As.−Treat me nice

transparence coo』

komedokoro


 

 

 

 

 

2019-12-30 〜31早朝

アスカは海の底に沈み,浮かび上がり、波に叩き付けられ、揉まれ、さざ波に翻弄され続けていた。身体の中に激しい海と、灼熱した太陽が燃え盛っていた。
頭を抱えて転げ回りたかった。肢体を引き裂き、叫びを上げ、身にまとったもの全てを剥ぎ取り、破廉恥な形になって、氷雪の中で転げ身体をかきむしりたい。
思いきり戒めと罰を与えられ、自分に血の傷と苦しみを与え、罰して欲しかった。

 

シンジに担がれるように部屋に入った途端、アスカは床に倒れ伏した。
背中が寒くなる程の、恐ろしいまでの快感が全身を襲う。
嬌声を上げ悶え狂って転げ回りたいのを必至に堪え、両手で口を押さえ、歯をガリガリと鳴らす程食いしばった。

 

「ぐ、ぐぅうっ。い、ぎいい。がはっ!」

 

服が大きな音を立て引き裂かれ、ボタンが弾け飛ぶ。
思わず、掴み破った箇所の肌に爪を立てた。
自分の乳房を握りしめて喜びの声を上げ悶えたい。そう思っている身体。
何とか正気を保とうとして、乳房と性器をわし掴みにした。
ボタンが弾け飛ぶ。脚を固く閉じて膝を折り、床に頭を擦り付け土下座をしているような姿勢になる。
そのまま、身体をがたがたと震わせているしかなかった。
それでも、数分たてばまた床を転げ回る狂態をシンジに曝す事になる。
シンジの目を意識すると死にたい程だったが顎が震えて舌を噛む事すらできない。

 

「ぎ、あ、・・・だめっ、狂っちゃ・・うっ!シンジッ、なん、とかして、っ!」

 

そう叫んだつもりでも、もはやろれつが回らず何を言っているのか理解しがたい。
心臓を掴み出したい程の屈辱と、恥辱。気が狂って何処までも堕ちていく恐怖と自暴自棄な破滅願望が暴風雨のようにアスカの中で荒れ狂っていた。
頭を激しく振ると、髪がばさばさになって、カーペットに広がる。
汗みどろになって苦しみと喜びに翻弄され続ける。
玉のような汗が、乳房を、首筋を、背中を、緩いカーブを描く下腹部と擦り合わす腿を、全身を、止めどなく濡らしていく。

 

「ひ、ひ、ひいいあっ!」

 

股間を握りしめたまま、激しく床の上で跳ね、大きく脚が裂ける程に開いている。
ミニスカ−トが、じゅぶじゅぶと音を立てて淫液の飛沫をとばす。涙が流れても、幾ら恥ずかしくても身体が仰け反る事を、押さえている手が性器を激しく擦る事を、止める事ができない。見る見るうちに息が切なく上がって行く。白い喉が、何度も仰け反ってそこに太い血管が浮かび上がっている。

 

「シッ、シンジッ! 助け・・助けてっ。」

 

叫びが、ひっ迫してくる。息がつまる、もう、堪えきれなかった。

 

「も、もうだめ、あっ、あっ、あううっ、んん・・・くぅ。」

 

切なく顔を歪ませ、身体を弓なりに痙攣させる。
シンジは真っ青な顔をしながら、のたうちまわるアスカをどうする事もできずに、ただ自分の恋人を押さえ付けた。激しく抱擁し力一杯締め上げる事しかできない。
性欲にどろどろになった表情に、恐怖と愉悦が交代に現れ、正気と狂気が交互にアスカを支配している事を示す。

 

「アスカッ。大丈夫だ、落ち着いてっ。」

 

苦しさの余り、しがみついて来たアスカが、シンジの肩に思いきり噛み付いた。

 

「あうっ! うあああっ!」
「ぐううううううっ!」

 

シンジの叫び。アスカのくぐもった叫び。
激痛の中で、必死になって研究室の電話に携帯をかけるが誰も出ない。
マヤは青葉のバンドの集会に行ってしまっている。
ミサトにも冬月にも日向にも、電話は繋がらなかった。
そうだ、救急車か?

