『お父様と私』

【そのじゅうよん】 作・何処


「おはようマヤ、早いわね。」
「おはようございます先輩っ!先輩こそ何時も早くからご苦労様です。」
「フフッ、おだてても何も出ないわよ。」
「てへへ…でも先輩、今朝はご機嫌ですね、三連休でリフレッシュした感じです。やっぱり疲れが溜まっていたんですよ、顔色も…先輩何処のエステ行ったんですか!お肌艶々!」
「え、ええ、実はミサト推薦のリ・チェルって所…そんなに判る?」
「ええ勿論!…何だか敗北感…あたしも行ってみようかな〜。」
「彼処のオイルマッサージとスチームサウナは最高よ〜ん、ねっリツコ!」
「ええ、本当に…最高に気持ち良かったわ…」
「あ、葛城さん、おは…え?えええええ?あ!な、何かあったんですか!非常事態宣言は未だ…もしや!?たたた大変!直ぐに第一種戦闘配備を…」
「は?何言ってるのマヤ?」
「え?え?え?な、何?何事?!?」
「え?違うんですか?だ、だって葛城二佐、今まだ定時の30分は前ですよ!?作戦部長自ら定時前なんてよほど非常事態が…」
「…何よリツコ…その顔は…」
「ぷっ…な、何ミサトっ…ぷぷっ…クククッ…な、何でも無いわっ、クッ…プクッ!」
「あ…あは、あはは、あは…」
「マ〜ヤちゅわ〜ん、貴女とは話し合う必要がありそうね…『ミサトはお話しが大好きなんだ…今度一緒に…お話ししようよ…』」
「ひっ!わ、私が今非常事態っ!?つい殺られちゃうの私!?」
「ぷっぷぷっ…だっ…駄目っもー限界っ!あははははははははははっっ!」

「…ええええどぉーっせあたしゃいっっつでぇも定時定刻ギリギリのお気楽極楽中間管理職どぇすゅをぉ〜っっだ、所詮災害派遣と事件事故無きゃ閑職な肩書きですよーっっっ、二佐だろ〜が何だろ〜がどーせあたしゃいつでも実力行使で実戦的実践派な非常事態専門職ですよぉ〜っだ。ブチブチ…」

「お早うございます、朝から賑やかですね…っ!か、葛城さんっ!又非常事態ですか!」
「何騒いでいるんだマコト。あ、お早うござい…か、葛城さん!災害ですか?それともテロリストか諜報員…」
「あははははははっ!…たっ、助けて…ヒイヒイだっ駄目っくっ、苦しいーっ!あはははははははははははははははははっっっっ!」
「せ、先輩まで非常事態!?ああ何て事…」
「…も、好きにして…(…でも、ま、確かにリツコにゃ非常事態だわね…頑張りなさいな、リツコ…)」

「おや、皆さんお揃いで。朝早くからお仕事ご苦労様。では…渚カヲル、只今ネルフアメリカ支部より到着しました。葛城二佐、赤木技術本部長、お久しぶりです。」
「あら、カヲル君!もうアメリカネルフ支部から帰れたの?」
「はぁはぁ…あぁ苦しい、涙出ちゃったわ…全く朝から調子が狂うわね…お帰りなさいカヲル君、ご苦労様。で、向こうの様子はどうかしら?」
「ま、リリンの世界はどこも同じく刺激と魅力に溢れていますね。これから司令に報告書を提出したら今度はヨーロッパです。」
「済まないわね…貴方にエヴァンゲリオンパイロット代表なんて真似をさせて…今はシンジ君達をあまり表に出したく無いのよ…事情が複雑だからね…」
「未だに『喪われた1ヶ月』については検証中だし、研究の結果も不明…公式見解はそうなっているけど、エヴァンゲリオンと使徒の戦闘の余波と大半の政府や組織は思っているわ…確証は無くとも。」
「スパイ、テロリスト、マスコミ、企業、官僚、政治家、自称正義の味方な個人や団体。何にせよネルフの持つ情報を狙う輩は切りがないな。マコトや葛城二佐が楽にならない訳だ。」
「シゲルやマヤちゃんこそ、何時もマスコミ対策からクラッカーやハッカーの相手までしてるじゃないか。大変だろ?人の好奇心は果てが無いからな…」
「わ、私はともかく先輩が一番大変ですよ、年時休暇の消化だって総務から苦情が来て漸く取った位ですもの…」
「諜報員は入り込む、テロリストには狙われる、マスコミは煽る、政府は狼狽え会議は踊り、結局ネルフが後始末。…全く…カヲル君、済まないわね、これが貴方やシンジ君が護ってくれたリリン…人間の実態なの。情け無くって涙も出ないわよ。」
「しかしリリンは刺激的ですよ。何時も新しい発見がありますしね。」
「あら、それは学術的に興味深いわね。良かったら聞かせてカヲル君。」
「そうですね、何と言っても今朝は素晴らしい発見がありました。赤木博士の笑顔は好意に値します。魅力に溢れていますね。是非ともその笑顔をもっとお見せ頂きたいです。」
「まっ!?」
「「ををををっ!?」」
「ええええええっ!?」
「カ…カヲル君?…そ、それはリツコへの口説き文句と受け取られても仕方無いわよ?…全くシンちゃんと違う意味で同類な天然なんだから…しっかし、カヲル君、貴方ジゴロの才能あるわぁ絶対…ネルフ潰れて食い詰めたらホストなんなさい。女の敵として認定したげるわ…そういえば時間未だあるんでしょ?後でシンちゃん達も来るから話ししてきなさいな。ほらリツコ、呆けてないで。日向君、青葉君、作戦室でミーティングするわ、資料の準備お願い。」
「あ、有り難うミサト。マヤ、マギの通常チェック後、今度の無人稼働試験のチャートチェックお願い。それと今日のシンクロ実験は…」
「じゃあ僕は司令に会ってきます。シンジ君達とは又次の機会にゆっくりと。では葛城二佐、赤木博士、青葉さん、日向さん、伊吹さん、お先に失礼。」


「…今日の試験はレイとアスカがメインよ。新参号機とのシンクロテスト…なんとか成功させたいものだわ…。」
「シンジ君は稼働に成功、アスカちゃんやレイちゃんがシンクロ出来れば余裕を持ってアラート体制が出来ますね。」
「パイロットが互換できる機体があれば運用も余裕が出来る…同スペックの四、五号機が完成すれば、機体を破損したまま発進させるような無様な真似はしなくて済むわ。」
「…そしてS2機関を搭載した初号機は凍結…弐号機はコアからのサルベージ実験の後、改装…ですか…シンジ君、逢いたかったでしょうね…でも、司令もシンジ君もまさかあんな風に答えるなんて…」
「『あれは其処に居る。それで十分だ。後はシンジに任せる。』に『お別れは済ませました。』…か…親子ね…。」
「あ、シンジ君達、今メインゲートに到着しました。15分後に到着予定です。」「あら、じゃあ急ぎましょ、学校休ませて呼び出したのに待たせたら三人に悪いわ。」

【じゅうごに続く】


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