『お父様と私』

【そのじゅう】 作・何処


「リツコ、じゃレイを頼むわね。」
「ええ、朝御飯ごちそうさま。じゃいくわよレイ。皆遅刻しちゃ駄目よ。」「「はーい」」
「じゃ、お願いします…皆、昨日から有り難う…(すこし…胸が痛い…碇君…アスカ…そう…私、寂しいの…何故?直ぐ又会えるのに…何故?何故?何故?…)」
「レイ、又固まってるわよ?…ま、いいわ。さっ、いくわよ!」
V8の音を響かせる水素エンジンがアメリカンスタイルな旧車の車体を震わせながら目覚めさせる。流石にホイールスピンはさせないが結構な速度で走り出した車を見送ると、子供二人は学校へ、ミサトは買い物へと出かけるべくその場で別れた。
「…ねえ、シンジ。」
「…誰も見てないよね…アスカ…」
「「ん…っ」」
「…未だ信じられない…キスって…なんでこんなに気持ちいいのかしら…」
「うん…アスカ…遅刻しないように…」
「…やっぱり…早く一緒に高校に通いたい…嬉しいのに淋しい…」
「淋しいって言えるのは成長したからだよ、アスカ…(加持さん…いえ師匠!つっ、ついに吃らず言えました!!有り難うございます!!!)。」
「ん…このエロシンジ。じゃ…あたしここで…」
「いってらっしゃい…って僕も急がなきゃ!」
(よぉ〜っし、頑張るか!)
シンジとアスカは晴れやかな笑顔で別れ、駆け出した。さあ、それぞれの1日の始まりだ!

「『臨時秘書』ですってぇ!?…日向君、それマジ!?…司令と朝食ぅ!涙ぁ!?…箝口令よ!暫くはランクAAで!!…貴方、リツコの部屋で二人っきりにさせたげるわよ…で、どうなの?…春日?春に日向の日?取り敢えず食堂の臨時使用カードからの情報ね?…支払い時の映像解析?左手薬指にシルバーかプラチナのリング?ふう、先ずは安心か、外見は?…ストレートの長髪、眼鏡、…ちょっとまて。え?…それ一着数十万て代物よぉ!?…何そのあたしより年上だかマヤちゃんより年下だか判らないって…ええ、じゃあ箝口令はレベルA,連絡ありがと。とりあえず司令とリツコの動きは押さえて。…ええ、C,監視で。後宜しく。じゃ。」
「あ…(しまった〜ここコビニ…う、視線が痛いわぁ…)…も、問題無いわっ(気にしなきゃ)!」

…気にしろ。

「…ううううううううっっっ!」
「あらあら、泣かないで泣かないで、困ったわね…」
「す、グス、すいません…そ、それはご、御苦労為されたんですねっっ!そ、そんな事…グスン、知らないでわ、私無神経に…」
「マヤさん…優しいのね…、大丈夫よ、もう昔の話。只、忘れる事は無いわ。だってもうこうしてここ…この指にいつでもあの人は居るんですもの…」
「かっ…春日さぁ〜んっっ!ぅぅぅぅぅぅっ、グスッ、わ、私が、貴女の、ヒック、貴女の力になりますぅ、エグッ、だっ、だからっ、ヒクッ」
「ほらほら、泣かないで。それにね、私今幸せよ。だって私はこうやって生きているんですもの。それにこうして泣いてくれる人がいる、それはとても嬉しい事よ。」
「か…春日さ〜ん…グスッ、そ、そうですね、春日さんは今、こうしてらっしゃるのですものね。」
「そうそう、笑ってマヤさん。貴女の笑顔はとても素敵よ、貴女なら素敵な相手と幸せになれるわ。」
「スン…エヘッ、春日さんのお相手みたいにですか?」
「ええ、勿論。なんたって焼き餅妬きな私が『他の人に笑顔向けないで!』って拗ねたら『判った。私の笑顔は家族にしか見せない。』って本当に実行した可愛い人ですから…」
「ぷぷっ、そ、それは凄いっ!でも何か司令の口調みたい…」
「え?げ…碇さ、いや、碇司令ってそんな口調なの?実家からは無愛想だとは聞いてるけど、ご挨拶した時には普通にお話しておらっしゃられてましたけれど…?何か?」
「えぇっ!?あ、あの仕事の鬼が?…あぁ、それは多分、春日さんだからですよ。春日さんの笑顔はレイちゃんの笑顔位破壊力絶大ですもの、絶対そうです!それに司令がハンカチ渡すな…あ!」
「あら…お恥ずかしい処を見られちゃったわね…実は碇さん…あ、つい実家の癖で。碇司令とお話ししていて昔の事をつい思い出してしまって…レイちゃん?」
「えぇ、指令部直属なら説明されたかと思いますが、現在運用中のエヴァンゲリオンは二機、以前は三機稼働していました。その内一機は使途戦時に撃破されてしまったのですが、その機体のパイロットだったのが彼女…綾波レイちゃんです。一寸複雑な環境で育てられて…でも凄くいい仔なんですよ!美少女で、大きくなったら春日さんみたいな美人に…ああ、そういえばレイちゃん、春日さんに良く似てるかも。」
「あらあら、お上手ね、でもそんなお若いの?」
「ええ、そりゃあもう!見たらびっくりしますよ!なんたって未だ16歳、ピチピチの女子高生なんですから!あ、いけないもうこんな時間!じゃあ行きましょうか、先ずは発令所へご案内します。」
「宜しくね、マヤさん。」

「え?は?マヤちゃん!?彼女は!?」
「司令に案内頼まれたの。こちらは今度司令部付き臨時秘書として来て貰う事になった春日椿さんです。彼は私と同じくオペレーターの日向君です。」
「あ、ああ、宜しく。日向マコトといいます…こ、こいつは青葉シゲル、同じくオペレーターをしてます。…おい、シゲル!」
「は、はいっ、青葉シゲルですっ!よ、宜しくお願いしますっ!」
「あの、お茶をどうぞ。粗茶ですが…」
「あ、それは私が…」
「有り難うございますマヤさん、でもここは私がしますわ。それに勤務時間外の方にそこまでさせたら私の仕事、無くなっちゃいますもの」
「あ、それは…じ、じゃあお願いしますね。有り難うございます。」
「あら、そんな…」
「《おい、マコト、すげえ上品な人だな、何かマヤちゃんまでつられて口調が違うぞ。》」
「《育ちが違うんだろ、司令が自ら案内なぞ滅多に無いからな。》」
「こほん!何こそこそしてるんですか二人共!」
「「い、いや何も!!」」
青葉、マヤちゃんの視線に挙動不審。日向、監視モニターを体で隠す為更に挙動不審。伊吹、複雑な乙女心で挙動不審。

「湯呑みの方付けは私がしておきますわ。皆さんお仕事頑張って下さいね。」
「「し、しかし…」」
「ね?」
「「は、はいっ!」」
「ではマヤさん、給湯室は…ああ、あそこでしたね。ではこれとこれ、洗っておきますから。それでは失礼します。」
「では私も。後はお願いね二人共。」

「…シゲル…」
「…マコト…」
「「春が来た!!」」

…ロン毛、眼鏡。今の内喜んでおけ、後が怖いかもしれんが。なんたって敵は髭と白髪だ。マヤちゃん…頑張れ。

【いれぶんいいきぶ…ごめんなさい】

…しっかし展開遅っ!未だ一話から1日しか経ってないや…


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