『お父様と私』

【そのにじゅういち】 作・何処


「シンジ君、それじゃ模擬戦闘を開始するわ、手順は打ち合わせ通り、先ずはミサイル攻撃をプラズマ障壁で迎撃、α号より発射された出力50%ポジトロンキャノンの弾道をATフィールドで軌道修正し標的艦1へ照射、続いて陸上よりα号の艦上へ移動しα号のプラズマ障壁をATフィールドで槍状変形、標的艦2へ投擲、その後海中の標的艦3へプログレッシブナイフによる接近攻撃を行い、ブースター使用により海上の臨時給電艦へ、バッテリー交換作業の後本部へ帰投、所要時間5分42秒予定、いいわね!」
「5分30秒を目標にします。カウントダウンどうぞ、エヴァンゲリオン参号機碇シンジ、行きます!」
「頼んだわよシンジ君、カウント開始、5、4、3、2、1、エヴァンゲリオン発進!」

「碇、初号機の外装を参号機と取り換えるとは…あこぎな真似を…」
「S2機関は未だ開発中。公式見解に合わせておく。迎撃専門だからこそ我々はエヴァを運用出来るし、不要な嫌疑を掛けられずに済む。」
「確かに。単独行動時間が新型バッテリーパックを背負わせても全力で8分ではな…いくら強力でも迎撃以外に使用できん…」
「新型戦艦をわざわざ国連に造らせたのはエヴァ単独の能力限界を知らしめる為だ。ネルフはあくまでも国連の元の一機関だからな。単独では何も出来ん良い証拠だ。」
「この悪党めが…」

「…標的艦3、船殻破損、沈没します…。」
「…これが…対使徒用決戦兵器…予備役の操縦でこれか…」
「…しかし一機は使徒戦において喪失…エヴァンゲリオン以上の戦闘能力か…使徒とは一体…」
「参号機、臨時給電艦に向かいます!」「対衝撃に備え!ハードポート!」

「参号機帰投、模擬戦闘終了しました。」
「凄いわね…マヤ、カウントは?」
「はい、所要時間5分30秒!バッテリー残量85%!」
「シンジ君お見事!」
「予定通りだ…やるなぁ!」
「シンジ君お疲れ様、給電艦のバッテリー交換が遅れなければ5分切ったかも!?α号から通信よ、音声だけだから出て頂戴。」
「はい、こちらエヴァンゲリオン参号機です。」
「α号艦長、カーク大佐だ。素晴らしい操縦だった。」
「有り難うございます、そちらの艦の能力に助けられました。…日本語お上手ですね…」
「嫁が日本人だ。今度遊びに来い、抹茶と大福で歓迎してやる。」
「…実は正座苦手なんですよ…」
その返事に全ての通信回線が爆笑に乗っ取られた。

「碇…段々母親に似てくるな…」
「…ああ…」

所変わってネルフ第三独身寮調理場。

「あ、この電動撹拌機はスイッチここよ。グラニュー糖はもう少し入れた方がいいわね。」
「あ、はい!」
「苺のヘタ、取りました。次は…」
「あ、このボウルにそのパインの缶詰空けて。さっき皮を剥いて切ったたキウイも…ふふっ、女の子同士楽しいわぁ♪」
「あの…私達手伝っていいのでしょうか春日さん…格闘技とか射撃なら得意なんですよ私…でもお菓子作るのって初めてで…」
「あ、あたしも…」
「あら、誰でも初めては在る物よ、ね、アスカちゃんレイちゃん、どうせなら楽しんじゃいましょ♪」
「さっすが春日さん!そーよこんな機会滅多に無いんだから目一杯楽しまなきゃ♪ね、レイ♪」
「アスカ…零れてる… 」
「「「え?あ!キャーッ!?!」」」
「あらあら…クスクス…やっぱり女の子っていいわ〜♪」

和やかに女性達は楽しく調理場を沸かしている。

再びネルフ、ジオフロント内

「…演習への協力と参加に感謝するよ碇指令。」
「今はカーク大佐か…昔はネモ小佐だったな。」
「ネーミングセンスの無さは伝統だな。所でさっきのパイロット…息子だな?」
「…さあな…」
「あのボケは間違い無い。フラウ唯…奥さんの息子だ。血は争えんな。」
「ふっ…用件は何だ。」
「…リバイヤサン…」
「…赤い海のあれか…」
「ちっ、少しは驚け。βの擬装が未だ途中だ。今は未だ静観だな…」
「静止衛星の重力探査は兆候を捉えていない。余計な手出しはセカンドインパクトの二の舞だ。」
「…今日の演習を見れば上層部も多少は考えるだろう。俺も動く。パナマは未だポジトロンキャノンが未配備、加粒子砲搭載衛星は肝心の粒子加速機が手間取っている。」
「音速魚雷積載予定の抗体生産も未だ量産の見通しすら付かん。未だ先は長い。」
「いっそウロボロスの如く消えてくれれば…」
「地球を道連れにか?」
「…今嫁は第二東京だ。そのうち息子を連れて来い、二人共大いに歓迎してやる!」
「三人かも知れん…再婚の話が在る。」
「!なに!貴様何故黙ってた!見合い話をせっかく嫁が…あ。」
「…まあ予定は未定だ。今は貴様しか知らん筈だ。解ってるな?」
「くっ…まあ良かろう。しかし物好きな女も居た物だな…嫁には話すが良いな?」
「居た物は仕方無かろう。奥方に宜しくな。」
「ああ、又な。」

「碇よ、やっと腰を据えるか…長かったな…」

第三新東京総合病院、第五診療室。ノートパソコンの画面を前に煙草をくわえた女がライターを探している…禁煙だぞおい。

「ちっ、仕方ない…」
くわえ煙草を屑籠に放り込み、脇に放り出したカルテを眺める。
「もう暫く待ってね…再構成データの洗い出し、やっぱマギ使いたいなー…とは言えあの馬鹿は厄介だしねー…どうしたもんか…」
「先生、マユミちゃんの血液サンプルです。…また今日もエロっぽいですね…」
「君も着るか?違う商売と間違えた患者にもてるぞ?」
「遠慮します。それと例の専用回線、先方から承諾来ました。」
「あっそ…って早く言えよEカップ!はははっそうか!あの馬鹿野郎許可出したか!ははっやったぞEカップ!」
「先生人の事胸のサイズで呼ばないで下さい。これ承諾書です。機器設置に明日職員の方来られるそうです、身成りはちゃんとして下さい。」
「大丈夫〃、魅惑のボディで見事落としたるわよ!」
「違います…少しはらしい格好してないと。貸してくれなくなったらどうするんです?」
「あーっそれ困る!」

【にじゅうににいきます】


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