『お父様と私』

【そのにじゅうよん】 作・何処


「…んふわあぁぁ〜っっっ!お〜は〜よ〜、むわぃったわ〜、ほい昨日の報告書〜、なんとか終わらせたわ〜。」
「あら、速いわね、ご苦労様ミサト。珈琲でいい?」
「ん。リツコあんがと〜。クリスマス定時上がりの為だもんね〜、しゃーないわ〜。」
「ふふっ、あの子達、楽しみにしてたものね、」
「二年越しの約束だからね〜。ゴキュ!っぷはぁ〜っ!!」
「濃い目だから目覚めるでしょ?じゃあ明日は楽しみね。あまりシンジ君からかってアスカに邪魔者扱いされないように気を付けなさいよ。」
「…あ、昨日からアスカはレイと春日さん所お泊まりよ…二人共初めてケーキ作るって張り切ってたわ…っと!シンちゃんには内緒よ!」
「はいはい…春日さんか…あたしもあの位女らしければなぁ…ケーキなんてもう二十年近く作ってないわ…ああ、もうそんなに経つか…忘れてたわ…」

「えーっと…リツコ?その…あんたケーキ作った事有るの?」
「失礼ねミサト!…でもそうね、仕方無いか…ええ、そう、あれは母の日だったわ、ゲンドウさ…司令の奥様に教わったの。未だ中学生の頃…セカンドインパクト前よ。」
「ほへー、あの堅物がケーキ食う所はあんま想像したく無いわ〜、てゆうかコーラ飲んだだけであれだけ衝撃的な存在も珍しいけどねー。」
(頷いちゃ駄目、頷いちゃ駄目よリツコ、理性よ理性、科学的にコーラ飲んでも何らおかしく無いわ、平常心〃…)

「…ま、まあさか、べ、別におかしくはないでしょ。あのひとの奥さんは良く私にお手製のケーキをお土産に持って来てくれたわ。“主人もこれが好きなの”って言って…。」
「あー成る程、なんか納得。甘い物に家庭の郷愁感じてるのよ司令は…。」
「…又作るかな…挟んだフルーツゼリーの隠し味、なんだったんだろう、“好きな人の為作る時教えてあげるわ”ってあの時は教えてくれなかったのよね…」

「…まって…ケーキ?…リツコ、春日さんて確か司令の奥さんに似てるって言ってたわよね…フルーツゼリー入り…?!あたし絶対その人知ってるっっ!あたしが父親と南極行く前に会ってるっっ!!てゆうかそれ以前から知ってた!!!」
「ええっ!?ミ、ミサトそれは一体どう言う事!?」
「何で忘れていたのあたし…そうよ!南極へ行く私にパーティー開いてくれて…!?!碇司令も居たわ!そうよ!あたしに笑顔でいっておいでって…それに小学校の卒業式で…来れなかった父と母の代わりに唯さんが…そう…唯さんー唯さんよ!唯さんが来てくれて…帰りに唯さんの家で唯さんのお知り合いの娘さんとケーキ食べて、とっても美味しいって言ったら“貴女が好きな人に作る時教えてあげるわ”って…」
「!!フルーツケーキ!?」
「そう、唯さんお手製キウイとパインとピーチとチェリー入りのゼリーが挟まった!!」
「たっぷり生クリームと苺の乗った!!」
「…リツコあんたまさか…あのフリルでピンクな服のやたら明るい…」
「…ミサトこそ貴女まさか…あのワイシャツとジーンズの大人しい…」
「「…えええええ〜〜〜っっっ!?!?!!」」

「葛城…リッちゃんまで…何騒いでるんだ?」
「…え?…あ・あら加持君、久し振りね。い、いつこっちへ?」
「今朝…辿り着くまで15時間…ああ、葛城ん所で枕借りて仮眠してきたが未だ眠い…珈琲貰うぞ、…っっ!沁みるなぁ〜!」
「あ、さては南米の仕事一息付いたんで、彼らの帰国にかこつけてミサトの顔見に来たんでしょ。」
「正解…一緒に来た。ところが途中でシンジ君の乗ったバスとすれ違って俺をタクシーから放り出して後追っかけてったぞ三人で。」

「え?三人?彼ら?何でシンジ君を?」
「ああ?何で葛城が知らないんだ?ほら、マリーカ、ジョルジュ、アントニオ…向こうの部下の三人、実は元戦自の少年兵だぞ。」
「ななななな!?ちょ、一寸待ってま、まさか加持、三人って…えええええっ!?!」
「…リッちゃん、葛城にも内緒か?秘密主義も行き過ぎると逆効果だぞ?」
「隠してた訳じゃ無いわよ。私だって去年司令に聞くまで知らなかったわ。死亡扱いにして南米で匿ってたのよ。現地の戸籍用意して。…どうしたの?」

「…アスカとマナのシンちゃん巡る女の戦い、忘れた訳じゃ無いでしょうねリツコ…下手打つと今度は三つ巴の修羅場よ…レイ、アスカ、マナ、三大少女大決戦よ…ああありりりリツコぉどおしよお!!」
「…逃げるか…」
「…同意したいけど…シンジ君生け贄って訳にはいかないわね…」
「あああああっっっっ…副司令の抑えの手腕に期待するかあ…」

「ん…っっ…あ…」
「マヤ…」
「こ…こんな所でなんて…あっ駄目っ…あっああっそれは…」
「んおっ!す、すげえ…耐えたぜ…こうだ!」
「あっそこ駄目そこ駄目っ、あっあっあっ嫌っそ、それはっっ!」
「…いくよマヤ…」
「う、嘘っ!駄目っシゲルさん止めてっ!」
「止めない…絶対止めない…止めるもんか!」
「ああっ嫌ああっ!駄目えぇぇぇ落ちちゃうぅぅぅ!!」

『ファイヤー!アイスキューブ!ダイヤキュート!ばよえーんばよえーんばよえーんばよえーんばよえーんばよえーん!!!』

「…勝った…ついに勝った…マヤちゃんに初めて勝った!!」
「え〜ん悔しーいっっ!折角今日は明日の為にエステ行こうと思ってたのにー!!」
「じゃそうゆう事で俺午後上がるんで後宜しく〜」
「うわ〜ん狡い〜」
「泣くなよベイビー、昼飯奢るからさ。」
「…奢らなくていいから午後休変わって。」
「…パフェ付き。」
「…肥るからパフェは次のデートで…」
「仰せの儘に我が姫君…ぷぷっ!」
「クスクス…あたし今日A定食で。青葉君は?」
「これからスタジオ練習だから…カツ丼にすっかなぁ。」
「チケット…今回は何枚?」
「いや…プレゼントするよ…君だけに…」
「…他の娘には買って貰わなくていいの?」
「う゛…」
「クスクスクスクス…じゃああたしを除いて五枚お願いね、青…シゲルさん。」「お、おう!」

…やってらんねーなーおい…

【つぎは番外編その2に参りま〜す。】


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