りに入ったわ。そっちも出て!」
石川町ICより、横須賀BK33R、S2000発進。
目標に気付かれた様子はない。
「…………!?ミサトっ、これ……」
NSXのナビシートでレーダー画面を監視していた赤木博士が驚いた声を上げる。
葛城は視線を正面に固定したまま聞いた。
「どしたのリツコ?」
「……どうやら、ゲストのお出ましのようね」
NSXのレーダーに、後方から猛スピードで接近してくるもう1台のクルマが映っている。
推定速度は250km/h以上。明らかに走り屋のクルマだ。
「Knight-1より全機へ!どーやら乱入希望のぶわぁかがいるみたいよ!もうすぐこっちと接触するわ」
「ミサト、来るわよ!」
「わーってるわよ!どこのどいつぅ!?」
NSXのバックミラーが激しいパッシングを反射した。
2秒と間をおかず、そのクルマのシルエットが現れる。
すかさず赤木博士がバックモニターをそのクルマに向け、パターン照合する。
……表示は、「BLOOD TYPE : BLUE」。
識別名「YUMEMI」。
「……ミサト、ビンゴよ。12使徒、『夢見の生霊』……
どうする?彼の狙いはTRIDENT……それとも、私たちなのかしら?」
夢見の生霊……その鮮やかすぎるほどの黄色いカラーリングは、首都高の走り屋たちからは死神と恐れられるほどだ。
恐怖を感じないのかと思わせるほどの常軌を逸した危険な走行が彼の特徴。
幅寄せやバンパープッシュなどはもはや当たり前で、両サイドの隙間がわずか数cmしかないような状況でも構わず突っ込んでいく。
この世のものとは思えないほどの走り……「生き霊」と呼ばれる所以だ。
YUMEMI : 11th ANGEL YOKOHAMA KANJOU Entry list
おれもおまえもフルスロットル 価値のある敗北なんて 路上には転がってないさ |
大型の白いGTウィングを掲げ、エッジを立てた攻撃的なフルエアロを纏った黄色いNSX-R。
フロントバンパー中央、TypeRの象徴である紅いHONDAエンブレムを取り払い、代わりに12使徒のシンボルである仮面のエンブレムが貼り付けられている。
シルエットは紛れもなくHONDA NSXなのに、その姿はあたかも異形の兵器のようだ。
NSX-Rは葛城のNSXには目もくれずにパスしていく。
アフターファイヤーを噴き上げる4本出しのマフラーはフルストレートのようだ。
リヤディフューザー脇のスリットから、ブローオフの排気を吹いている。
「ぷぅ〜まさにバケモンねアレ。
こりは見物かもよ?あたしも久々に本気になれそうね」
「……今は作戦中だということを忘れないでね」
NSX-Rを追う葛城。
第3新東京市の夜景を背に、2台のNSXが疾走する。
「こちらKnight-1。マヤ、12使徒が現れたわ。構わず行かせて」
『は、はい先輩〜』
伊吹さんのビビリ声をかき消すように、NSX-Rのエキゾーストサウンドが重なる。
NSX-Rに続き、葛城のNSXがMR-Sを圧倒的な速度差で抜き去っていく。
「はぁ〜、葛城さんすごいです……」
NSX-Rは、12使徒の名を冠するだけあってとてつもなく速い。
特にコーナー立ち上がりから直線にかけての加速はNSXを明らかに凌いでいる。
「リツコ〜、あいつぅ、やたらパワーあるんじゃない!?」
「そうね、向こうはターボを積んでいるわ。今までのデータから推測される最大出力は……415.4馬力。
こっちが300馬力弱ということを考えれば……ストレートでは勝負にならないわね」
「かぁ〜400ぅ!?まさしくびっくらこってヤツね〜」
ターボチューンによってパワーを追求すれば、コーナリング中のコントロールがナーバスになるが……夢見の生霊にとってはそんなことは関係ないようだ。
「……ミサト、TRIDENTが来るわ」
2台のスープラが視界に入った。
NSX-Rからのパッシングに気付き、陣形を解いてバトルモードに入る。
「くぅっ、こっちはちょっとからめないわねっ……」
NSX-Rの全開加速についていけない。
ひとまずここはバトルに参加せず、後方で様子を見る。
NSX-Rは2台のTRIDENTのうち、片方に狙いを絞るようだ。
2台はまったく同じ装備、デザインで見分けはつかない。
「ふふふ……これは興味深いデータがとれるわ」
「リツコ、あんたも怖いわよ……」
鬼気迫る表情でキーボードを叩く赤木博士。
さすがの葛城も冷や汗をたらす。
