レイvsアスカ ミラクルスーパー大戦
<中編>
written by こめどころ


今迄のあらすじ

イカリケーキ店で自宅同居を始めたシンジとアスカは人もうらやむラブラブ公認カップル。
でも法律上は、もはや正義の味方としての活動をしていないアスカは不法滞在外国人労働者。
あやうく逮捕されて、出入国管理委員会に突き出されそうになる。それではという事で、碇家では
アスカを正式に嫁として入籍する事を決定。学校にも、あっというまに知れ渡る。だが、学校では
一縷の望みを持って、アスカとシンジを慕う者がまだまだ多数存在した。しかしもうそんな事は2人
の目には入らない。通学路で繰り広げられる熱熱ぶりに朽ち果てていくファンの骸。
そこに敢然として立ちあがったのがアスカファンクラブの影の会長綾波レイであった。
男の心を自由に弄ぶ力を持った月の使者綾波レイはその力を使い、シンジを誘惑しようと考える。
腹心の部下を使って、シンジを拉致監禁し、ニンフィット能力全開でシンジに迫るのであった。







「碇くん・・・・・来て・・・・。」


レイはゆっくりと部屋の中に歩を進めながらシンジをいざなった。


「ぁ、綾波・・・・。」


怪しく光るルビーの瞳が輝く。その色を見ていると、ふーっと気が遠くなるような思いに囚われる。
こんなに離れていながら
綾波の悩ましい香りが流れてくるような気がする。風が吹きレイの身に纏っていた薄絹のローブが
解け白い肩が見えた。
そして・・シンジはふらふらとレイの横まで引き寄せられるように近づいていった。レイは布を取り払
った。はっとし、うかがうように、レイを見るシンジ。


「いいのよ。そのままつづけて・・・・。」

「い、いいの?」


そこに横たわり、恥かしげに揺れている柔らかい曲線。なんて優しいラインだろう。それに近づいて
みるとかなり大きい。シンジはそっとそこに唇を寄せる。軽く口付けをした後、舌でゆっくりと舐りあ
げた。甘い・・・なんて甘いんだ。綾波の・・。立ち上る香りに全身が包まれたような気持ちになる。
シンジはたまらずむしゃぶりついていた。


「ああ・・・綾波・・・すばらしいよ。なんて大きくて可愛くて、柔らかいんだろう。」

「碇くんがそこまで言ってくれるなんて・・・・。ねえ、もっと・・・。」


頬を染めてレイはシンジに甘えるように言った。シンジはもう一度そこに唇をつけ、優しく吸った。


「うれしい・・・。」


瞳を潤ませて、レイはシンジの髪を優しく撫でた。


どかあああんっ!!


「な、なにっ!」


思わず立ち上がるレイ。
煙がむくむくと立ち昇る中。ゆらりとたちあがる影一つ・・・。
らんらんと輝く瞳、輝く金髪からエネルギー波が陽炎のように揺らめき上がる。
凄まじい闘気が伝わってくる。
背中に渦巻く金髪と、真っ黒なマントがバサッと下向きに流れる。顔には黒い半マスク。手には長
い鞭。そしてスレンダーな身体に、今にも胸が弾けそうなダイナマイトバストを包む、ぴったりと張り
付いた真紅の超ハイレグレオタード。踵の高いショートブーツ。今回の特別ボーナスは最新流行、
腿までの黒いフィットストッキングだぁっ!!いつもにも増して破壊力大幅アップだっ!!


「な、なにものだっ!!」


駆けつけた綾波親衛隊直属近衛ガード部隊が腰を後ろに引き、心持ちかがみながら叫ぶ。


「人呼んで、ミラクルスーパーアスカ!!人の旦那に何しようってのよ!!」


「あっ、アスカ!」


嬉しそうに駆け寄るシンジ。



ばきゃっ!!