 

「ア、アスカッ。救急車、呼ぶからっ。」
「イヤッ! そ、そんな事したら、あたし、舌噛んで死んでやるからッ!」
「だ、だって・・・」
「だめっ、ぜったいにだめぇっ!」

 

脂汗と涙を流しながら、必死で叫び、何とか立ち上がろうとするアスカ。
こんな姿を一体、誰に曝せるというのか。
身体にナイフを突き立てても正気を保たねば、と少女は思った。

 

「シ・・・シンジッ、お願い、シャワールームへつれてって。
それと、あたしの、口を、声が漏れ、ないように猿ぐつわ、して。は、早く。
あたしに、正気がある、うっ、うちに。」

 

とにかく言われた通りに、自分のシャツを引き破いて紐とぼろを作る。
アスカをシャワーの下に横たえた。舌をかまない為にも口に猿轡をはめようとすると、アスカは更に叫んだ。

 

「手足も縛って! 変な事、できないように。
ああ、身体が弾けそうっ!
水を、シャワーを、開いて。冷たいシャワーを、頭から浴びせて頂戴っ。 」
「だ、だめだよっ。アスカ、真冬なんだよ。」
「早くッ、早くぅッ! 気が、狂っちゃうっ。はや、ぐううっ!」

 

アスカは泣叫びながら怒鳴り、シンジを蹴った。
速く、速く、一瞬でも速くっ!
シンジは夢中でアスカの破れたブラウスを脱がせた。
その下に合ったのは自分のランニングシャツだ。可憐な乳房が零れ出ている。
更に、スカートを脱がすと自分のブリーフが現れた。ねっとりと糸を引く程に淫らな粘液がそれを濡らし尽くしている。女の匂いが浴室に一気に立ち篭め、頭がくらくらする。自分自身もアスカの狂気に巻き込まれそうだ。
身体を引っ張り、縛り上げた。
そして氷水のように冷たいシャワーを、少女の全身に一気に浴びせかけた。

 

「きゃああああああーーっ!」

 

叫び、衝撃に身体を縮み込ませる。が、情慾も少しだけ後退したようだ。
唖然と見ている、シンジに怒声を浴びせる。猿ぐつわの下からくぐもった声でシンジに叫んだ。シンジには辛うじて言っていることがわかった。

 

「見ないでっ! いくら呼んでも、絶対にここに来ないで頂戴ッ!」
「で、でもっ!」
「いいからっ! 向うに行ってっ! 頼むからっ!」

 

容赦なく身体に突き刺さる、氷のように冷たい鮮烈な水。それが今は救いだ。
それだけが辛うじてアスカをこの現実に、わずかに残る正気に繋ぎ止めていた。
まるで水から上げられた魚のように跳ねる、アスカの身体。
一旦冷えた炎が、再び勢いを増し、今度こそアスカの正気を噛み砕こうと激しく火焔を挙げて襲いかかる。

 

「誰か・・・誰か助けて・・・シンジ。」

 

脊髄から腰骨へ雷に撃たれたように幾度も幾度も稲妻が走り抜けて、その度に涙と汗が迸る。真っ赤に染まった肌とのたうつ姿態。

 

はあっ、はあっ、はあっ、ああっ、ぐぅっ、はぁ、はぁ、はぁはぁはぁ・・

 

死ぬ程の屈辱を感じているのに幾度も絶頂に追い上げられ、とどまること
なく身体が次の頂きを期待して燃え上がる。ごくっと喉が鳴る。

 

「うぅっ、だ、だめっ。・・・我慢できないいーっ!」

 

幾度も幾度も、際限なく子宮と性器が、男、を求めて、淫らに痙攣を繰り返す。
耐えきれずに転げ回る。まるでなめくじかなにかのように、床に垂れた粘液が水と混じって身体にぬめった輝きを与える。

 

「あああああっ、あっ。だめっ、また、また行っちゃうっ、行、いくうっ。」

 

一度身体がその方向に駆け上がりはじめると、アスカがどんなに堪えようとしてもどうしようもなかった。てらてらと嫌らしく輝く肢体がのたうつ。
理性が飛び、獣のように快楽を享受しようと床のタイルに胸を擦り付け、氷のような冷水に向かって脚を広げる。僅かな快感を種火にして一気に燃え上がる。
縛られていなかったら、快楽を得たい一心で身体を酷く傷つけていたに違いない。
後ろに縛られた手が自由を求めぎりぎりと引かれる。血の通りがなくなり、真っ白になっている。陰部を何とかして指でいじり回したいと、情慾が、火照りきった身体が言わせるのだ。

 

「解いて!これをほどいてよぅッ!あそこが、あそこがぁっ。」

 

堪えきれず、激しいうめき声をあげるアスカを浴室に閉じ込めたまま、シンジはしゃがみ込んで耳を押さえていた。

 