TRIDENTにまったく隙を与えず、横に並ぶNSX-R。
格の違いを見せつけるように、コーナー立ち上がりでいっきに前に出る。
TRIDENTはナイトロを使ってオーバーテイクを試みるが、あっさりブロックされてしまう。
「さすが、12使徒ね……」
葛城も言葉を失ってしまうほど、夢見の生霊、そしてTRIDENTの走りは凄まじい。
左コーナーが迫る。
NSX-Rはここで、わざとスペースを空けるように第1車線に寄った。
すかさずTRIDENTはそこから上がってこようとする。
「……!リツコ、NSX-Rが仕掛けるわ!」
このあたりは葛城の野性のカンだろうか。
車間を詰め、クロスするラインから外れる。
「…………っ!!」
ブラインドのS字、インをついてNSX-Rに並ぶTRIDENT。
だが立ち上がってすぐに次のコーナーが迫り、インとアウトが逆転する。
TRIDENTのフロントタイヤから白煙が上がる。
グリップ限界を超えてブレイクするTRIDENT。
NSX-Rが、入れ替わったイン側から押し出すようにTRIDENTにプレッシャーをかける。
後方にいたもう1台のTRIDENTは、反射的に減速して車間を開ける。
「イった……!」
そう葛城が呟くと同時に、NSX-Rに押し出されたTRIDENTが側壁にヒットした。
もんどり打つようにフロント、リアを打ちつけ、火花をまき散らしながらスピンする。
もう1台のTRIDENTはすんでの所で追突を回避し、NSX-Rを追う。
だが、一度減速してしまってはもう追いつくことはできないだろう。
NSX-Rは我が物顔で走り去っていく。
クラッシュしたTRIDENTはアウト側の路肩に止まった。
駆動系にダメージを受けたのか、再び動き出す様子はない。
「こちらKnight-1……TRIDENT-βは沈黙、12使徒に撃墜されたわ。
これより作戦をフェイズ2に移行、TRIDENT-βの確保を最優先とします」
葛城が通信で全機に指示を出す。
後から来る伊吹さんにTRIDENTの監視をさせ、他の3台はいったん横浜環状を一周してからTRIDENTの確保に向かう。
一方でNERV諜報部では情報操作を行い、WON-TECの邪魔が入らないようにする。
ここからはNERVとWON-TECの戦い。
これから夜が明けるまでの数時間が勝負の分かれ目だ。
人々が何も知らずに生活しているその影で、状況は進行していく。
霧島がWON-TECに入って、2年目の夏のことだった。
数日前から体調の異変を覚えていた霧島だが、この日も予定されていた走行メニューをこなすべく、いつものようにTRIDENTに乗ってテストコースに出ていった。
そんな霧島の様子が気になったムサシは、走行中にそっと後ろについてみた。
「……ふん、意地張っちまって」
加速し、ムサシを振り切ろうとする霧島のTRIDENT。700馬力近くにも達するパワーを誇るTRIDENT-SUPRAは、霧島の手にかかればまさしく異次元の走りを見せる。
「………………」
だが、この時だけは……違った。
霧島はコースを2,3周しただけですぐにピットに戻ってきた。
明らかに気力が萎えた足取りだ。
「……っ…」
突然、どさりとピット内に倒れ込む霧島。
異常に気付いたムサシやメカニックたちが駆けつける。
「おいマナ、どうした!?」
霧島の顔は青ざめて呼吸が速く、全身に冷や汗をかいてる。
これはただごとではない。
霧島はすぐに病院に運ばれ、そく入院となった。
付き添いで行ったムサシが、担当医から話を聞く。
「今日倒れた直接の原因は過労によるものですが……かなり内臓などが弱っていますね。
患者自身、もともと丈夫じゃないようですし…………
……それと、これは大変申し上げにくいのですが……」
続けて告げられた医師の言葉は、ムサシを愕然とさせるには十分すぎた。
「…………」
霧島の病室の前に立つムサシ。
……どんな顔をして彼女に会えばいいのだろう。
霧島をこんな目に遭わせてしまったのは自分のせいだと……ムサシは苦悩していた。
「……マナ、入るぜ」
霧島はベッドの上で点滴を受けていた。
その顔はひどくやつれて見える。
「……マナ…………」
「…………ムサシ……ごめんね…………」
ムサシがなんと言葉をかけようか迷っていると、先に霧島が口を開いた。
力無くムサシを見つめる霧島の瞳はみるみる崩れ、光を大粒の涙へと変える。
予感はしていた。わかっていた。だけど、ごまかした。今更何を言ってももう遅い……!