殴り飛ばされるシンジ。たっぷり15mは吹っ飛んで、噴水に頭から突っ込んだ。


「な、なんで。アスカ。それにどうしてスーパーアスカに変身しているの?もう、超能力は使えなくな
ったんじゃなかったの?」


「だまらっしゃい!!」


アスカは、大声で叫んだ。


「さっきまでするとかしないとか、柔らかいとか舐めるとか、甘いとか。一体何をしてたんだあっ!」


アスカイヤーで、室内の会話全てを聞いてしまったらしい。怒髪天を突くとはこのことだ。


「そ、それは、綾波が僕のために。」

「ええい、うるさいうるさいっ。聞きたくも無いわっ。」

「そんな・・・尋ねたから答えただけなのに・・・、」

「あの・・・。アスカちゃん?」

「なによっ!!レイ、あんた人の亭主寝取ろうたぁいい度胸してるじゃないの。」

「寝取るって、僕ら・・・・。」

「僕ら!僕らですって?もう二人って複数形で自分達の事を語るのね!ひどい!でも、ただじゃあ
渡さないわよ!私を倒さない限りシンジはあなたの物になんかならないんだから!!」

「あ、あ、あ、アスカ!話をきいてよお。」


シンジが叫ぶが聞くつもりは無さそう。


「やっかましいいっ!あんたは、レイの貧相な胸の事でも思いながらそこでねてればいいのよっ!
アスカバブルシールドッ!!」


いいざま蹴りを食らわせて、またもや吹っ飛ばされ気を失ったシンジをボール状のシールドで包み
込む。その七色に輝くシンジボールを、ふわりと持ち上げてアスカは言った。


「貰って帰るわよ、文句はないわね。」

「待ちなさいよ。それは困るわ。」

(「大体何のためにシンジを攫ったかというとアスカちゃんといつまでも一緒にいたいからなのに。
私のアスカちゃんをシンジという人に独占されてしまうのがいやだからなのに。」)


レイはそう思っているのだが本来口が重い彼女はあうあうと言うばかりであった。そうこうしている
うちに、アスカはシンジ入りボールを抱えて宙に飛び立ってしまう。


「ああ、いっちゃう!青葉っ、日向っ!アスカちゃんを止めるのよっ!!」

「御意!!」

「近衛師団機動部隊ウナゲリオンでませいっ!!」


ぐをおおおおおおーーーーん!!


真っ白な巨大ロボットのようなものが、いやらしく唇をめくり上げて立ち上がる。


「ひいいいっ、な、なんですかああ!これ!こんな気持ちの悪い物はいやですうっ!!」

「やばい、レイ様の人格変換薬が切れたぞ。」


本来のレイは、ふだんはへっぽこな疑似人格に包まれてこころが傷つくことを避けているのだ。
この所、自由にくらせるようになり疑似人格は出番が無くなっていたが、アスカに怒られたという
恐怖心が再びへっぽこ人格を呼び出してしまったらしい。