「シンジ!シンジ! シンジ−−ッ!」

 

それでも聞こえてくるのは、もう正気を失ってしまったアスカのくぐもった叫び声。
信じられないほど爛れきった声をあげてシンジを呼ぶ。
シンジを求め、のたうち、身体をくねらせて呼んでいる。

 

 

欲している。
泣叫んでいる。
自分を求めている、みだらなアスカ。

 

その声に反応している自分の身体。
火照って熱を帯びかたかたと震えている。
耳を幾ら塞いでも目を固く閉じても。
アスカの白い裸体が目の前であらゆる媚態を示して誘惑する。

 

何がアスカに起きたのかは分からない。
異常なまでのあの昂りは、なにか麻薬のような物がアスカに作用しているに
違いないと自分にでも分かる。

 

それでもアスカに反応し、 淫らな声に応じてアスカを抱こうとする自分がいる。

 

それを望んでいたんじゃないか。
その証拠におまえのものはそんなに猛り狂っているじゃないか。
今のアスカを抱けば、簡単にアスカは自分のものになってしまうぞ。
アスカは涙と涎を流して喜んでお前の奴隷になるだろう。
従順な、どんなことも受け入れる、お前だけのアスカに堕とせるじゃないか。

 

それでいいのか? お前はアスカを抱けさえすればそれでいいのか?
こんなチャンスは2度とないぞ。後で幾ら悔やんでも遅いぞ。
卑怯じゃないか、お前は後でどんな顔をしてアスカの目を見るんだ。

 

幾つもの心が渦を巻いて僕に声をかける。

 

これは不可抗力だ。アスカはこのままでは狂ってしまう。
助けてやらなければ、本当に気が狂ってしまうぞ。
ほら、あんなにおまえを求め、泣き叫んでる。
可哀想だとは思わないのか。
あの娘はおまえだけを求めて、あんなになってまで待っているのに。

 

 

長い葛藤。
アスカの嬌声が、少年の正気を次第に奪って行く。
洗面台から剃刀を取り、シンジは浴室の扉を押しあける。

 

そこには、もはや焦点の定まっていない青い目を持った娘が、水に打たれ、仰向けになったままこちらを見ていた。
脣を半ば開き、激しく息を弾ませて。丸い乳房と桃の花のような乳首が少女のシャツから透けている。
張り付いた肌の色となだらかな腹部の線が、少年の理性を奪ってしまう。
もはや、少女の絶望的な、全ての抵抗が、空しく終っていた。
何十回となく、頂上まで投げ上げられ弄ばれた心と身体。
蹂躙され尽くした少女は、まるで幾人もの男達にレイプされたかの様に、浴室のタイルの上に、力なく身体を投げ出していた。

 

シンジは、手に持った剃刀で少女の縛めを全て切り離し、口に詰めたぼろを取り出した。
身体と唇を震わせながら、アスカは、その身に少年の下着を張り付かせ、しがみついた。

 

もう、声も出ないのだろう。氷のように冷えきった肢体。
濡れた下着をその場に剥がして捨てる。
何もかも曝け出した少女は、身体にその美しい金髪をまとい少年に縋り付いた。
少年もまた身の竦むような冷水を浴びながら全ての衣服を脱ぎ捨てる。
そして、少女の冷たい身体を抱き上げると、温かい自分達の部屋へ向かった。

 

濡れたままの少女の身体がベッドの横で少年に支えられている。
溶けたままの瞳をして、アスカは初めてシンジの素裸の全身をすっかり見る。
今まで、恥ずかしくて見ることもできなかったシンジのペニス。
それが隆々と目の前に突き付けられている。
アスカには、自分自身の身体がそれを欲していていることがわかっている。
本能的に、崩れるようにひざまづいた。 長い睫が頬に落とす、影。
目の前にそれがあった。
両手でそれを掴む。身体の求めるまま頬を擦り寄せる。なんて言う熱さだろう。
つめたく冷えきっていたアスカの身体に、一度に火が入った。
少年の身体に、衝撃が走る。

 

「はあ・・・」
「・・・アスカ。」

 

あたしは・・・目をつぶったまま、シンジの・・・に、頬擦りを繰り返す。
熱い。
シンジの熱さを感じる度に、あたし自身の熱も上がっていくのがわかる。

 

その頬が感じる、一番熱い部分が、あたしを呼んでいるの。
もう、羞恥の気持ちは粉々に砕かれ、消え去っている。

 

