Name Entry System



Login Password : ■■■■





















NAME 碇シンジ
Sign S.Ikari
AGE 18
SEX Male




















......EXIT





















WARNING !!


HIGH SPEED DRIVING RPG


この物語はフィクションであり
登場する人物・地名・団体等は
すべて架空のもので
実在するものとは一切関係ありません。
作品中に描かれている走行シーンを
真似することは決してしないで下さい。
車の運転は交通ルールを守り
安全運転を心がけましょう。



「新世紀エヴァンゲリオン」は(株)GAINAXの作品です。
「レーシングラグーン」は(株)SQUAREの作品です。












 蒸し暑い真夏の夜。

 首都高速、湾岸線。


 有明JCTを過ぎた先、13号地の左コーナー。

 そこに、数台のクルマが列をなして飛びこんできた。


 先頭はヴァイオレットブルーのフェアレディZ、Z32。狂おしい青白色の閃光が路面を貫く。



 風の悲鳴、大気が切り裂かれる音が重なる。
 それを追いかけるように、全開のエキゾーストノートが立ち上がる。

 遮音壁の向こうから、蒼い光条が空を切り裂く。

 天の川に突如出現した超新星の如く…………


 無機質なコンクリートとアスファルトのかたまりが、TUNEDCARたちの全開走行に打ち震えている。

 魂が共鳴する……
 ……極限のSPEED領域で……



 Zのテールから突き出された4連のマフラーが紅い血潮を噴く。
 鬱血を押し流すように……アフターファイヤーを体内から炸裂させる。

 それによって身体の重みが抜け、Zはさらに加速する。


 後続のマシンたちは遅れはじめていた。





 交通が途絶える朝方の高速道路。
 最高速アタックにはうってつけの時間帯。

 こんなとびきりのシチュエーションは、そう何度もあるものじゃない。

 Zの本能はそれを敏感に感じとっていた。



 前方には何もない。

 ……ALL CLEAR……


 すべてが止まる最高速の世界へ…………



 他のマシンたちはもはや追いつくことができない。
 彼らの視界のはるか向こうに、一筋の赤い流れ星が舞っている。





 長いトンネルを抜けると、道は大きく左へ回り込んでいる。


 Zはじりじりとアウト側に寄り、そしていっきに車体を振った。
 ブレーキランプは点灯しなかった。

 荷重の抜けたリアタイヤが路面を撫でる。
 一瞬の滑走、そして再びフラットアウト。


 永遠とも思える瞬間の後、Zは闇の中へ向けて猛然と加速していた。


 黒いアスファルトに刻まれた轍…………

 月明かりを浴びて、赤黒く輝いている。





 その夜、空には紅い満月があった。

 東の空からのぼる太陽に、徐々にその姿がかき消されていく。



 次の夜、再び空に現れたのはいつもの白い月だった。

 それきり、あのZの姿を見ることはなかった。











新世紀最速伝説
The Fastest Legend of Neon Genesis
エヴァンゲリオンLAGOON

第1話 天使、再臨












 僕には将来なりたいものがない。

 18歳の今まで、ずっと流されるままに生きてきた。

 それはこれから先も変わることはないだろう。

 この流れはどこへ向かうのか知らない。

 別に知りたいとも思わない。


 僕はただ…………

 ありあまるこの時間を埋めるなにかが欲しかった。


 ただ、それだけだった……










『おかけになった電話は、現在電波の届かないところにいるか、電源が入っていないためかか』

 アナウンスが終わるのを待たず、通話スイッチを切る。
 代わって受話器から流れてくる電子音をしばらく聞き流し、僕は携帯を下ろした。

「電話は苦手だ…………」

 誰にともなしにつぶやくと、僕は携帯をポケットにしまった。


 かわりに、一切れのメモ用紙をポケットから取り出す。

「…………BAYLAGOON、か…………」

 くしゃくしゃになったメモ用紙には、ボールペンで

『22:00 BAYLAGOON埠頭』

とだけ書かれている。


「先輩らしいや…………」

 これは呼び出しの手紙だ。
 体裁も何もないけど、僕に用件を伝えるにはじゅうぶんだ。

 いつ、どこへ行けばよいか。それが分かれば問題ない。



「(2年ぶり、なんだよね…………)」

 ここは第3新東京市と名前を変えた横浜市、YOKOHAMA STATION前。
 僕はつい先ほど電車でここに着いたばかりだ。





 昨日のことだ……。

 僕が世話になっているTUNE SHOPの先輩……
 2年前、なんの前触れもなく突然僕の前から去った先輩から手紙が来た。

 それは、すぐにこの第3新東京市に来いというもの。



 期待、というほどのものじゃない。

 嫌、でもない。

 不安、そうかもしれない。



 なぜ行くのか、なんのために行くのか……
 それすら分からないまま、とうとう来てしまった。





 …………初めて見る第3新東京市…………

 …………新世紀の中心となるべき街…………



 街の雑踏に沈むのが嫌で、僕は駅前から動けずにいた。


「……あとは……これか」

 ポケットからもう一枚を取り出す。

 先輩からの手紙にいっしょについてきた写真。
 茶色いスポーツカーを背に、妙に挑発的なポーズを取って微笑んでいる少女の写真。
 そして、おそらくその少女が書いたと思われる