「一体どうしたんですかぁ。日向さーん!青葉さーん!たすけてくださあい!!きゃああっ!」


起動したウナゲリオンが次々とアスカを追って飛び立っていく。その余波で隠れ家は破壊され、
がらがらとレイの頭の上にその破片が降りかかる。


「レイ様っ!!」

「い、今行きますっ!!」

「ばか野郎オレが先だ!」

「おまえこそ手を放せよな!」


と叫びつつどちらが助けるかの足の引っ張り合いでつかみ合っているために駆け寄れない2人。
その横を風のように走りぬける一つの影。


「レイ様っ。さあ、こちらへ。」


足をくじいたレイを負ぶうと、ぽんぽーんと跳躍を繰り返し、崩れ落ちる隠れ家から脱出する。唖然
としていた青葉と日向は逃げ遅れて家屋の下敷きに。


「わああああああっ!!」


脇役はいつも悲惨・・・・。


「あ、ありがと。でも、助けてくれたあなたは誰なんです?」


にっこり笑って答える笑顔が美しい。


「伊吹マヤ。今度地球に赴任してきました。レイ様付きの家庭教師兼お目付けです。」

「そうですかぁ。綾波レイです〜。どうか宜しくお願いしたいのです。ぺこぺこ。」

「あらあら、ショックで人格変換を起こしちゃったとこだったのね。かわいそうに。一体何をしていた
ところだったの?」

「碇くんをご招待して私の手作りの洗面器大超大型プリンをごちそうしていたところだったのです。
プリンと言うのは地球上で最も美味しい御菓子ですう。いつかはバスタブで作ってみたいのですが
今のところは洗面器の大きさが限界なのです。あの洗面器プリンに顔を押し付けるようにして青虫
さんのようにして食べているとえもいわれぬ幸福感が襲ってくるのです。でも、今回は幸福感では
なく、アスカちゃんに襲われたのです。急に叫びながら殴り込んできたのです。せっかくのプリンま
だ半分のこってたのに。しくしく。ちょっと見てくるのです、もしかしたらまだ食べられるかもしれません〜。」


崩れた屋敷に駆け戻ろうとするレイ。それをマヤがやんわり止める。


「あぶないからだめ。プリンとやらは、私がもっと大きいのを必ず作ってあげますから今回は我慢し
てね。レイちゃん。」

「わかったのです。残念ですが今回はあきらめます。でも、ああ、もったいないのです〜〜。」

「ところで、飛んでいったウナゲリオンは、これからどうするのですか。」

「すっかり忘れていたのです。アスカちゃんにはプリンの恨みもできた事だし是非捕まえてシンジ
君を取り返すのです。横須賀の米空軍に出動を命じてあります。練馬と立川も今回は味方です。
ヘリと地上部隊が出動しているのですう。」

「あー。いつのまに。すごいですね、レイちゃん。」


ほめられて、両手をばたばた振って喜ぶレイであった。





富士の広大な原生林を横切るようにアスカはシンジ入りボールを抱えて飛んでいた。


「ああ、やっととりかえした。ちょっとぼろぼろになってるけど・・・しょうがないよね。浮気なんかする
方が悪いんだからねっ。」


シンジのあまりのぼろぼろぶりを見るとさすがにちょっと罪悪感を刺激されて独り言をいうアスカで
あった。そのとたん。ドカン!ドカン!と周囲で何かが爆発を始めた。富士の戦略自衛隊高射砲陣
地がアスカに発砲しているのだ。キン!!と音がした。おでこに何かがぶつかって爆発したのだ。


「いった〜〜。」


ドドン!ドーン!バーン!


たちまち周囲は弾幕に包まれる。一発が肩口。もう一発がおでこに命中!只の高射砲ではない。
大気圏外の周回軌道にいる衛星までも攻撃できる超精密高々度高射砲。その威力も並大抵では
ない。その直接射撃をせいぜい高度1000mで受けて「痛い。」じゃないだろうと思うんだけど・・・。
当たっても別に何とも無いが煤には閉口だ。(丈夫だねえアスカちゃん。)


「むはっ!ぺっぺっ。なんだってのよいったい。官憲は民事不介入って原則を知らんのか。ったく。」


アスカは、どうやら警察が仲裁に来たんだと思っているらしい。この子も結構ボケボケアスカなとこ
があるんだよねえ・・・・。
いてっ!アスカは片手を広げて真っ直ぐに高射砲陣地に向けたのだった。


「ええい!アスカソニックムーブ!!」


キ---------ン!!


甲高い音が上がるとふっと消えた。地上では、高射砲陣地が大騒ぎになっている。砲身に次々と
ひびが入ったかと思うと、粉々に砕けてしまったのだ。次に隊員達が次々と耳を押さえて転げまわ
る。直接の波動からはずれていたが猛烈な超音波の波動が脳を激しく揺さぶったのだ。うるさい
高射砲陣地は、あっというまに沈黙させられた。


「ふん、ざまーみろー、だ。」


そこに次々に飛来したのは、航空自衛隊及び米軍の、F21とSA2100という、この時代の最新鋭
戦闘機である。その機数は、およそ30機。ボールを抱えて飛ぶアスカを盛んに威嚇する。


「ああ、うっとうしいわねえっ!あんまりしつこいと撃ち落としちゃうぞ。」


その声が聞こえたのかどうか、戦闘機群は、いったんアスカの回りから引き揚げたかのように見え
た。しかし、レイ様命に固まった彼らが簡単にあきらめるわけが無い。尾翼にはいずれも燦然と輝
く綾波公国章がペイントされている、筋金入りのアヤナミスト達である。綾波レイの為なら命も家族
も地位も名誉も捨てた、ばりばりの・・・。