躊躇うことなく、
あたしはシンジの男性器の先端に唇ををあて、キスをした。
くちびるを濡らし、くちびるの裏側の粘膜と舌先でシンジの先端を包んだ。

 

そんな、淫らな行為をしてるのに。
さっきまで身体中に燃え盛っていた、淫猥な苦しみの炎が、
嘘のように静まった。

 

しーんとした静謐な世界が自分を取り巻いているように、
あたしは思った。感動していた。
ずっと欲していた物をやっと与えられたように、心が安らぎ、安心している。

 

 

「シンジの・・・中心に触れているんだ・・・逞しい、美しい、かけがえのない、あたしの愛するシンジの。」

 

 

身体の奥深くから、溢れ出してくる想いがある。

 

あれ程苦しめられていた、煉獄の炎のような、
ひたすらオスを求めるだけの、肉体の炎とは全く違う温かいぬくもり。

 

その心の喜びに連動するように、肢体の隅々にまで日が射し、震えが走る。
細胞の一つ一つが喜びにざわめき、嬉しさに涙しているのがわかる。
そして、あたし自身も・・・

 

 

「アスカ・・・」

 

かがみ込むように、シンジはアスカの頭をそっと抱えるようにいだいた。

 

 

僕のアスカが、僕のあそこに唇で触れている。
あのバラ色の清らかなくちびるで。
その部分から、日の光のような温かさと喜びが心の奥まで届いてくる。

 

 

「 アスカ・・・いいの 」

 

 

アスカは応えない。ただ、僕を握りしめたまま、大きな溜息をついた。
そして、ゆっくり僕の顔を見上げた。
青い瞳が潤んでいる。
それはさっきまでの、狂ったような欲情の視線ではなくて。
穏やかで、凪の水面のように静かで深い色をして僕だけを見ていた。

 

 

「おねがい・・・あたしを全部・・・シンジのものに・・・して。」

 

 

途切れ途切れの小さな声が、僕の耳に辛うじて届いた。
眩しそうに僕を見たアスカは、たちまち俯いてしまって、
表情が分からなかった。

 

僕は、アスカの指をゆっくりと僕からほどいた。
そこに2人で膝立ちになって抱き合った。

 

 

「シンジ、あたしを・・・貰って。あたしを、抱いて・・・」

 

 

もう一度、泣きそうな声で小さくアスカが言った。
彼女の身体はまだ時々痙攣していたけれど、不思議と落ち着きを取り戻したようだった。
俯いたままのアスカの顎を持ち上げる。
アスカは顔を見せまいと左右に避けるので、僕は両手で彼女の頬を包んでその馬鹿げた鬼ごっこを止めさせなければならなかった。
そして、随分久し振りに、キスだけの為にキスをした。
ゆっくりとまぶたが開き、煙ったような彼女の眼差しが僕をゆっくりと見た。
その時、僕はそのままアスカに告げた。

 

 

「アスカ。僕達・・・結ばれよう。」

 

 

やっと元に戻っていたアスカの顔がくしゃくしゃっと歪んだ。
そのまま彼女は長いこと声を出さずに僕の肩に顔を埋めていた。
時々、背中が震えた。
幾筋も、温かいものが僕の胸を流れ落ちていった。

 

 

「うん・・・」

 

ひざまづいたまま、2人は抱き合っていた。触れあっている肌から次第に全身に熱がこもりはじめる。
少しずつ、2人の波動が調和しはじめたのを感じる。
これから、その時が始ることを自分達の身体も理解しているように思えた。
アスカはシンジの肩の上に頭をのせて、じっと目を瞑っている。
まだ濡れているアスカの長い髪を触れるだけのようにシンジが撫で下ろす。
まるで、少女の優しい腰や背中の形を確かめているように。
逞しさを増しつつあるシンジの胸と優しい白い膨らみを持ったアスカの胸、お腹と下腹部、両方の腿が、まるであつらえたようにぴったりと組み合わさっていた。
その間にシンジの屹立が雄々しい形を保ったまま、アスカに押し付けられている。
アスカ自身もそれに答えるように密やかに息付き、潤んでいる。


ほんの暫く前なら、2人はそのことを大層恥じていたに違いない。
だが、今は違う。
互いにそれを相手に与えることができることを心から喜び、誇る事ができた。
相手からそれを得ることに、えもいわれぬ嬉しさを感じていた。

 

2人は、本当に、巡り合うべくして巡り会ったのだ。
そう思う心が喜びに震えていた。

 