「……赤ちゃん……ダメんなっちゃった…………」
言葉のたびにしずくが、シーツを濡らしていく。
「ごめんね……私が悪いんだよ、私がちゃんと言ってれば……こんなことには…………」
自分のお腹を押さえ、ムサシは悪くないと繰り返す霧島。
ムサシは何も言えなかった。
できることは……ただ、彼女のそばにいてやることだけ…………
『2ヶ月間は安静にしてください。それできちんと社会復帰できます。
ただし……あるいは彼女がいちばん望む、改造スポーツカーによる過激な走行などには……
……もう、身体がついていきません』
医師はそう告げた。
これにより霧島は、TRIDENTを降りることを余儀なくされた。
WON-TECとて、ある種問題となる少年ドライバーを公にはしたくなかった。
霧島はプロジェクトTを離れ、もう走りの世界には戻らないと思った。
綾波先輩に出会ったのはそんなときだった。
「……私は誰かの命を犠牲にしてまで……走りを続ける資格はないんです……」
霧島は綾波先輩に自分の身の上を打ち明け……もちろんWON-TECに関することは隠して、最後にそう締めくくった。
綾波先輩はずっと無言で霧島の話に耳を傾けていたが……すべて聞き終わってから、ゆっくりと話しだした。
「…………それがどうしたというの?
……無理でしょう、いくら理屈を並べてごまかしても。
あなたは既に……自分でもわかっているはずよ。
……スピードの麻薬に一度でも取り憑かれたなら……もう……
もう、麻薬なしには生きられない身体になってしまっているということを…………」
視線に射すくめられたように、息をのんで綾波先輩を見つめる霧島。
綾波先輩は霧島を見据え、そして語りかけるように言った。
『あなたはまた、走り出すしかないのよ』
綾波先輩の言葉が、今さらのよう頭に響く。
「走り続けるために何を優先して……何を捨てていくのか……
……私には割り切ることはできない……」
震える180SXのテールが、霧島の心の内を象徴している。
傷つき、打ちのめされ、もうたくさんだと分かっていたのに……
……自分はこうして、また走り出してる。
……魚が水の中でしか生きられないように……同じ魚でも、違う水域には住めないように……
自分はこの世界でしか生きられない。
たとえ他の仕事に変えたとしても、要領よくはやっていけない。
……どうしようもなく不器用だってのは、自分でも分かってる。
WON-TECを離れ……この街、第3新東京市にやってきてから……自分は変わろうとした。
明るく振る舞い、元気のいい女の子を演じた。
……だけど所詮、それは後付けでしかなかった。
…………醜い。
……他人への気配りもろくにできず、他人を傷つけてばかり。
そんな自分が……何よりも、そんな場所にしかいられない自分が嫌いだった。
唯一、救われる場所……
……なんのしがらみもなく、自分が肯定される場所……
そして数少ない、自分を理解してくれるヒトがいる場所…………
「……だから……私はこんなところで倒れるわけにはいかないのよっ…………!!!」
遠ざかる意識をかろうじてたぐり寄せ、FDを振り切るべくアクセルを踏み込んでいく霧島。
FDも、グリップの落ちたタイヤでは思うように加速できずに引き離されていく。
「ちぃい……」
舌打ちする惣流。パワーでは明らかにFDが勝っているが、弱ったタイヤではそのパワーを発揮できない。
細心のアクセルワークでホイールスピンを抑え、3速全開のストレートに突入する。
わずかなストレートで、4速まで入る。
160km/h、ここでシフトアップ。
クラッチを切り、シフトレバーを4速へ……
「……!?」
入らない!?