「アタックインフォメーション!各機ターゲットオン!!」


機上の迎撃用照準がピーッと、甲高い声を上げた。ロックオンされた瞬間、30機以上の日米連合
綾波公国軍戦闘機の腹から全ての空対空ミサイルが吐き出された。そのミサイル群が、猛々しく
アスカを襲う。


「あっ、あいつらあ〜〜っ、ほんとに撃ってくるなんてぇっ!!ここは市街地の真上じゃないのよ。」


つまり地上すれすれに飛行したり、ミサイルをへし折ったりして航行不能にしたりすれば一般民衆
にも被害が出てしまうというわけである。かといって、戦闘機を叩き落としても結果は同じである。
正義の味方ミラクルスーパーアスカ、絶対絶命!


「ふっふっふっ・・・。このアスカ様を甘く見るなよぉ〜〜。地球人なんてシンジ一人が生残ってさえ
いればあとはどうなったって・・・。」


おお!なんという恐ろしい事を!怒りの余りその使命を忘れてしまったのか、アスカ!


「だめだよっ!!アスカは正義の味方でしょっ。あの戦闘機の人たちだって、レイたちに操られて
いるだけじゃないか!」


ボールの中で気がついたシンジが必死で叫ぶ。


「ば・・・ばっかじゃないの!冗談に決まってるじゃないの。冗談冗談・・・!ほほほほほほ!」


ほんとだろうか・・・。シンジは不安であった。ともあれアスカの頭脳は犠牲者を出さずに敵をやっつ
ける事に集中した。さしあたり。(^^;
しかし戦闘機群とミサイルを被害を出さずに処理するにはちょっとシンジボールが邪魔である。


「あ!いい事思い付いた。」


アスカはポンと手を叩くと、シンジボールを更に大きくして、2重にシールドを重ねアスカファイヤー
を口から吹き付けた。ボールの外側が赤く染まる。一息分の火を噴きつけるとボールの中の気温
は一気に40℃を越えた。


「ア、アスカ、何やってるの。気温がぐんぐん上がってるみたいだけど。」

「シンジ、悪いけどちょっとあのへんで海水浴しててね!」

「えっ!ね、ねえアスカ、アスカッ、わあああああぁぁぁぁぁぁ・・・・・・。」


シンジボールは彼方に見える海に向かって放り投げられた。目前まで迫っていたサイドワインダー
は、熱に引かれて一斉に方向を変えた。勿論目指す目標は、シンジボールである。至近に迫り、
目標を完全に確認したがらがら蛇たちは、頭頂部を開き、中の子ミサイルをばらまいて更に加速さ
せた。無数に分裂したそれらは、四方八方からボールめがけて激突した。



ひゅるうるるるるるううう〜〜〜〜。

「うわああっ、いやだあああああっ。」


ドカドカドカドドドドーーーン!

派手な爆発音と共にもうもうと上がる黒煙を見て、アスカは満足気に肯いた。


「うん、これで熱戦追尾式の方は片付いた、と。」


しかしまだ、TV誘導方式のミサイルがしつこく追いかけてくる。しかし足手まといのシンジがいなく
なったアスカに、怖い物はもうない。アスカは自らの身体のうちに湧きあがってくる新しい力の息吹
を感じた。急速に力が盛り上がってくる。身体の後ろに真っ白な飛行機雲が引かれていく。


「さーて、いくかああああっ!!」


シュイーーーーーーーーーーーン!!


アスカはぐっと飛行速度を上げた。その速度はあっという間に音速を遥かに超えた。前方の雲が
ちぎれ飛ぶ。身体の回りの大気が熱をもって赤く輝く。速度が上がるにつれ赤から白、白から白銀
にその色が変化し、高温化してゆく。追尾しているミサイルもその速度を急速に上げる。


「よーし!このままアスカを追いつめるんだあっ!」


戦闘機も必死で追い縋る。急上昇するアスカ。その高度はぐんぐん上がっていく。5000、6000、
7000・・・・・。10000mで、アスカは急カーブを描いてミサイルに相対し急降下を開始した。急旋
回に耐え切れず、半分のミサイルが自壊自爆する。その後方から急上昇してくる数十機の戦闘機
が、機関砲を撃ちまくりながら突っ込んでくる。その弾丸をはじき飛ばしながらすれ違う。その後方
から猛烈なスピードで迫るミサイル群。


「わ、わああああああっ!!!」

ドカドカドカドカドカドドーーーン!