「・・・アスカ」
「シンジ・・・」

 

こうしていだきあっているだけで、相手の身体の中に溶け込んで行ってしまう様な快美感が溢れている。
一つに蕩けあって流れて行きそうな気がする。
相手の心や記憶を交流し合っているようだ。
シンジはゆっくりとアスカをベッドに横たえ押し上げた。
身体にそのまま顔を押しあてると、アスカを眺め降ろした。
正面の鎖骨の間の窪みと乳首の先端が、完全な正三角形を描いている。
美しい乳房にシンジは口を寄せゆっくりと舌で愛撫した。
丸い曲線に沿って舐め上げて行く。

 

「あ・・・ん。」

 

さっきまでの激しい欲求が嘘のようだった。
身体中に無理矢理突き立てられた様なあさましい肉欲ではない。
心と身体が真に一体となって、優しさと情愛と愛おしさが、光となって。
自分の身体から溢れているように思えるような幸福感が2人をくるんでいた。

 

「シンジ、ごめん・・こんなにうれしいのに、幸せなのに、涙が出て来ちゃうの。」
「アスカ・・・幸せだと、言ってくれるの。」
「あなたに・・・可愛がられているのが・・・愛されてるのが・・・ああっ。」

 

シンジの手がアスカの身体を何処までも愛撫する。撫でられ、さすられているだけで、声が出てしまう。
幾度も幾度も、身体が反応してその度に波に持ち上げられ、また揺らされている。
自分は彼の腕の中にいるはずなのに何処までも広い宇宙に漂って拡大していくような、逆に小さくなっていくような、不思議な感覚に弄ばれているようだった。

 

真っ白な光があって、その中に自分が包まれて行く・・・

 

 

これが、愛おしいと言う気持ち? 愛されていると言う気持ち?
シンジ・・・シンジ・・・
ありがとう・・・あたしを選んでくれて
ありがとう・・・あたしを愛してくれて

 

 

 

 

 

「アスカ・・・。」
「はい?」
「いま・・・僕らはひとつになってる。」

 

自分の身体に不思議な感覚が溢れていた。怖れていた痛みも、喪失感も何もなかった。
ただ、ひとつになっている事が、はっきりと感じられているのが分かった。

 

「シンジさん・・・」
「え?」
「今だけでいいから・・・シンジさんて・・・呼んでいい?」

 

もじもじとアスカは口籠った。

 

「ずっと・・・憧れてたの。」

 

アスカは真っ赤な顔になってシンジに言った。

 

「旦那様に抱かれて、『アスカ』って呼んでもらって、あたしが『シンジさん』て。」

 

シンジは、微笑んでアスカの額に浮いた汗を拭いながら、額に口を付けた。

 

「アスカ・・・僕のアスカ。僕の・・・お嫁さん。」
「シンジさん・・・あたしのシンジ・・・さん。」

 

小さい頃の夢。訓練に明け暮れ、友達も居らず、子供らしいことは何もなかった時代。
一冊だけ家からもって来た童話の本を、ベッドマットの下に隠していた。
その童話の最後の一節。
お姫様が旦那様になった王子に呼び掛ける。

 

「カールさん。私のカールさん・・・」
「僕のリディア・・・いつまでも一緒だよ。」

 

夢がかなったとアスカは思った。色々あった苦しいことも、もう全部忘れられる。
これからは、幸せな毎日が続くんだ。

 

もう一人じゃない。いつまでも一緒にいてくれる人がここにいる。
いつでも背中が温かい。
スト−ブに向かって手を広げていても、顔がやけどしそうなのに背中は凍り付いてる。
そんな思いをもうしなくていいんだ。

 

 

シンジと一緒に・・・いつまでも、いつまでも・・・

 

 

 

 

 

「痛みは・・・ない?」
「うん、ぜんぜん・・・なんか・・・身体中が喜んでざわざわしてる感じ。」
「僕のほうが・・・ちょっと、つらいかな。」
「どうしたの・・・」
「あは・・・凄く気持ちいいんだ、アスカの中って。ちょっとでも動くと。」
「爆発しちゃいそう?」
「うん。」
「あたしはね・・・これで、ちゃんとしたって感じ。今まで足りなかった物がしっかり完全体になったって言う感じなのかな。」
「なんか・・・前のアスカに戻った感じだね。」
「ちょっと、興奮してるかもしれないの。」
「アスカ・・・動いてみていいかな。」
「大丈夫?」
「うん・・・だいぶ落ち着いた感じがする。」