突然の事態に一瞬状況を飲み込めない霧島。
いくらレバーを引っ張ってみても、4速に入らない。
「…………っ、しまった!!」
ギアチェンジに手間取っているうちにブレーキングポイントが迫る。
だが加速できずにいたため、タイミングがずれてしまう。
「……んなっ!」
惣流も180SXの異常に気付いた。とっさに180SXの後方から車体をずらす。
180SXはテールアウト姿勢をとり、リアを振り出したままコーナーに突入しようとする。
だが様子がおかしい。エンジン音と挙動が一致していない。
ドリフトアングルがつきすぎてる。ステアリングでは修正しきれない。
コントロールを失ったままコンテナに向かって突っ込んでいく180SX。
止まりきれない……!
「このバカぁ……!」
惣流は180SXを追い越すと、FDの車体を当てて180SXを止めにかかる。
駆動を失っていた180SXはすぐに失速し、FDに引きずられてどうにかコーナーを抜けた。
完全に停止した後も、180SXのエンジンはストールすることなくアイドリングを続けている。
「……(エンジンじゃない……駆動系のトラブルね。クラッチか……それとも、ミッションそのものか……
なんにしろ、動力を伝えられなくなって姿勢を制御できなくなった、と……)
マナ!大丈夫!?」
180SXのウィンドウを叩く。
やがて、霧島はぐったりとなって180SXのコクピットから這い出してきた。
惣流が手を貸すが、霧島は立ち上がれずに地面に倒れ伏した。
「……、……ぅっ……」
「マナ、しっかり!」
惣流は霧島を抱き起こすと、服をゆるめて楽にさせた。
そしてFDのダッシュボードからスポーツドリンクのボトルを取り出すと、霧島の口に少しずつ注ぎ込む。
やがて落ち着いてくると……惣流は霧島をFDのナビシートに乗せた。
「アンタだって大事な仲間なんだからね……なんかあったら、寝覚め悪いじゃんよ……」
もうろうとする意識で、霧島は惣流の優しい微笑みを見ていた。
勝ち負けなんて、もうどうでもいい……
全力を出し尽くして走ったんだから……
乗り心地なんて無視しているはずのFDのバケットシートが、今の霧島にとってはまるでゆりかごのように心を落ち着かせていた。
翌日……
MAGIのガレージには、葛城のNSXが入っていた。
僕も初めて中を見たんだけど……
なにやら、たくさんの電子機器を積んでいる。
ぱっと見て分かるのはナビくらいだけど……他にもマルチファンクション・ディスプレイ、高性能な通信設備、それから全方位をカバーするフェーズドアレイ・レーダー…………一見、走り屋のクルマとは思えないほどの装備だ。
指揮車両……ってことだろうか。作戦部長として、僚機を率いるのなら……
で、今回はこれらの装備を搭載しているためにスポイルされてしまっている走行性能を取り戻す、ということだ。
具体的には、緊急時のダッシュ力を高めるためにナイトロを積むということ……
というか、これだけの重量装備であれだけの走りを見せる葛城もすごいと思う。
「ふっふ〜シンちゃんも興味津々ね?でもこれは企業秘密なので見ちゃだめよ〜ん♪」
NSXのチューンには綾波先輩が直々にあたっている。
他のメカニックも手伝うことはできない。
「そういえば、葛城さん……
昨夜撃墜されたっていうTRIDENTのドライバーは?」
葛城は僕の耳元に近づき、ささやくように言った。
「それがねぇ、シンちゃんたちと変わらないくらいの若い子なのよ。さすがのあたしも驚いたわね〜。
……そだ、どうせマナちゃんを迎えに行くことだしさ、ついでに見に行ってみれば?」
「…………そうだね……」
霧島も、惣流から聞いたところによれば昨夜1時間半もぶっ続けでバトルし真っ白に燃え尽きたって……
……にもかかわらず、半日休んだだけで復活したのはすごいとしか言いようがない。
綾波先輩の許可も取れたことだし、さっそくそのドライバーが入院しているという横浜国際病院に行ってみることにする。
横浜国際病院の駐車場には見覚えのあるランエボが停まっていた。
……ムサシか……来てたのか。
まずは霧島のところに行く。
「……!シンジ君……」
「あら、シンジ」
惣流も一緒にいた。
霧島は……顔色もいいし、元気そうだ。
「昨夜は大変だったみたいだね……なんでまた?」
霧島は照れくさそうにはにかんだ。
「……うぅん、ちょっとね。たくさん走り回ってすっきりしたよ」
「そいつぁどーも」
惣流が霧島の肩を叩く。なんだか昨日とはまるで雰囲気が違う……昨夜、何があったんだろう?