「ばーーーーか。あははははははは・・・・・。」


あっかんべえをしたアスカが、高笑いをしながら飛び去る。戦闘空域はとっくに海上に移っていた。
黒煙が海上に向かって幾本も幾本も落ちていく。ふわふわと青い海の上に咲く白い花が数十個。
連合戦闘機群、全滅。
アスカはしばし天空を思うまま飛び回ると、シンジを投げ捨てた海域と思しきところに戻ってきた。
だがシンジの姿が見当たらない。あわてて海面すれすれを飛び回るアスカ。ボールみたいな目立
つものの中に入れているのに・・・・。


「シンジーッ!どこなのーっ!シンジーッ!」




「はい、・・はい。ごくろうさまです。それじゃ今夜には。シンジ君の回収おわりました。レイ様。」


マヤがにっこりと微笑みながらレイに報告する。


「すっごい。レイちゃんて有能ですねえ。あっというまにシンちゃん取り戻しちゃって。すごいすごい
です。ぱちぱちぱち。ぷっぷう〜〜。」

レイは、早速マヤに作ってもらった洗面器プリンから顔を上げて賞賛をうける。顔がカラメルシロップ

だらけである。美少女もだいなしだが、レイはまったく気にしていない。てれてれ・・・。

「でもどうやって?」

「戦闘機で激しい攻撃を仕掛ければアスカちゃんは防御のためにシンジ君を手放す。そこをウナゲリオン
で回収してきたのです。」

「でも、それって、戦闘機隊の人たちは大変な目に会うんじゃあないんですか?」

「男なんていくらでも補充が利きますです。払っても払っても、いくらでも湧いてくるもの。使い捨てに
していけばいいんですう。」


それがどうしたという冷たい顔で答えるレイに、本能的に怯えたようにマヤは言った。


「なんか・・・こわいです。レイちゃん・・・。」

「男を食い物にして生活しているのが我々月読族ではありませんか。男の命など何を惜しむ事が
あるというのですかあ?」


マヤは、ちらりとボールの中に閉じ込められたまま気を失っているシンジを見た。


「現にレイ様自身もアスカを手に入れるために、シンジを道具としてお使いになっていらっしゃいます
ものね・・・・。」


急に冷たい目になってマヤは言い放った。


「そ、それは。ちょっとだけシンジ君をさらってあせらせれば、アスカちゃんに私の事を振向いてもら
えるんじゃないかって・・・。シンジ君だけは別格なんです。」


レイはおたおたと答えたが、マヤは冷たい目のままで言った。


「まったく・・・。アスカがシンジ君がいなくなったままでへらへらと遊び歩くとでも思っていらっしゃる
のですか。いまだって、必死にシンジを探していますよ。」

「あうあうあう・・・・私、アスカちゃんに悪い事をしちゃっただけなんでしょうか。」

「きっと、物凄く怒られるでしょうねえ。うふふふふ。」

「ど、どどどどどうしましょう〜〜〜〜。あうあうあう〜〜〜〜。」


ぼろぼろと泣きながら、マヤにすがり付くレイ。アスカに嫌われてしまうかもしれない。それはレイ
にとって何よりも恐ろしい事だった。もうこうなったら、身近なもっとも頼りになりそうな人に、すがる
しかない。力関係が急にひっくり返った。