 

ちょっと、決心するような顔をしてアスカは言った。
恥ずかしい気持ちの裏返しもあって強がってみたが、まだ怖い気持ちは残っている。

 

「いいよ、でも・・・」

 

思わず唾を飲み込む。

 

「止まってって行ったら、すぐ止まってね。」

 

 

 

 

 

ゆっくりゆっくり・・・シンジが腰を引き戻していく。痛みは・・・なかった。
そのことが、アスカにはちょっと不安だった。

 

・・・あたし・・・バージンなのに。なんで? シンジに疑われたくないな。

 

 

シンジが、ゆっくり動いてくれてる。
大事にされてるって言う安心感。
その事が、あたしに身体からゆったりと力を抜かせてくれる。
少しずつ、身体を開いていける。
そうすると、シンジの腰が進んでもっと奥の方まで入ってくる。
脚を、もっと開く。
恥ずかしくて、きっと顔が真っ赤になってる。
シンジのが、だんだん太く大きくなってくるような気がする。
何処まで大きくなってしまうんだろう。入り口がもう一杯なような気がする。

 

ぴりっと、鋭い小さな痛みが走った。

 

同じように入り口の辺りから、いつもと同じ水が満ちて来るような喜びが溢れた。

 

 

「あっ・・・」
「どうした?痛かった?」

 

 

すぐにシンジは止まってくれた。いやいやをするように頭を振る。

 

 

「大丈夫・・・」

 

 

少しシンジのが、もっと奥まで入り込んでくる。先端が奥を叩いてるのがわかる。
そこが・・・あたしの子宮なのかしら。
随分奥まで、入り込んでるんだな。あたしの身体の奥まで・・・。

 

その事があたしの身体に震えを走らせる。
シンジの息。どんどん速くなってくる。切なそうに真っ赤な顔して苦しそうだ。

 

あたしの身体も、もう真っ赤に染まっている。

 

 

「はあっ、はあっ、はあっ。アスカ・・・もう、だめかも知れない・・・」
「え?大丈夫?」
「そうじゃなくて・・・あの・・・中に出してもいい?」

 

 

え? それってなに。何の事?

 

 

「アスカの中に、僕の・・・あの・・・」

 

 

あっ、そうか。

 

「シンジの赤ちゃんなら、産みたい。」
「え?」
「射精したいって事よね。そうすれば赤ちゃんができるんだよね。」
「そ、そうだけど・・・。」
「赤ちゃん出来たら、結婚しようね。」

 

幼児のような屈託のない笑い顔。こんな顔もできたんだ・・・とシンジは見愡れた。

 

 

シンジは急に止まって、複雑な顔をして・・・暫くしてから笑った。
シンジは優しくあたしにキスしながら、あたしから出て行った。
何か、全能感が失われて、元の情けないアスカに戻ったような感じだった。

 

それからあたし達は寄り添って毛布に包まれ、肌をぴったり付けて眠った。
ほら、もう、ひとりじゃない。
シンジに背中から抱えられて、凄く温かかった。

 

生まれて初めてくらいぐっすりとあたしは眠った。
とても幸せな夢をみたような気がする。

 

 

 

 

 

電話の音にアスカは目が醒めた。
シンジの腕からすり抜けて起き上がると、電話が煩く鳴っている。

 

ちりちりちり・・・・

 

電話が明滅しながら緊急コ−ルの音を立て、身を震わせていた。
ずっとオートコールをかけっぱなしにしていたミサトから、ようやく返信が入った様だった。
何処をほっつきあるいていたのだろうか。

 

「あたしが酷い目にあって立って言うのに!」

 

アスカはちょっと腹を立てて電話を取り上げた。
その時ちょうどシンジが目を擦って起きたので、電話を押し付けたら、ぼそぼそと何か話しだした。
起き上がった少女は素肌をさらしているのを思い出した。
慌ててシーツを巻き込んで纏おうと引っ張った。

 

その時だった。
アスカは自分の寝ていた所に、ほんの僅かな赤い花びらが散っているのに気が付いた。


「あ、あれ・・・って。」

 

(きゃああああっ!)

声にならない叫びを上げて、駆け寄った。

 

アスカは、今度こそ真っ赤になってシンジをベッドから立ち上がらせると大慌てでシーツを畳んだ。そしてそれをしっかり胸に抱き締めると、今日からは一人前の女なんだな、と思って更に頬を染めた。

 

 

 

 

 

2002-04-28As.-treat me nice-18 『transparence coo』