未来の過去、過去の未来

1話 独りの二人







僕は、もう一度触れたいと思ったんだ…。

…でも、やっぱり他人を傷つけたり傷つけられたりするのは怖いかもしれない……。

赤い空。
「やっぱり、僕だけだよね…、戻ってきたのは。 あんなこと思ったんだし」
少年―名前は碇シンジという―が口走った。
「でも、他の人に、僕じゃないヒトに触れたい、と思ったのは嘘じゃないんだ」
そう、呟く。
「でも、ヒトはヒトを傷付けるんだ。 僕は、もう、耐え切れないと思う」
思い出すのは、赤い髪の少女。
「アスカは僕を傷つけたんだ。 でも、もっと僕はひどいことをしたんだ」
病室の記憶。
「だから、もう他人は要らない」

じゃりっ

少年が音のした方へ頭を向けた―
「?」
少女が寝ている。 見知らぬ少女らしい…が。
ゆっくりと、彼女が起き上がった。 怪我はしていないようだ。
少女が目を開けた。
黒髪、黒い目、黄色の肌、何かに怯えたような瞳の中。
そう、それはまるで…
「「僕だ」」


「「な、なんでぇ!?」」

少年は戸惑った。
それはそうだ、今まで自分だと思っていたものが隣にいるのだから。
そして、それ以上に少女は戸惑った。
少年と同じ理由のみならず、あまつさえ性別すら違うのだから。
「なんで、なんでなんだよ!」
少女は慟哭した。
「ボクは、他のヒトに遭いたかっただけなのに! どうして、どうしてボクがいるんだよ…」
その問いにも少年は答える術を持たなかった。 当然だ、自分でさえ状況を把握していないのに。
しかし、それでも少年は少女を抱きしめた。 自分の半身が離れてしまうようだったから。
「大丈夫、大丈夫だから…。 僕が、僕が居るから」
「んっ…」
半身を抱きとめた少年は、心が安らいでいくのを感じ、
半身に抱きとめられた少女は、自分の居場所を見つけたと感じた。
隔てるものの無い人の心に、二人は初めて出会い、そして、赤い、赤いこの世界で、生き始めた。



それは必然だった。
何も無い、誰も居ないこの世界。
傷ついた二人の心がお互いを求め合うのは。
そうしないと、壊れてしまいそうだったから。
そうしないと、泣いてしまいそうだったから。

「んんっ…、はぁっ…」
少年の手が、少女の小さな双丘に触れるたび、少女の声が虚空に響く。
少年に触れられる前から期待で硬くしこっていた双丘の先端に、少年の指が伸びる。
「! くぅっ、うん、はあっ…」
敏感な反応を示した少女に満足したのだろう、少年は執拗に先端を弄ぶ。
「ここ? ここが気持ち良い…?」
「う、うんっ…。 ああっ、はあ、ひうっ、んっ…!」
男とは思えないほど細い指での繊細な愛撫に、少女の乳首は更に硬さを増した。
穢れを知らない、幼いといっても良い少女に似つかわしくない艶かしい喘ぎ声に、少年も陰茎を熱く滾らせる。
「それじゃあ、こういうのは…?」
「あああっ! やっ、そこは、か、感じすぎてて…ひゃうっ!」
敏感になっている少女の、薄い桃色をした乳首に少年の舌が艶かしく動く。 その動きはまるでナメクジのように。
「あふっ、ううん、あっ、あっ、あっ」
少女の声が段々と上擦ってきた。 周囲には、少年が少女の乳首を舐め啜る音しか聞こえない。 少年はなおも執拗に責めを加える。
「ああっ…! そこだけ、そ、そんなにしたら、そこだけで、ボクっ」
それを聞いた少年はしかし、その手を緩めるどころかさらに激しく少女の乳首を啜った。
「そこっ…! へ、変になっちゃううう! ひっ、あっ、ぎっ、だ、だめええええっ!」
少女の身体が数瞬痙攣―痙攣と呼ぶには余りにも激しすぎたが―し、力なく崩れ落ちた。


少女は絶頂に達した後の白濁した意識の中で、しかしそれを見た。
屹立する少年の陰茎。 それは恐ろしくもあったが、それと同等に、いや、それ以上に愛しく思えた。 少年もまた興奮しているのだろう、多量の先走り液で亀頭が光り、陰茎が震えている。

「んっ…」
そして少女は、躊躇いもせず少年の陰茎を口に含んだ。
「はあああっ…!」
少年の陰茎を、これまでに経験したことの無い快楽が襲った。 腰が無くなった様な快感、そして充足感。
「ん、んぐっ…」
少女の口腔の中で更に大きくなり、そして跳ね上がる陰茎。 少年はこの快感を半身にも享受して貰いたかったのだろう。 少女の体勢を逆にし、内腿まで垂れてきている愛液、その源に口をつけた。
「ひぎっ…! ああああっ」
先程までの乳首への愛撫とは比べ物にならないほど強烈な快感が、秘裂から脳天まで駆け巡った。
「はあっ、あっ、あっ」
そして少年もまた、陰茎から立ち上ってくる衝撃に酔っていた。 体液が交じり合うことで発する、淫靡な音が響き渡る世界。