「ただいま〜〜〜。」


その夜遅くなってからアスカはしょぼしょぼと家に帰ってきた。ミサトを始めとした家族がどやどやと
飛び出してくる。


「アスカ!どうだったの、シンジは見つかったの?」

「一度助け出したんだけどぉ〜。戦闘機と戦っているうちに行方不明になっちゃったの。」

「な、なんだ・・・その・・・。とにかくそのコスチュームを着替えてきなさい。」


流石のゲンドウも心持ち腰を引き目をそらしながら言った。どういう訳かやってきていた加持も腰を
引きながらコクコクと肯いていた。但し彼の方はちらちらと目をアスカの方に走らせていたけれど。


「いてててててててっ。す、すいません〜〜〜〜。あ、ゆるひてくらはい〜。」


ゲンドウと加持。二人ともそれぞれユイとミサトにほっぺたを捻り上げられながら、退場。
アスカはため息をつきながら、2階の自分とシンジの部屋に向かって階段を上がっていった。


「シンジィ〜〜〜。どこにいっちゃったのよう・・・・・。」





それから3日間。シンジの行方はまったくわからなかった。アスカは毎日夜遅くまでパトロールを続
けた。レイの姿も学校から消えていた。それが余計アスカを苛立たせた。レイのニンフィット能力が
パワーを上げている事は、このところのレイグッズの復活ぶりを見れば一目瞭然だったし、毎晩の
ニュースでも各地の軍施設が集団でアヤナミスト公国独立軍を名乗る騒ぎは半年前の内乱騒ぎと
まったく同じような状況だった。あの集団のメンバーの一人にシンジもなっていて、レイにかしずい
ているのだと思うと、嫉妬と悲しみで頭がどうにかなってしまいそうだった。


「もし、シンジとレイを見つけたら、二人を殺して自分も死んで三角関係を精算するっ。」


アスカは、そこまで思いつめていた。


「おい、おーい。アスカさーん。心中にはまだ早いですよー、暗い目しないでくださーい。」

「はっ、な、なによ、ミサト。」


この数日間の間に、ミサトとアスカとユイは、固い団結に結ばれるようになっていた。その原因は、
やはりレイである。もともとアヤナミストであったゲンドウ。カワイイコには目の無い加持。この二人
は、あっというまにレイ・シンドロームを発症し、それぞれの連れ合いにぼこぼこにたこ殴りにされた
挙げ句、荒縄で縛られて奥の間に吊るされていた。ユイが口を開いた。


「まだ、チャンスはあるわ。あきらめないでがんばるのよ、アスカ。」

「でもでも、もうとっくにレイの物になっちゃってるのではない?」

「シンジがもう陥ちてしまっているなら、レイはそのニンフィット能力をこれほどパワーアップさせる必
要はないはずでしょう?」

「どうも今回、なぜかレイはシンジにえらくこだわっているみたいだしねえ。」

「あ、なるほどっ。」


アスカの顔がぱっと明るくなる。そうか身体で覚えた、妻への絶対の忠誠を忘れてなかったか。
えらいぞ、シンジ。アスカは心の中で思った。そして再び捜索に出発したのであった。
その日アスカは探知能力を目いっぱいに上げて成層圏を漂っていた。相変わらず何も感じない。
ここまでして何も感じないと言う事は地中10km以上の深さか、海中深くに基地があるとしか思え
ない。地平線上にゆっくりと月が沈んでいく。レイの本拠地足る月は、全ての物を魅了しながら、
意外と速い速度で沈んでいく。その輝きの最後の一片が消える瞬間、アスカの耳にシンジの声が
一瞬飛び込んできた。


「アスカ。・・・ぼく・・・ここだよ・・・。」

「シンジッ!!」


アスカはかっと目を見開くと、聞こえた方向を逆探した。地球の裏側と思しきあたりから、月に反射
して微かに聞こえたシンジの声。アスカの身体がカーーッと、紅く灼熱に包まれた。そして、その声
が聞こえた方向にむかい、夜空に直線を描くように猛烈なスピードで飛行が開始された。


「当基地に向かって、高速飛行隊が接近しつつあります。速度・・・秒速20km以上!」

「ピケット1、突破されました。ピケット2ミサイル群、まったく効果無し!」

「アスカだ。間違い無い。」


ロッキー山脈の横っ腹をぶち抜き、地下10kmに建設された月読族地球本部に非常警戒警報が
鳴り響いた。アメリカ大陸上空に入ってからは対流圏に突入したため速度はかなり落ちたが、全軍
を上げての迎撃もまったく意味を成さない。白熱したアスカが超高速で通り過ぎるだけで迎撃ミサ
イルも、戦闘機も衝撃波と高熱波で自壊してしまうのだ。


