『お父様と私』

【そのにじゅうさん】 作・何処


コンフォート17。目覚ましの電子音に一組の男女が再起動中。

「…うう゛…も、もう時間か…」
「…ん゛ん゛〜っっっ!ふわあぁぁ〜っっっ!ん〜〜じ、時間かぁ〜?な、なんとか三時間は確保〜あ…墜ちそう…」
「こ…珈琲…だな…つうか飯食って二人して服着たままダウンたぁ…」
「あ゛〜仕方無いわぁ…目覚ましセットした時点で撃沈してたし…」
「昼飯トーストと珈琲だな…俺も本部顔出さんと…あ、…まあいいか…」
「…てゆうかなんも無しで抱き合って寝たの久しぶり…」
「…てゆうかなんも無しが長過ぎて覚えて無い…」
「…ミシェル…マリーカ…ハルカ…お盛んぢゃな〜い〜?」
「…ミシェルは情報屋だ…マリーカは部下…ハルカは連絡員…ハルカなぞ息子がアスカと同学年だ…」
「うっそ…アスカと!?ハルカってマヤちゃんとタメ張る童顔ぢゃん!?」
「本当…あーくそ眠い…仕事かぁ…はあ。起きるぞ葛城ぃ…」
「仕事かぁ…と、取り敢えず書類…まとめ…いかん!二度寝する所だったー。あっぶな…」
「葛城ぃ、トーストはジャムだなー?」
「サーイェッサー!」

場面転換。見慣れない天井に戸惑う少年…

「えーっと…あれ?確か…アスカに…あれ?」

(落ち着け、落ち着いて考えろ、思い出せ…アスカの鞄渡しに行って…綾波の鞄も取ってきて、それで…マナッ!?!し、死んだは…え…でも…あ…そ、そうか…そうか…い…生きて…た…のか…そうか…そうか…生きてた…)

「…起きた?」
「あ…綾波?こ…ここは?」
「…碇司令の部屋…未だ寝ていて…」
「う…うん…」
「…」
「…マナ…生きてた…生きてたんだ…っ。…あ…」
「…泣きたいのね…嬉しくて泣きたいのね…いいわ…泣いていいわ…私が…今は私が付いてる…こうしていてあげる…だから…」
「あ…綾波…う…あ、あり…が…と…う…うぅっ…ううううううぅっ…」

「…おめでとう…碇君…」

「「「ううううううううううううぅっ!!!」」」
「あらあら…皆さんどうしたの?揃って涙流して…」

「「「うううううううううううううううっ!!!」」」
「…あ〜鬱陶し〜わね〜」

「お、お味噌汁と白飯だあ…澱粉じゃない芋でもコーンでも無いよお…パスタやタコスやレーションパックでも無いしバケットやライ麦パンやビスケットでも無いよぉ…しかもレトルトでも缶詰でもα米でも無いしその上炊きたて米だあ…」
「…く〜っっっ!納豆!海苔!生卵!絶対帰って来たら食おうと心に決めてた三品っっっ!!」
「塩鮭に醤油!浅漬けに醤油!納豆も生卵も醤油っっっ!」

「あんたら…何口走ってるの?」
「…苦労して来たのねぇ…お代わりはちゃんとあるから、いい事?ゆっくり良く噛んでお食べなさいな。判った?」

「…え?あ…」「…あ・あ…」「あああ…」
「「?」」
「「「ああああああありがとうございますっっっ!!!」」」

ネルフ司令部付き臨時秘書兼寮賄い、春日椿(仮名)。只今元戦略自衛隊少年兵達の餌付けに成功。

さて第三新東京総合病院、第五診療室。ノートパソコンの画面を前に煙草をくわえた女がライターを探している…またかよ。

「先生ここ禁煙。」
「ちっ、判ってるよEカップ、くわえてるだけだ。ったく…」

くわえ煙草を屑籠に放り込み、脇に放り出した承諾書を手に取り眺める。

「ほれ、今日はお前さんの言うとーり向こうさん配慮してちゃーんと白衣羽織っておまけに膝丈タイトスカートの大人しいスタイルだぞ?」

「…網タイツがですか。」

「…にしても遅いな」
「…スルーですか。未だ時間前です。もう暫く待って下さい。大体普段人散々待たせた挙げ句ブッチする人はいくら偉くとも偉そうにしたら駄目です。はいこれ遺伝情報再構成計画書とデータ洗い出し項目表、目通しておいて下さい。」
「あー其処らはもう頭入ってる気にするなEカップ。」
「人をブラのサイズで呼ばないで下さい。それとこれが臓器移植用免疫抑制剤入荷日程表と再生臓器培養プラントの準備状況表、こっちが個体情報記録装置観測値、これが修正データと予定調整値一覧です。」

「…なあ…何時も思うんだが…なんでお前普通の看護師な訳?学士持ちは兎も角無愛想だし突っ慳貪だし訳解らん知恵はついてるし突っ込みキツいしEカップだし…」
「だから人をブラのサイズで判断しないで下さい。何足組んで…チャイナ服ですかそのスリットの深さ。そろそろ来ますから足隠して下さい。」
「固いなぁEカップ。男作れ男。…来たか。」

「失礼します。第三新東京総合病院第五診療室へネルフ対外協力対策室民間支援部医療課より通達します。貴殿の民生医療支援事業法適用申請に基づき、主演算機及びデータベースの使用を認可いたしました。私は使用許可証交付及び主演算機へのハイパーリンクインターフェースコンバーターの貸し出しと接続に参りました、ネルフの日向マコトと申し…あれ?」
「ん?あらぁ!?は〜いマコトちゃーんお・ひ・さ。なーんだ君ネルフの人かー。」
「…お医者さんだったんですか…」
「…先生、言われてますよやっぱり。」
「五月蝿いなーもー。あ、こいつ助手兼秘書兼検査技師兼看護師。ぶっきらぼうだか優秀だぞこのEカップは。」
「は?え?」
「先生何胸のサイズで紹介してるんです。それよりお知り合いですか?」
「ああ、二日前から“お尻会い”だ。」
「何妙なイントネーション使っ…喰いましたね。」

「…君は何でそう直接的表現をするかねEカップ。情緒とか風情が欲しいな、なあマコりん。」
「ま、マコりん?!」
「…先生、じゃ情緒と風情語らいます?じっくりねっとり長々と。」
「ごめんすまん申し訳ない。」
「貴方も災難でしたね、鮫か鰐に噛まれたと思いどうか気を強く持って。トラウマにならない事を祈ってます…多分。」
「…をい…」
「多分て…いやまぁ喰われたと言うか喰ったと言うか…」
「…しまった四回戦行っとくんだった…」

「仕事中!」

「「失礼しました!!」」

【にじゅうよんにつづく】


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