『お父様と私』

【そのじゅうご・裏】 作・何処


「…と、ゆう訳なのよ〜、も、リツコ相手に知らん顔で情報を隠してたのにマヤちゃんから電話あった時は焦ったわよー、もー本当に心臓に悪いったらなかったわ〜!」
「そ、それは又タイミングが悪い…」
「しっかし良くなんとかなりましたね!核テロ位起こされても不思議じゃ無いですよ…」
「うわ問題発言…けど同意。」

「いや〜結構リツコも乙女だしさー、シンちゃん達の初々しい恋愛もいーけどさ、大人同士女友達との恋バナってのも中々楽しい物よ!ね、青葉君日向君、あんた達も生活楽しんで恋愛してる?時間は有効に使って楽しまなきゃ損よ!」

「ええ、楽しんでますよミサトさん、シンジ君やアスカちゃん程じゃ無いですけど。」
「でも…やっぱり時間が不定期みたいな物ですしね、中々一般の職場とは難しいんですよね…」
「職場結婚率高いもんなーうちは。」
「そーねー、このまま行けばリツコも同類か…同じ職場だしねー、逆にネルフに勤めれば楽に結婚相手が見つかるぞ!とか思われてたりして。…ねえ、青葉君、日向君。今度それ売りに新規募集かけてみない?パンフ写真はうちの美男美女や新婚カップルとか使ってさ!」

「!いい事言ってくれたました葛城さん!そうですよその通りです!それなら新人に期待できる!」
「流石です作戦部長!素晴らしい着眼点です!その手で人材を募集すれば新規採用試験の倍率が国立大以上に!」
「良く解ってるじゃない!そうじゃ無くとも今の選考基準じゃ縁故で無い限り官僚ルートより就職率厳しいのに、受ける人が募集人員数より少ないんじゃあね〜。」

…おまえら一体どんな人材を求めてる…

「最も、ネルフ希望する人間は大体皆が其並に優秀ですから、そこは未だ救いですか。」
「慢性人員数不足が常態化してますからね〜、うちは。」
「しっかし…臨時採用たぁどんなコネ使って潜り込んだのやら。日向君、もうある程度の事は把握したんでしょ?」
「ええ、マギで検索した結果が…これです。履歴書に不審な点はありません。長期入院先のカルテ、入院費の支払い元、戸籍も白ですが…」

「けど何さ日向君、何か不審な点でも?」
「あ、いえ、怒らないで聞いて欲しいんですけど、どうやらこの春日さん、司令の奥さんの再従姉妹じゃ無くて実は姉妹じゃないかと…。この資料のここ、春日さんの母親…薫さんですか、彼女はどうも碇家先代当主の…」
「あ、それはマヤちゃんとの会話でそれらしい台詞は確認してある。多分事実だ。」

「…ああ、良く有る話ね…確かに面白い話じゃ無いけど、別に怒りゃしないわ。真似する気は無いけど、ま、当人同士の考え様ね、私がとやかく言う筋じゃないし。」
「確かに。最もマヤちゃんには刺激が強かった様で、その話題が出た時貰い泣きしてましたよ。」
「…だろうな。あ、それとこれが関連資料です。」

「どれどれ〜…へぇ、司令って婿養子だったのね、知らなかったわ〜、…ちょ、マジ!?すっごい資産家じゃない碇家って!?」

「ああ、昔から一部の筋では有名な話ですね、下手な財閥以上ですよ。」
「知っているのか日向!?」「もちろんさ!!」
「あー、日向君のご実家は旧家だもんねー。」
「資産はありませんけど。お陰で妙な付き合いが多くて…で、司令と結婚した唯さんは碇本家の一人娘…跡取りだったそうです。それが半ば駆け落ちみたいに家を出たって事で一時大変な騒ぎになった様ですね。」

「ふへえ〜、あの司令がね〜?」
「へ〜っ、意外だな…」
「あ、いえ、どうやら奥さんが司令の処に押し掛けた様でして…で、司令が碇家に相続権放棄した上で入籍する事を条件に結婚を許されたと聞いてます。」

「じょ、情熱的だなおい!?」
「すっご…しっかしリツコといい奥さんといいあの髭の何処が良いのやら…碇家先代当主ってどんな人物だったか判る?推定でいいわどうだったの?」
「辣腕ですね。仕事色事に限らず色々と…かなりのやり手だったようですね。女性関係で限って見ますと資産分配等から見れば他にも数件、怪しい処なら十程有る様です。」
「成る程ね…」
「は、俺らには関係無い世界の話だな、やっぱり世の中不公平だよ。ま、俺は俺で良かったんじゃないかなって思うが。」
「はっ、人を羨む程ガキじゃ無いか、それに虚しいしな。」

「ま、いいわ。それじゃ話を戻しましょ、春日さんとやらの経歴はどう?」
「は、はい、特に問題はありませんが…何かドラマ地で行ってますねこりゃ。」「幼い頃母を亡くし親戚の…え!?シンちゃんのお母さんも幼少時に母親を!?…はあ、シンちゃんの家系ってとことん母親と縁が薄いのねー。」
「成人後、碇家関連の企業へ就職、就職先で帆場来栖氏と出会い別姓のまま結婚、子供は息子一人…おや、字は違うけどシンジ君だ…。ですが四年前、事故で夫と息子を亡くされ、本人も回復の見込み無しと診断されてます。二年前、例の『失われた1ヶ月』後意識を回復。退院した後、数ヶ月のリハビリの後、碇家の伝で京都に暮らしてます…」「正に波瀾万丈ね…」

「約半年前に第三東京市に来た様です、暫くは寮の賄いを…パートタイムで働いていましたね、そして昨日臨時秘書として採用に至ってます。」
「ふーん成る程ねぇ…ってな〜んか引っ掛かる様な…え?寮で臨時に賄い?そこは何処だか判る?」
「ええと、ネルフ第三独身寮ですが…それで?」

「そ、それだぁっ!!」

「「は?」」

「あ…あんの髭ぇ…い〜い度胸ぢゃなぁいぬぉ〜っ…ふふふふふ、うっっっかり騙される処だったわぁ、惚けたグラサンの裏で何企んでやがった髭め…さ、すぅわぁあとぅえぇうゎあ…ゆ、許さん!許さないわよ下朗な外道!あんまり女舐めんぢゃないわょぉ…ふっ、ふははっ、はぁ〜っはっはっはっはぁ!どっ、どおしてくれようか…はっ、ははっ、あは、あはは、あははははははははははははっ!!」

さて、ここは作戦会議室外の廊下。室内からは未だミサトの妙な高笑いが聞こえている。

「ま、マコト。」「な、何だシゲル」
「思わず逃げ出したけど…止めた方がいいかな?」
「…暴走した初号機素手で停められるなら任せるぜ…しかし…」
「「怖かった…」」

【じゅうろくにつづく。】


<BACK> <INDEX> <NEXT>