As.−Treat me nice

『見知らぬ世界 −交歓−』

komedokoro


 

 

 

 

 

「全くなんなのよあの女は! 初対面で、人の男に手ェつけるたぁ、いい度胸じゃないのっ!」

 

喚き散らしているのは、今日、ただの一つもいいことが無かった、哀れな 惣流・アスカ・ラングレー嬢、その人であった。その手にはミサトの大事なワインが瓶ごと握られ、それをラッパ飲みしているのだ。繋がったままボイルされたソーセージが鎖のように口の中に運ばれて行く。

 

「だいたいシンジもシンジよ。何よあの顔!デレーンとヤニ下がっちゃって、最低!」

 

そのシンジは、顔中を縦と横に碁盤目のようにされて、その上両方のほっぺたを赤く腫れあがらせていた。その上に強烈なパンチの跡が両目の周りを黒ぐろと囲んでいる。そんな状態でさらに後ろ手に縛り上げられ絨毯の上に転がされている。
帰った途端に、あたしの屈辱に対する償いをしろ、何れだけ苦しかったか追体験しろと無理難題を吹っかけられてこのありさまだ。

 

「アスカ。だって、あんただって代役やってくれって、あの子に頼んだじゃない。あの子は、一生懸命やってくれたんだよ。キスったって役の上での事じゃないの。焼きもちはやめなさいよ。(ついでにワインも助けて!)」
「は!誰が誰に焼きもちをヤクってのよ、本日ただいまから金輪際、あたしと碇シンジとは、何のかかわりも無い赤の他人でございますからっ。あんな・・・べっとりしたキスなんて、あ、あたしだってそんなにしてもらった事無いのに。あんな素敵な恋人たちみたいなキス。凄く似合ってた、ひどいよ。ゼ−ったい!許さないからねシンジッ!どうせ私の事なんか・・・。」

 

ぼろぼろ泣き出した。
もう発言も矛盾とか言う水準を通り越してめちゃくちゃである。
ミサトが間をとりもとうとしたけど、全く無駄で、アスカは安くはないワインをグビグビと飲み続ける。ますます手が付けられない状態だ。立ち上がるとシンジに近付いて、ドボドボとワインをシンジの頭からぶっかけた。

 

(「あ、ああああァァァ・・・私の秘蔵のワインが。」)

ミサトは声も出せずに涙に暮れた。

 

「ぶ、ぶはっ。あ、あれ?アスカぁ、ひどいじゃないか!」
「何が酷いのよ。あんたは私を裏切って浮気したのよっ。許せる訳無いじゃ無いのっ。ひどいよ、ひどいよシンジの馬鹿あ。あああーんああんあんあん。」

 

シンジは訳が分からない。さっきまで殴られ蹴られしていて、今だってワインをぶっかけられて目が醒めたのに、今度は首にしがみつかれてわんわん泣かれているのだ。しかし状況はつかめていないが、こういう時の対処法についてだけは、長年の労苦が彼に間違いを犯させなかった。

 

「ごめんよアスカ。不安になっちゃったんだね。もう2度と君を不安にさせたりしないから。僕が愛しているのは世界中で君だけだよ。」
「ほんとに?ほっんとにほんと?」
「当たり前じゃ無いか。僕が君に嘘ついた事、ある?」
「ううん。」
「だったら信じて。ね、僕だけのアスカ。」
「うん、シンジ、惨い事してごめんね。」

 

家に帰りつくなり、いきなりむちゃくちゃに引っ掻かれてボディと顔面に強烈な打撃を数えきれぬ程打ち込まれた。倒れたところで、加害者は自分のスカートをめくりあげてストッキングを脱ぎ、シンジを後ろ手に縛り上げて床に転がし、蹴って蹴って蹴りたくった。それが、『ごめんね』のただの一言でお終いである。
それでも変に言い訳して又数時間拷問の上に朝までここに放置されるより100倍もましであった。

 

「シンジ君もたいへんよねえ・・・。」

 

学校の担任であり、彼等の法的保護者でもある葛城ミサトは呟くだけであった。
シンジは溜息をついた。我が儘で乱暴で見栄っ張りな恋人のお守で、今日も彼は疲労の極にあった。確かにそんな所も彼の女の魅力の一つではあったし、素直な時のアスカは、いつもとは逆にこれ程可愛く愛くるしい恋人はいないと彼自身も思っていた。でも・・・。
くたくたになった彼は少しだけ、ほんのちょっぴりだけ思ったのだった。

 

「ああ、今日の一緒にお芝居をした明日香さんは、凄く素敵だったなあ。柔らかくてふわふわしてて、いい匂いがして・・・。口付けした時のあの蕩けるような感じ・・・。同い年なのにまるでそんな感じがしなかった。」

 

裏切り、という言葉がちらっと彼の心に浮んで、すぐに消えた。どうせ妄想だ。

 