『シンジ君へ
わたしが迎えに行くから待っててね♪』

 というコメント。
 今のところたよりにできるのはそれくらいだ。

 時間にはまだ余裕があるし、しばらく待ってみよう。







「……?」

 ふと、視線を感じて振り向く。


「……………………」

 信号待ちをしている1台のクルマがいた。

 遠くて、何のクルマなのかは分からない。
 だけど、その地を這うような低く幅広なプロポーションは、まぎれもなくスポーツカーのもの。

 夜の闇に溶け込むことなく、不気味な、しかしどこか惹きつけられる紫色をしている。

「………………」


 僕は思考を奪われたようにそのクルマを見つめている。

 音が聞こえるはずだけど、不思議にあたりは静まりかえっている。
 街の騒音さえ、聞こえてこない。



「……!」

 ……こんな経験はないだろうか……

 ……ある一点にじっと注意を集中しているとき、ふとその注意が別の方へそれていく……
 僕は一瞬視線がそれ、そのクルマを視界から外す。

「…………?」

 再び視線を戻したときにはそのクルマの姿は消え、そこにはなんの変哲もない街の風景しか見えなかった。

 ざわめく街……
 夜はもう9時を過ぎようとしているが、人の流れは絶えない。

 都会なんだ、と僕は思う。



 駅前の大通りを流れていくクルマの音……

 煤けた鉄の音。
 錆びた風の音。

 それは街のノイズ。










 爆音。

 立ち並ぶ高層ビルを飛び越えて、空から降り注いでくる音。
 どうやら「時間」が来たようだ。

 鋼鉄の獣たちが目覚める時間……

 いわゆる「走り屋」と呼ばれる者たちの時間だ。



 どこからともなく聞こえてくる第一声は、狼の遠吠えのように。

 それに呼応するように、街のあちこちから咆吼が上がる。
 決して馴れ合うことなく……しかし、それでいてお互いを求めあう。
 ……見えない仲間を求めて……



 街は、にわかに騒がしくなっていく。





 さっそく1台が現れた。

 白いクルマだ。あれは……スカイライン、R32か。リアに赤いエンブレムがきらめく。GT-Rだ。
 交通がまばらになった駅前を猛然と突っ走る。

 軽くアフターファイヤーを吹き、交差点を曲がっていく。
 その姿を僕は目で追い続けた。



 また1台。


 吸い寄せられるように僕は、その音のする方を振り向く。

 ヘッドライトの光をなびかせて、流星のように飛んでくる紅い星。
 ボディの曲面に反射する街の灯りは、まるで光のバリアを纏っているかのように……

「…………!!」

 切り裂かれる風が、悲鳴をあげる。

 僕が振り向いたときには、すでにそのクルマは道の向こうに消えようとしていた。
 他とは違う速さ。圧倒的だった。

 テールランプの形から、FD3S型RX-7だと分かる。


 呆然とそのFDを見送る僕に、さらに追い打ちをかけるようにもう1台。

 黒いシルビアだった。
 甲高い爆音を上げ、FDの後を追う。

 シルビアが僕の目の前を走り抜ける瞬間、軽い衝撃波を感じた。


 ガラス張りの高層ビルに、スキール音が反響する。



「……すごい」

 思わず呟いた。

 別にあの程度のクルマならいくらでも見たことがある。
 それでも僕が圧倒されたのは、その走り、その姿から溢れるオーラだ。

 ただ者じゃない。あれをドライブしている人間は。



 彼らの後からも、何台ものクルマが続いていく。

 なにかを目指すように…………