……まあ、元気で何よりだ。
「そうだ、今駐車場見たらムサシが来てたみたいだけど……」
「ああ、そうそう……ちょうどアタシがマナを担ぎ込んできた時ね……
もう1人、若い男が運び込まれてきたのよ」
そいつがTRIDENTのドライバーか。
「ケイタ……ね。きっとムサシはそっちに行ったと思う……」
「どこにいるか分かるかな?」
「……見たとこ、かなり重傷っぽかったから……ICUじゃないの?」
僕たちは3人で見に行ってみることにした。
……と、ムサシは既に来ていた。
僕たちの姿を見つけ、ちょっと驚いたふうな素振りを見せる。
「ムサシ!」
「……ああ、マナか……」
「…………聞いたよ。ケイタ、事故ったんだって……?」
ムサシは俯き、力無く言った。
「ああ……とりあえず、一命は取り留めたんだけど……」
天窓からICUの中の様子を見ることができる。
のぞきこむと、ケイタは呼吸器をつけられて眠っている。
腕には点滴のチューブが痛々しく差し込まれ……
その横で、相原さんと赤木博士が話してる。何を話してるのかはここからでは分からない……
惣流は廊下の窓から外を見ているが……やがて、誰にともなく言った。
「そのケイタとかいうガキんちょが……TRIDENTのドライバー、ってわけね……」
その言葉に霧島とムサシが固まる。
惣流、ここで騒ぎは起こすなよ……
「と……トライデント?なんのことだよそれ……」
ムサシはとぼけてみせる。
「そ、惣流さん…………」
霧島は震えだしてる。
……惣流の答えを待つまでもない。
病院の駐車場に、数台のいかにも怪しげなクルマが乗り込んできた。
「……んなことより、やばいわよ、アレ……」
黒塗りの高級セダン…………
サングラスに黒服はもはやお約束の装備だ……
「ここにいたらまずいわ。ずらかるわよ」
僕たちは非常口から出ようとする……が、惣流がそれを制止した。
「ちょいとストップ。普通の出入り口はたぶん固められてるわ。それに非常口なんて、捕まえてくださいと言ってるようなものよ」
「じゃあ、どうするんだよ?」
「ここはアタシに任せて。『関係者』の出番ってやつよ」
自慢げに惣流が言う。……確かに、病院職員専用の通路、ってのは有効だろう。
いくら彼らでも、そういう場所にむやみには踏み込めない。
……そこが、穴だ。
で、どうにか外に出られたけど……
「くそっ!……あれじゃクルマまで行けねえ……」
ムサシのランエボを黒服たちが調べてる。
「ちっ……じゃあシンジ、アンタはマナを乗せてきなさい。アタシはこいつを」
「分かった」
幸い裏に停めていて気付かれなかったが……もし彼らがWON-TECの手の者なら、Zも狙われてたかもしれない……
と、駐車場から出ようとした僕らを黒服が追ってくる。
やっぱりこんな派手なクルマでは気付かれたか!
「追ってくるぞ……!」
「構わないわシンジ!ブッちぎるわよ!!」
道路に出ると同時に全開加速。
驚いた一般車たちがクラクションの嵐を浴びせてくる。
仕方ないだろ……!
交通量の多い昼間の道路では思うように飛ばせない。
黒服たちも追いついてくる……
「ちっ……こんな時に!」
街中では無茶はできない。
信号に引っかかったら一発だ。
どうする……
「……、葛城さん!?」
突然、1台のクルマが交差点に割り込んで流れを止めた。
アレは……NSX!葛城か!
