As.−Treat me nice

『erousion in blackout curtain 【暗幕の陰の浸蝕】』

komedokoro


 

 

 

 

 

2Aの生徒達は、戸惑っていた。彼等の淡い憧れでもあった、一組のカップルの様子が最近どうもおかしいからだ。明るく華やかだった少女は、いつも表情の何処かに暗い陰を持つようになったし、優しく思い遣り深い少年は、どこか粗雑で投げやりな様子を見せるようになった。彼等の仲が壊れたのかというと、そういう訳ではない。少年が少女の肩に手をおいて歩いているのを、彼等は校内でよく見かけていたし、夕暮れの公園で抱き合っている姿を目にする事すらあった。だが今までと何処かが違う。話し掛けているのはいつもシンジで、今まで先に立って歩いていたアスカが躊躇いがちに後から付いて歩いている。戸惑った笑い、怯えたような相手に追従するかのような態度。バランスが崩れて、見ていて、心もとない気がする。
そんな級友達の視線を感じると、少女は何時も殊更に明るく振る舞ってみせるのだったが。

 

朝からその日は雪で、密室に閉じ込められたような閉塞感があった。黒く濡れた枝が次第に下がっていく気温に凍り付き、そこに雪がまとい付いて白い枝に変わっていく。まるで、木というものが白い発泡スチロールに変わってしまったように、真っ白な景色の中に吸収されていく。

 

午前中の授業が終ると直ぐに、少年はアスカの肩に手を置いた。立ち上がって、シンジの後に続いて教室を出る少女。屋上へ続く階段を昇る。外は雪が激しさを増していた。この階段は長くしかも酷く寒いため、こんな日には誰もやって来ない。
その最上段の踊り場に着いた途端、シンジはアスカを抱き寄せ、やや強引に唇を交わしはじめた。少女の唇が無抵抗なままに応ずると、少年は首を傾け舌を絡ませていく。同時にその手が、少女の腰のくびれを背中側から自分に引き寄せる。アスカの手がそれを押さえる。2、3回の攻防の後、少女の手はあきらめたようにだらんと力が抜け、それは少年の上腕に置かれた。シンジの唇が少女の唇を外れ、耳もとからゆっくりと、首筋を降りてくる。アスカは少年の肩越しに、視線を泳がせた。
はめ殺しの小さな窓。そこに雪が吹き付け、半分足らず程視界が遮切られている。


 

 

少年の膝が自分の膝を割って押し入り下腹を押し付けてくる。アスカはシンジの男を感じざるを得ない。一瞬、嫌悪感が身体に走る。だが、その形を下腹全体で意識する。固く、熱く、大きなもの。自分の中に入りたがって、切なそうにひくひくと時折動く。と同時にいつものように奥の方に微かに点るものを意識する。シンジに再び貪られている舌の後方の頭の中で、ジンと痺れていく一点がある。その痺れたような間隔が始ると同時に胸の先端が固くしこり、シンジが身体を動かす度に痒きのような間隔が、そこと、シンジが押し付けている男の子の部分から伝わってくる。頬が熱く染まっていくのがわかる。。2人の熱気のせいか、踊り場の小さな窓は、次第に内側からも曇って、何も見えなくなりつつあった。

 

「止め・・て・・誰か来たら・・。」

 

そういうと、シンジは踊り場の横の機械室の扉を開けてアスカを中に引き入れロックをかけた。更に暗い寒い小部屋。油臭く、時々エレベーターや揚水の為モーターがうなりをあげる。シンジはアスカを壁に押し付けると、制服の胸元のボタンを外し、そこにキスをする。寒気が素肌に触れて、過熱していた肌には気持ちが良いくらいだった。その、汗ばんだアスカの肌を、シンジの舌と唇が直接愛撫していく。
セーラーのリボンをもどかし気に外そうとしている。アスカは小さく溜息をつき、リボンを解く。

 

 

 

 

 1日に何回か。
 シンジは、こうやってあたしを人気の無い所に誘う。
 そうしてあたしの身体を求める。
 以前みたいな、無理な事はしない。
 だけれど、行かないと酷く機嫌が悪くなって、ロッカーを蹴ったりする。
 友達がシンジくん少し変わったね、と言うのが悲しい。
 だからシンジに逆らう事ができない。
 求められている嬉しさと哀しさの間でいつも揺れている気がする。
 ほんの少し前までは手を繋ぐだけでどきどきした。
 ほんの少し唇が触れるキスで、あたしたちはは真っ赤になって俯いてた。
 だけど。・・前はあんなに拒んでいたシンジのあたしの身体への愛撫が
 そんなに嫌でなくなっている事に気づく。
 シンジの指があたしの身体のあちこち、
 胸や、お腹や、もっと恥ずかしい所に触れても我慢できる。
 我慢してるだけでなく、もっと・・・触って欲しいと思う事もある。
 気が付くと自分からシンジを抱きしめて身体を押し付けている時がある。
 あたしは、いやらしい子になっていく。
 それはシンジのせい?それともあたしのせい?