 夜の闇の中、どこまでも続く道の向こうに…………


 僕は自分の胸に手を当てる。

 ……鼓動が、速くなってる。


 ……僕は……
 この空気が……、張りつめているのを感じてる。

 今夜は……月が、紅い。



 ……紅の月、輝く夜…………

 僕の胸の奥のなにかが……
 ……僕を、かき立てる。










 駅前を走るクルマたちがひととおり通過していった後、僕は駅のベンチに戻った。



 と、その時。大通りの方から、もう1台のクルマがやってきた。

 そのクルマはあたりを見回すようにいったん減速して、駅前のロータリーに入ってきた。


 それは、ダークブラウンのボディカラーに身を包んだ180SXだった。

 VeilSide独特の派手なフルエアロで身を固め、大きく口を開けたフロントバンパーからは巨大なインタークーラーのコアが見える。
 リヤにはレーシングカーのようなGTウイングが掲げられ、車高はかなり低い。
 リヤゲートウィンドウには、天使セラフィムを描いたステッカーが貼られている。それに重ねて、「TEAM MidNightANGELS」の文字。

 一般人から見れば近づきたくない雰囲気を漂わせているクルマ。

「……(だけど、それは僕たちの仲間)」


 180SXは僕の前に停まった。
 コクピットのウィンドウが下り、ドライバーの少女が僕に呼びかける。

 手紙の写真に写っていたあの少女だ。

「おっまたせ〜!
碇シンジ君ね?」

 明るくそう言って、僕に微笑みかける。

 少しくせっ毛気味な、栗色のショートヘア。
 ボディラインを際だたせるきつめの白いブラウスとブルージーンズという格好は、どこから見ても普通の少女の姿。
 だがその上に、違和感炸裂なごついジャケットを羽織っている。
 黒い合成革の生地に、180SXのリヤウィンドウに貼られているのと同じ天使のイラストが染め抜かれている。その上に赤い文字で、「TEAM MidNightANGELS」と刺繍されている。
 水色の襟章が付いているのは、チームに入って間もない者の目印だ。

 そのミスマッチさに、僕は一瞬呆気にとられた。

「……き……霧島、さん?」

 かろうじてそれだけ言う。

「さ、時間がないわ。はやく乗って〜」

 その少女……霧島さんが僕を急かす。

 僕はナビシートのドアを開けて180SXに乗り込んだ。
 バケットシートに身体を収める。

 この固い感触……ずいぶん久しぶりだ。

「じゃ、れっつごぉー♪」

 言うが早いか、霧島さんは180SXを激しくホイールスピンさせながら発進した。
 僕はとっさにシートの縁につかまる。

 180SXは大通りに出ると、そろそろ増え始めた走り屋たちのクルマの流れに紛れ込む。


 向かうのは……そう、BAYLAGOON埠頭…………










 眠ることのない街、第3新東京市…………
 ここベイラグーン埠頭には、大勢の若者が集まっていた。
 ざっと100人はいる。

 ………BAYLAGOON wharf………
 走り屋チーム「MidNightANGELS」のBasePoint…………

 ここ第3新東京市における、走り屋たちのFRONTIER……



 埠頭には既に、対戦相手となるチームのメンバーが集まっていた。

 今日、ここベイラグーン埠頭での交流戦を戦うのは、TEAM「NightRACERS本牧」。南横浜は本牧埠頭を本拠地にしていて、MidNightANGELSと並ぶ第3新東京市トップクラスのチームだ。