「もう一度だけでいい。彼女を抱きしめてキスしたいな・・・。」

 

 

 

 

ミサトは7時からの後夜祭の監督で再び学校へ向かい、シンジとアスカはマンションに残った。他校の子も混じって、大きな焚き火を囲んで行われるファイアストーム。彼氏や彼女のいない生徒にはお待ちかねの催しであるし、仮にいても、公然と夜遅くまで過ごせる機会は高校生にとっては貴重なひとときである。この機会にもっと親しくなりたい。あわよくば彼女の汚れない唇をと、一段彼との階段を昇りたいと、健全な高校生が考えるのは当然であった。

 

しかし、アスカとシンジにとっては事情が違う。ステップアップを図るのは当然としても既にレベルが違うのだ。お風呂を湧かすと、2人は一緒にバスルームにはいった。帰りに立寄った美容院で綺麗に処置してもらった、いつもより薄い、シルバーブロンドに近くなったアスカの髪。少し短くなって髪型もいつもとは違い、ストレートのロングになっている。こうして、後ろから抱きかかえて湯槽に浸かっていると、他所の女の子といけない事をしているようでどきどきする。
彼等の名誉の為にいっておくが、2人ともちゃんと水着を付けている。ミサトがいないという事で、ちょっとした冒険を試みたのだった。

 

「や、やっぱり、凄く、恥ずかしいね・・・。」

 

アスカが消え入りそうな声で言った。先ほどまでの暴力行為の事もありおわびの気持ちもあって、シンジに一緒にお風呂に入らないかと持ちかけてみたのは彼女の方だった。一緒にお風呂に入らない?と口に出したあと、シンジの沈黙と自分の息苦しさに、決心はすぐに揺らいでしまう。

 

「あ、で、でも水着、つけて、だよ。」

 

顔が沸騰してるような気がした。シンジも顔を冷やしていた氷のうの向う側で、トマトのような顔になっている。アスカはさんざん悩んだ末、赤いビキニの水着を着た。最初はスクール水着にしようと思っていたのだが。
2人とも、心臓がバクバク鼓動を立てているのを意識しながらバスルームに入ったのだった。湯槽に浸かる時も恥ずかしさで顔が見れないので、アスカはシンジにもたれ掛かるような格好でお湯に沈んだ。シンジの手が自分の腰を回ってお腹の上で組まれた時は、全身に電流が走ったように身体が震えた。

 

アスカのお腹・・・柔らかい・・・。

 

胸にあたる、小振りで細い肩。毎日激しい訓練をしていたのに、アスカの身体は筋肉がまるで無いみたいにシンジの身体を吸い込んでしまうように感じられた。
アスカに触れる指先が、どこまでも沈み込んでしまいそうだった。

 

「アスカ・・・。いい?」

 

応えずにアスカは頷いただけ。シンジはアスカのお腹をそっと撫でながら脇に手を回し、唇で髪を掻き上げながら肩に唇を押し当てて首筋を昇らせていった。
身体中に電撃が走るのは何もアスカだけではない。シンジに取っても初めて直接触れる女の子の柔らかい肌は、身体が痺れる程に刺激的だった。俯くアスカの細く長く美しい首筋。上白糖のように細やかで甘い香りに頬をすり寄せると、見る見る肌の色が変わって行く。白からピンクにそしてさらに濃く上気して行く。
アスカが、溜息と一緒に首を持ち上げた。それを顎でかき寄せるように自分の肩に仰向けにのせると、今度は喉の横に唇を付けた。そこに舌を少し宛這わせて、同時に始めて脇からアスカの胸に手を当てた。何かが堅くしこっている。それに触れた途端、アスカが堅く目を瞑ったまま、小さく跳ねた。

 

「だ、だめ・・。」
「だめ?」

 

そう言いながら、そっと指に力を入れて手のひらを押し当てるように握る。溜息をついて、アスカが身悶えた。彼女の手がそれを外そうと思わず上がるのを、反対の手で押さえ付けた。そして大きく口を開いて、喉笛を軽く噛むと、小さく悲鳴が上がった。もじもじとアスカの腰が動く。太股の上に乗った彼女の腰の裏に、信じられない程膨れ上がったシンジの中心が押し当てられていた。恥ずかしさと戸惑いにアスカはどうしていいか分からなくなった。

 

「アスカ。」
「・・・恥ずかしい・・恥ずかしいよ・・・。」
「わかった?」
「うん。・・・シンジの。」

 

やっとの思いで喘ぐように言う。自分の乳房を包むようにそっと握っているシンジの手。その腕にしがみつくようにして、身体の奥底から沸き上ってくるような感覚に耐える。

 

「あっ。だめ。」

 