 

 

 

 

シンジが強く唇を押し付けて肩全体を抱きしめた。これはアスカがいつも嫌がる事を始める時。アスカは身体を固くして膝をしっかり合わせてそれに耐えようと身構えた。だが、その日は違った。膝を合わせた途端、ぬるりと濡れた感触があったからだ。今までこうやって長くあそこを愛撫された後に、トイレに駆け込んで拭き取った事は幾度かあったがまだそこに何もされていないうちに膝まで溢れ出してくるような事は一度もなかったのだ。アスカは瞬間うろたえた。急に生理が始ったのかと思ったが、そんなはずはなかった。だが、シンジは強引に膝間に自分の両の膝を割り入れた。アスカは無言のまま、逃れようと伸び上がったがどうしようもない。
そこに手が入って来て、少女の奥の柔らかい奥腿に触れ、ショーツの上からその更に奥の秘唇に触れる。シンジの息遣いが激しくなって行き、その指が一番敏感な点に触れた途端、跳ね上がる程の感覚がアスカを襲った。

 

「あっ・・・」

 

漏れた声。それは最早アスカが少女で無くなりかけている証だった。シンジはそのままショーツの上からアスカの柔らかい丘を摩り続けた。そっと、触れるか触れないかといった繊細さ。アスカから唇を離し、頬を寄せただけでその表情を眺める。
半睡状態の様なその表情。小さく口を開け、バラ色に上気した熱い頬。ぐらぐらと頭が定まらずに揺れ、その度に白い首筋が反り、小さなおとがいの裏側が見える。その酔った様なアスカの表情が唾を飲む程にシンジを刺激する。明らかに自分の指がアスカに与えた刺激にアスカが一つ一つ細かく反応している。強く擦るとアスカは小さな声を上げそうになり、その度に唇を噛んで声を堪えている。たまに目をうっすらと開き、なじるように自分を哀し気に見つめる瞳が潤み切って、瞳孔が大きく滲んでいる。目の縁が赤くなって涙が浮びはじめている。シンジにはアスカの吐く息が火のように熱く感じられた。

 

 

 

 

 

 アスカの僕の脚を挟み付けている腿が、ぶるぶると震えている。
 僕の肩と背中に回した、バレリーナのように細い腕。
 そこに次第に力が込められていく。
 多分、もうアスカは一人で立っていられないんだ。
 アスカの部分から指を離し内腿の方に手のひらを滑らせると
 驚く程そこは濡れていた。
 僕のズボンがそれを吸いとって重く僕の足に貼付いている。
 僕はアスカの小さなショーツを腰骨の下の辺りから少し下に降ろしたけれど、
 アスカは何も抵抗しなかった。
 そのまま教えられていた通り、お尻の方に降ろすと
 呆気無い程簡単に腿の方まで裏返って、
 スカートの中でアスカの下腹部を遮るものが無くなった。
 もう少し片膝をアスカの両足の間に進めて角度を開かせると、
 手に感じられる程熱くなった丘にそっと触れた。
 そこは、驚くほど熱く、アスカの粘液状の体液が滴り、僕の手を濡らした。
 びくびくっ、とアスカの身体が揺れた後、アスカはきつく僕を抱きしめた。
 指をそっとその濡れそぼって溢れ出ている、柔らかいものの中に沈めていく。
 アスカは気づいていないだろうけど、アスカの身体が焦れたように、微かに
 僕に押し付けられている。

 

 「シ・ジ・・・だめ・・・め。」

 

 アスカが荒い息の中、消えそうな程、か細い声で泣き声を上げた。
 けれど指をさらに沈めながら前後させると、細く呻き声を上げて、アスカは僕の
 肩口に顔を埋め、強く押し付けたまま、何も言わなくなった。
 少し可哀想な気がしたけれど、指を2本にして両側の襞を交互に嬲りはじめた。
 切れ切れになった荒れた息が、さらに激しく僕の肩口で音を立てる。
 僕の視界には汗ばんだ喉と額におくれ毛が張り付いているのが見えた。
 声を必死に堪えながら僕の肩の上で頭を振って耐えている。
 真っ赤になった頬と、切な気な半分開いた目が僕を見つめていた。

 

 「はぁ、はぁはぁ、はぁ、はぁ、はあ。あ、」

 

 アスカの目を見ると、意識がもうすぐ飛んでしまいそうなのがわかった。

 

 

 

 

リンゴーン、リンゴーン、リンゴーン!