「ああっ…! 僕、もう…」
激しい愛撫で、精液が出かかっている。 少年は暗に止めてくれるよう頼んだつもりだった。
「ああああっ、んっ、はあっ、そ、そんなにしたら…っ」
が、逆に少女の奉仕は激しさを増した。
「あっ、あっ、あっ、あっ……」
もう少女の秘裂を舐めるどころではない。 段々と少年の頭の中が麻痺してきた。
「いっ、はっ、で、で、出ちゃうよっ…!」
まだ少女といっても通じるような繊細な声で彼は鳴いた。
その一瞬後、少女の口内に精液が迸った。 正に“噴出”といって差し支えないほど大量に。
「ん、んぐっ…! んっ…、んんっ、んむ…」
しかしその大量の精液を、少女は全て飲んだ。 決してそれ自体が美味な訳ではない。 だが、ただ、ただ愛しいのだ、どうしようもなく。 そして、自分の半身が出したもの、それを飲むという行為だけで己の中心が熱くなってくるのを止められない。 それが証拠に、少女の愛液は今はもう、秘裂から垂れるほどになっている。 疼く、もっと感じたいと。 そして、その疼きを抑えられるのは。 精液を全部吸い取られそうな快感の中で、少年も感じた。 自分は、この少女を愛しているのだと。 この半身こそ、自分の求めていたものだと。
「んくっ…、ぷはっ…」
少女が顔を上げた。 少年と目が合い、そして
「「君と、一つになりたい」」
と二人は言った。



「怖い…?」
少年が尋ねる。
「うん、少し…。 でも、君はボク」
「僕は君」
「だから、大丈夫。 …来て」
少女からの誘いに、少年は限界まで張り詰めた陰茎を、少女の充血した裂け目、その入り口に押し当てた。
「ひっ、うんっ、あ…ん」
もうそれだけのことで、快感によって少女の背筋が震える。
「いくよ…」
少年が徐々に少女の中に割り入っていく。
「ひぐっ…、ん…」
「痛い?」
「だ、大丈夫…、だから…もっとボクの中に入って」
「分かった…」
そういうと少年は、少女の苦痛を短い時間で終わらすよう、陰茎を一気に奥まで突き立てた。
「ひっ、あああ…っ! きゃあああっ!」
無理矢理引き裂くような音を立てながら、異物が膣内に侵入してきた。 しかし、少女は破瓜の痛みよりも、今までにないほどの充足感を感じていた。 そう、それはまるで幼き日、記憶の彼方にあった幸せな時間のような。


「痛くない?」
「…うん、動いていいよ」
半身に嘘をついても仕様が無かったし、現に急速に痛みが引いているのは事実だった。
「じゃあ、動くよ」
「! あふっ、ひんっ…、あ、はあっ…」
―そして、信じがたいほどの快楽が押し寄せて来ているのも、また事実だった。
「ああっ、ぼ…ボクの中、気持ちいい?」
「うん…っ、あっ、気持ち…良いよ…、はあっ」
「ボクも…、あっ、ひゃっ、ふあ、うんっ…!」
粘膜と粘膜が交わりあう異質な音が、二人の興奮を高めていく。
少年が、少女の中一杯に入った陰茎を引く度に、少女は内臓を引きずり出されるほどの快感を味わう。
「あああっ、気持ち…、いい…っん…あああ!」
少女のまだ小さな膣に挿入する度、少年は陰茎を食い千切られそうな感覚に襲われる。
「んっ、あっ、はぁっ、あっ」
自分の求めていたものをやっと見つけたという幸福感と、性交による性感がないまぜになって、口腔での愛撫では到達し得なかった高みに、二人は上り詰めようとしていた。
「あっ…、うんっ…、はっ…! んん! な…なんか来てる…ひっ、あ、ふぐっ…」
「うん…、はあっ、ぼ、僕も…もう、あっ」
「あ…ん、や、ま、真っ白になってきた…くっ、あっ! あっ、ひぐっ、あっ、ああ!」
「ぐっ、っだ、出すよ! くああ!」
「「ああああああああ!」」
ついさっき放出したばかりだというのに、少年の精液は膣の中だけでは収まらず、結合しているその隙間から溢れ出した。

しばらくして、少年が息をつきながら離れた。 大量の精液と血に塗れた少女の身体は生臭く、またそれ故に淫らだった。
少年の陰茎は未だ治まることを知らず、天に向かってそそり立っている。 しかしそれは少女も同じだった。 あの白くなる感覚、それを求めて身体が疼き、愛液が溢れ出ている。
「もう一回…」
それはどちらからだったのだろう。 自分の半身と快感を求めてのまぐわいは、それから二昼夜の間続いた。

傷の舐め合いというならそうなのだろう。 しかし責めることのできる者は居ない。


<前へ> <目次> <次へ>