 集まったクルマたちの中でひときわ目立つ、真紅のRX-7。その隣に並ぶ、漆黒のS14シルビア。彼らがNightRACERS本牧のツートップだ。


「聞こえるわ……夜の響き」

 RX-7のドライバーが、これからはじまる饗宴を待ちきれないといったふうに漏らす。

 女だ。赤みのかった長い金髪をトップにまとめている。
 彼女の名は、惣流アスカラングレー。

 23歳という若さでNR本牧を率いる、第3新東京市屈指の走り屋。


 平日であるにもかかわらず、埠頭に集まった人数はいつもの週末より多いくらいだ。
 それだけ、今夜の一戦が注目されているということだ。

 高層ビルの谷間を縫って、エキゾーストノートが折り重なりながら響いている。


「おう!しびれるで!わしらの音!」

 関西弁で威勢良くしゃべるシルビアのドライバーは、名を鈴原トウジという。ツンツン毛を立てた茶髪で、見た目通りの熱血体育会系だ。

 念のために言うが、彼の服装はNightRACERSのロゴ入りTシャツ。
 決してジャージは着ていない。



「走りたくてウズウズしてんのね」

「ぶっとばしたくてなあ!」

 舞台の開演を待ちわびる2人。
 彼らを取り囲むように、ギャラリーに集まった者たちが埠頭じゅうに散らばっている。

 空に熱気が満ちている。

 それは、単なるお祭り騒ぎの熱さではない。


 伝説を求めて…………

 夢見る者たちの、希望に溢れた想いだ。










 若者たちの集団からは少し離れた倉庫群。
 その一角に、黒塗りのLIMOUSINEが数台停まっている。

 2人の男が、埠頭に集まった若者たちの様子を見つめている。

「10年ぶりだな」

「ああ」

 白髪の老人が、もうひとりの男に話しかける。

 髭面に赤いサングラスの男はそれに答え、しかし視線は動かさずに人の群れを見ている。

「来るべき時がついに来たのだ。
我々にとって避けることのできない試練の時が……」

 髭の男はつぶやくように言った。

「彼にとっても、だな」

 白髪の男がそれに付け加える。


 響きわたるエキゾーストノートが、いっそう激しさを増した。










 さて、ベイラグーンへと走る180SXの車内。

「…………霧島さん」

 僕はつぶやくように言った。

「あはは、さん付けなんていいよ。
他人行儀になることないって」

「……そう?」

 見た目はだいたい僕と同じくらいの年頃に見える……。
 本人がいいって言ってるんだし……

 ……気にすることはないか……


「……綾波先輩は、どうして僕を呼んだの?
どうしてわざわざこの街に……」


 180SXはそこそこのペースで飛ばしながら、BAYLAGOONへの道を走っている。

 そこそこ、というのは僕らの基準で、一般から見れば明らかに速すぎるだろうけど。

「2年前に第3に行って……つまりこっちに来てから、ずっと音沙汰なしだったからさ……
どうして今ごろ、いきなり呼び出したんだろう、って……」

「う〜ん、それは綾波さんから直接聞いたほうがいいわ。
シンジ君にとって大事なことだから、ね。
……あ、もしかして緊張してる〜?2年ぶりの再会に〜」

 彼女は悪戯っぽい声で言った。

 カーブにさしかかると、横Gで身体がシートに押しつけられる。
 フルバケットのスポーツシートはしっかりと身体を支えてくれる。これがノーマルのシートなら、足で踏ん張らないと身体が持って行かれてしまうだろう。

「そういうワケじゃないけどさ…………」

「もうっ!気にすることないって〜」

 霧島は笑いをこぼしていた。
 そんなに可笑しいかな……?





 やがて視界が開ける。

 ビルの林が途切れ、海の向こうに星の集まりが見える。

「あれが……BAYLAGOON」

 海へ向かって突き出した人工の島。

 その中央にそびえ立ついびつな塔、それを囲む低層のビル群。


 新臨海開発地区、BAYLAGOON…………

「そう。あれが私たちのSTREET……
私たち走り屋の、最後の砦となるところよ」

 語りかけ、そして言い聞かせるように霧島は言う。



 ……BAYLAGOON……


 …………地上に輝く星…………

 そうさ、そこは僕たちの空…………

 ……僕たちの生きるSTAGE……


 混沌の中の小宇宙さ…………



 ………埠頭が放つ光は………

 ……僕たちのアツさ……


 なにものにも遮ることは出来ない、僕たちの純粋な想いさ…………











<前へ> <目次> <次へ>