『お父様と私』

【そのろく】 作・何処


「…と、父さん、その…は、話があるんだ…」
「何だ」
「こ、今度のクリスマスだけど、じ、時間開けてくれないかな…」
「無理だな。その頃は海外だ。ヨーロッパでのミサの後、アフリカへ飛び孤児支援機構主催クリスマスパーティーレセプション、米国で国連主宰のチャリティー、南米で老人逹との会議、ハワイで国連軍主催パーティーへ出席、帰国はクリスマス後だ。」
「そ…そう…じゃ仕方ないね…」
「司令…ご苦労様です…実は皆がクリスマスにホームパーティーを予定していたので宜しければご出席願えればと…」
「…冬月副司令がクリスマスから新年は国内事務を取り仕切る。もし良ければ冬月を呼んでやってくれ。時間は割ける筈だ、奴も喜ぶ。」
「はっ。」
「処で皆、食事は未だだな?賄いで良ければ食べていけ。」
「宜しいのですか?」
「ああ、調理のパートの奥さんが休みなので男の手料理だが、取り敢えず食える味だし、量はある。」
「…司令?まさか…」
「独身生活が長ければ其なりになる物だ。」

…おい髭。いい加減突っ込みも疲れるからそこらにしとけ。と何処かから声が聴こえる気がする一同。

「…司令の料理は美味しい…」
「!レイ!?あんた司令の手料理食べた事有るの!?」
「…おでん…けんちん汁…ラタトゥユ…どれも美味しかった…」
「因みに今日はポトフだ。圧力鍋で野菜とソーセージを塩胡椒で煮てコンソメを入れただけの代物だ。誰でも作れる。」
一同もはや声も無し。

…数刻後、第三ネルフ独身寮を後にした一同。アスカとレイを除いて皆疲弊した顔…そらそうだ。
「しっかし流石シンジの父親ねー、あの味は中々出ないわ!」
「やっぱり司令の料理は美味しい…」

やたら上機嫌なアスカ、ちゃっかりタッパーでお土産を確保したレイが半ばうっとりとした顔で答える。
「…ま、結果オーライって事でアレだけど…な〜んかやったら疲れたわ〜」
「…同感…何故か女として負けた気がするわ…」
「…なんか色々有りすぎて疲れた…ミサトさん、今日は外食にしません?」
「あ、良いわね!よ〜しお姉さん逹にむわっかせっなさ〜い!」
「ええ、それじゃ私の知ってる処にいい店があるわ。そこにしましょ。」
「あたし、これがあるから…」
「大丈夫だって!一度戻って冷蔵庫入れてから皆で出掛けるわ!いいことレイ、これが付き合いって物なの!判った?」
「了解、アスカ。」
「よーっし!それじゃ皆参りますか!さぁっ、生大が私を呼んでるわ!ビールちゃんまっててね!」
「ミサト、飲み代は個人負担よ。」
「グハッ!」
「あっきれた、一寸でもミサトを見直したあたしが馬鹿だったわ…」
「アスカったら…」

コンフォート17、リツコと一度別れたミサト逹が部屋に帰還し、シンジは冷蔵庫へレイから預かったタッパーを仕舞い、紅茶を入れる為台所へ、レイはリビングで読書、ミサトはシャワーを浴びて着替えるべく自室へ、アスカは交代でシャワーを浴びている。
「シンジー、レイにシャワー空くから次入りなさいって伝えて〜」
「うん判った〜、綾波ー、シャワー使ってー」
「ええ、判ったわ。」
「レイー、あんたの着替え、こっちにもう置いてあるからねー」
「有難うアスカ。じゃ遠慮無くお借りするわね。」
「シンジ〜、覗くんじゃ無いわよ〜」
「…アスカ、牛乳と紅茶どっちにする?」
「牛乳!ってつっまんないわねー、司令ぐらい予想斜め上な反応返してみなさいよ…」
「いやそれ無理だから。」
「でも…今日は有難う。」
「こちらこそ。」
「レイはシャワー中よ…シンジ…」「…ミサトさんは未だ着替え中…アスカ…」

「あ」「ん…」

「…アスカ、そこのカップとソーサー並べて。」
「…あ、うん判った。」

…二人共、どうやら無事成長している様子。

もうじき着替えたミサトとレイが来る。そして皆でお茶をすれば、じきにリツコ女史が来るだろう。夜はこれからだ。

【セブ〜ンにつづくぅ】


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