「シンちゃん、今よ!」
葛城の援護をうけて、僕たちは黒服たちのセダンを振りきる。
本牧まで走り抜けた後、僕たち3台は港の見える丘公園に入った。
NSXから降りてきたのは葛城と綾波先輩。
僕たちもとりあえず降りる。
「あっぶないところだったわね〜。WON-TECも無茶なことを……」
……やはり、あれはWON-TECの奴らだったか。
「あ、あの、助けてくださってありがとうございました」
ムサシが礼を言う。
……だが、綾波先輩の答えは…………
「…………芝居はそろそろヤメにしない?加賀ムサシくん……いえ、『ムサシ・リー・ストラスバーグ』くん?」
「「!!」」
そう言い放った綾波先輩の言葉に、ムサシが固まる。
惣流も驚いているようだ。
「ムサシ・リー……『リー』ってまさか……WON-TEC総帥の!?」
腕組みをし、鋭い眼光でムサシを見下ろす綾波先輩。
葛城、綾波先輩というNERV幹部2人を前にした強烈なプレッシャーに……ムサシは冷や汗を流し、膝を震わせている。
さらに綾波先輩から決めの一手。
「そうよ。彼はプロジェクトTの中心人物であると同時に……TRIDENT-SUPRA試作1号機のテストドライバーでもある。
……ご苦労だったわね、霧島さん」
「……マナ!?そんな、嘘だろ……?」
ムサシがぎこちない動作で霧島を見る。
霧島はなにかを言おうとするが、惣流に止められた。
僕たち、5人に囲まれて……ムサシは孤立無援。
……やがて観念したのか、ムサシはだらりと肩を落とすと呟くように言った。
「……ああ……そうだよ。WON-TEC社総帥、ウォン・リー・ストラスバーグは……俺の親父だ」
霧島は涙を浮かべた目で、ふるふると首を横に振る。
葛城も、綾波先輩も惣流も……じっと、ムサシを見据えたまま。
僕はどうしていいのか分からない……
「……俺を、どうするつもりだ?」
「さぁね〜。とりあえずは、あたしと一緒に来てもらうわ。だいじょ〜ぶ、VIP待遇だからさ♪」
葛城はカルく言うが、その瞳の奥にははっきりと黒い輝きがあった。
綾波先輩は葛城に目配せすると、僕たちを連れて歩き出す。
「それでは、葛城部長……後はよろしくお願いします」
「まっかしといて」
葛城はムサシを連れてNSXに乗り込む。
……なんと、ナビシートには拘束具までついてる……これには僕も呆気にとられた。
ムサシがNSXのシートに身体を固定されるのを見て、霧島がたまらず走り出した。
すかさず惣流が霧島を捕まえ、引き戻す。
「こらっマナ!手ぇ焼かせんじゃないっつってんでしょ……!」
「離してくださいっ!……ムサシ!ダメ!……綾波さん!お願いします!ムサシを……っ!!嫌!行かないで!!ムサシーーーっ!!!」
ムサシを乗せたNSXが走り去っていき、霧島はがっくりとうなだれて地面に膝をつく。
綾波先輩は何も言わない。
惣流は呆れ返った表情で、肩をすくめてみせる。
……僕には、なんて声をかけたらいいのか分からない。
やがて、綾波先輩が僕に声をかけた。
「碇くん、MAGIに戻るわよ。
……時間がないわ。WON-TECとの戦いはこれで終わりじゃない……
Zに手を入れる。TRIDENTは……あと1台、残っているわ」
「……えっ……それはどういう…………?」
綾波先輩と惣流はFDに乗り込む。
僕は……
「……霧島…………」
「うう……ふぇえっ…………」
すすり泣く霧島。
僕は霧島の隣にしゃがみこみ……そっと、肩に手を乗せた。
「霧島……行こう」
霧島は黙って、僕についてきた。
Zのナビシートに座り……じっと俯いたまま。
僕は何も言えなかった…………
………『TRIDENTはあと1台残っている』………
綾波先輩のこの言葉は、何を意味するのか…………
予告
一度はあきらめた、過去の想いに追われるマナ。
そして明け方の湾岸、最後のバトルが幕を開ける。
走りの世界を降りる者と、残る者。
去りゆく者の姿を焼き付け、そしてまたいつもと変わらぬ朝が訪れる。
第13話 駆け抜けてゆく、物語たち
Let's Get Check It Out!!!