「ウナゲリオン12機総起動!!起動順に絶対防衛線から射出せよ!」


高速飛行中のアスカは、ぴくっと、いやな予感がしてその場に停止した。そして高度をぐっと落とし
回りを見回した。眼下は地平線まで続く一面の大砂漠である。
チカチカッ!フラッシュが焚かれたような輝きが視野のどこかに入ったと思った瞬間、熱線がアスカ
の周囲を取り巻くようにして通り過ぎていった。ろくに反応ができないほどの高出力レーザーであっ
た。収束性の大出力レーザーである。次の瞬間、今度は宇宙空間側からの同様の攻撃を受けた。


「くっ、はやいっ!」


マントの一部分を持っていかれた。数万度の熱と、凄まじい衝撃にも耐える、クリプトン製の防御
マントが、である。直撃を食らったらさすがのアスカもただでは済まないだろう。


「な、何をするんですか!こんなもので撃ってもし当たったらアスカちゃんが死んでしまいますう!」


慌てて止めるレイ。しかし、マヤは怪しい笑顔を浮かべると再びセットを始めた。


「だめです!アスカちゃんに何をするんですかっ!!」

「ふふふふ。レイ。ここまで良くアスカを引っ張って来てくれましたね。今回の作戦はあなたの引き
起こしたこの事件を旨く利用して、クリプトン星人の危険性を広くアピールすることと、アスカをかた
ずけることにあったのです。」

「あ、あなたは何者なんですか!?」

「わたしは、家庭教師とは仮の名。月読族国家保安委員会所属、伊吹マヤ!」

「イブキマ、ヤ。さんですか。随分珍しいお名前ですう。」

「伊吹、マヤだーーーっ!!ふっふっふ。ボケでごまかそうとしてもむだむだむだあ!」


画面上ではウナゲリオンとアスカが既に猛烈な格闘戦に突入している。


「な、なにっ、こいつ気持ち悪いやつ。砕いても、ちぎっても、次々に復元してくるっ。」


ウナゲリオン達は次々にアスカにかぶさるようにアタックしてくる。その間にも高出力収束レーザー
が、アスカ単体になったところを狙って、地上と宇宙空間から襲い掛かってくる。戦闘が始ってから
1時間近く。さすがのアスカもふらふらになり始めた。


「く、くそー。こいつら、疲れるって事をしらないのかしら。もう。」


はっとした瞬間、視野の僅かに外側からウナゲリオンのこぶしがアスカを捉えた。

ぐわん!

「ぐっ!!」

アスカは、激しい衝撃をうけてくらくらと意識が遠くなった。



「あすかああああああっ!!」


閉じ込められていたシンジは、部屋のモニターに向かって絶叫していた。















レイvsアスカ ミラクルスーパー対戦<後編>に続く


好評のこめどころさん作『スーパーシリーズ』のレイアス大戦物中編を頂きましたぁ。(^^)
今回も迫力満点の話でしたね。本当にありがとうございます。

最初は、ドキドキしましたね。あわや・・・・てな感じで。でもおかげで“ミラクルスーパーアスカ”復活!!
空中戦で次々と戦闘機軍を沈める所なんて、なんか凄すぎですね。これもLASの力なのでしょうか?
でもそれでも、対決するレイちゃんとアスカちゃんがとても可愛いのが、流石こめどころさんですね。

対決はいよいよ佳境へ、ついに出た“悪役マヤさん”・・・・そしてウナゲリオンの脅威。
アスカちゃんとシンジ君は再び抱き合えるのか?・・・・レイちゃんの想いは?
後編がいまから楽しみです。ぜひみなさんも、こめどころさんに応援のメールをお願いしますね。(^^)

 

2008/05/13 アスカの旗の下に 2nd Flagへ再録

こめどころさんに感想メールをお願いします。m(__)m

 


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