 

昼休みの終わりを告げる予鈴チャイムが鳴った。シンジは随分短い時間のような気がしていたし、アスカには随分長い時間が経ったように感じられたが、実際には40分間ほど、途切れなく愛撫しあっていた事になる。
シンジが離れると、アスカはその場に顔を手で覆ってしゃがみ込んだ。機械室のドアを開けると、冷たい空気が気持ちよく感じられた。シンジは少女の方をを振り返り、アスカの顔と首筋が見た事もない程、真っ赤に染まっているのに気づいた。

 

少年がアスカの手を取って握ると、少女はお願いだから先に行ってと懇願した。少年が振り返りながら階段を駆け降りていくと、機械室の扉が再び閉まった。少女はやっとの思いで、振らつきながら中腰になって、下着を脱ぎ、スカートの裏ポケットにしまった。ハンカチで、膝の裏側から疎頚部までの濡れた所を拭い取った。ショーツとハンカチから、誰にでも分かってしまう程の淫微な香りがつよく漂って来るような気がした。膝が抜けたようになり、くるぶしや足裏の感覚までが変になっていて、とても階段を降りられそうになかった。
だから、アスカは暗い機械室の中で、そこにうずくまったまま、暫くじっとしているしかなかった。火照り切った身体からまだ粘液が恥知らずに溢れてくるのが分かる。冬スカートの内布にそれが染み込んでいく。

 

「クリーニング、出さなくちゃ。」

 

ぽそっと、そんな言葉が口から出た。自分の身体が、他の生き物に作り替えられてしまったような気がして、アスカは恐怖さえ感じ自分の身体を強く抱きしめた。
女であることが呪のように感じられた。なんで・・・こんなになってしまったんだろう。なんで、こんな事に。ちょっと前の、優しいシンジの顔が浮ぶ。
だが、家に帰ればシンジはまた自分を求めて来るだろう。この身体では、もう逃れられない、とアスカは思った。自分は、シンジの思うままに翻弄され、泣き声を上げてシンジに縋りついてしまうに違いない。誇りも意地もなく、今までアスカとして築き上げて来た思考を感情も、全てを突き崩されて、あいつの女に、あいつの従属物にされてしまう。

 

そしてそれを嬉しいと思ったり、幸せと感じたりするんだろう。
その想像は恐ろしくもあり甘美でもあったが、アスカの微かに残ったプライドと生娘らしい破瓜への怖れが、何とか最後の一線を越えてしまう事を回避しようと、必死になって思いを巡らせていた。だが、この時アスカは、既にミサトに相談しようという考えを持っていなかった。そんな事をしたらシンジに叱られる、という怯えがそれを思いつかせなかった。アスカは、この時既にもう少年に精神的に従属していたにもかかわらず、それに気づかなかった。

 

ゆっくりと階段を降り、トイレによってもう一度念入りに拭き取る。ハンカチを洗って固く絞った。自分の身体を情けなく思いながら、なるべく事務的に。それが終ると、廊下の突き当たりの2Aまで。数学や物理の公式や、古典の朗読が流れる廊下を、刺激を押さえ、手すりに触れながらゆっくりと。後ろのドアに、手をかける。その扉をアスカは押せない。振り返るだろう皆の目が恐い。自分が何をして、どうなっているかを知っているような目が恐い。
喉の奥がひっつれた様に震え、何か大きなものがつかえている様に感じる。このまま走って逃げたいと思う。アスカは左手を額に当て、深呼吸をした。

 

すーはー、すーはー。

 

その息が、突然乱れた。


「あふっ、うっ、・・・ううっ・・・」

 

涙が、幾筋か続けてアスカの頬を落ちていく。
廊下の窓の隙間で、風が鋭い音を立て、雪がみぞれに変わってぐしゃぐしゃと叩き
付けられたようにガラスの縁に積み重なっていった。

 

 

 

 

 

As.-treat me nice-7.erousion in blackout curtain 【暗幕の陰の浸蝕】/2002-02-27