シンジの片膝が湯槽の中で持ち上がり、アスカの膝を割った。同時にもう片方の足までも腿の間に入って来る。とっさに両手でその膝を押して腿を閉じようとしたが自由になったシンジの手がその両膝を握って両脇に開かせてしまった。
同時に唇が奪われて、荒々しくシンジの舌が、アスカの舌を蹂躙した。

 

「あ、ん。あふぅ。んっ。」

 

頭の中が、恥ずかしさの余りスパークしたように爆ぜる。シンジの、あれが、自分の密やかな部分に、直接触れている。間にあるはずの布の感触がお湯のせいか感じられずに、むしろ生々しく感じられる。初めて感じる、シンジの男。荒い、男の子の獣のような息。これがシンジ?いつもの臆病で、優しいシンジなの?アスカは、怖れから泣きそうになる自分を押さえるのが精一杯だった。

 

「アスカ。僕のアスカ。わかる?」
「わかる。わかるから。あ、ああ。もう許して。」
「これが僕の。・・・君の中に入りたがってる。」

 

シンジの声。確かにシンジの声なんだけれど、もう、気が変になりそうだった。
それなのに、アスカの身体は、ジーンと、痺れるような、シンジの昂りに呼応する、自分の奥の方にある感覚を感じていた。それがアスカを恐れさせた。

 

「お願い、シンジ、もう止めて。変になっちゃいそうなの。」

 

思った程大きな声は出なかった。それどころか、か細い、まるで縋るような、懇願するかのような声にしか聞こえなかった。これ、あたしの声? アスカは、一緒にお風呂に入るなどと言い出さなければ良かったと、後悔していた。
こういう関係になってしまったら、自分が何れ程弱い、何の抵抗もできない娘なのかを思い知らされた。今、何もできないアスカは、完全にシンジの思い通りになる、ただの御人形のようだった。

 

「アスカが、こんなに弱かったなんて。」

 

シンジは信じられない思いだった。いつも誇り高く、押さえ付けるような態度を崩さないアスカが、今、自分の腕の中で、ひ弱な庇護下の少女になってしまっている。柔らかいアスカのあそこに、今自分の中心が押し当てられている。そう思っただけで、我慢できない程の圧力がかかって来る。アスカが身悶える度、シンジは歯を喰いしばって耐えた。それを耐えるうちに、アスカの声がもう切羽詰まって泣き出しそうなのに気づいた。見ると実際彼女の瞳からは涙が溢れていた。可哀想にと思う反面、涙を見た途端に感じた、このままアスカを蹂躙して、すっかり自分の物にしてしまいたいという欲望を押さえられなくなっている自分に気づいた。

 

シンジは、アスカの胸を覆っている赤い布の内側に手を差し入れ、そのまま固く尖っている乳首に指を触れた。

 

「あっ。」

 

そのまま、シンジの指は容赦なくアスカの乳首をくりくりと刺激する。アスカが逃れようと身体を捻るのを、反対の腕がしっかりと閂のように羽交い締めにする。

 

「いっ、いやあ。離してっ。」

 

シンジは手を離して、今度は両手で彼女を抱きしめ、動きを封じてから、そのまま自由な肘から先の手を使って、再び乳房を掴んだ。そして耳に口を寄せて言った。

 

「静かに。お隣に聞こえちゃう。」

 

はっとアスカが息を飲む。そのままシンジは欲望に任せてゆっくりと腰を上下に動かし、アスカの秘部に自分を更に強く押し当てて刺激を加えはじめた。押さえられた身体をもじもじと必死で動かし、何とかシンジの腕と膝の間から逃れようとするのだが、その動きはむしろいたずらに自分の身に強い刺激となって帰ってくるばかりだった。シンジが膝を思い切り開いて湯槽にアスカの両腿を押し付けると、少女は、行動の自由を殆ど奪われて、シンジのなすがままにならざるを得なくなった。

 

「あ、はあ。ああ。」

 

アスカの吐息に、切なさが滲みはじめたのにシンジは気づいた。明らかに今までの拒むだけの息遣いと違う、女としての甘い声は、本能的に男を刺激せずに置かない音色だった。僅か10分に満たないような時間のうちに、アスカはすっかりシンジの腕の中で抵抗する力を奪われてしまっていた。弾む息がもう押さえきれなかった。
愛撫に応えててしまう身体が、どのような状態なっているのか。アスカは少年の腕をもう払い除けようとはせず、頭を彼の肩の上に仰け反らせたまま、荒い息をつくばかりだった。その息遣いがさらに少年を昂らせる。シンジは力の抜けた少女の身体から片方の手を離すと力を込めて再び抱きしめた。アスカはもう逆らわずに身を任せている。それを確認して、シンジは最後の場所へゆっくりと手を伸ばした。

 

「アスカ。なんて可愛いんだ。」

 

実際、真っ赤な程上気した頬と、興奮と湯によって染め上げられた肌、ぼんやりとした目線と、半分開いた艶やかな赤い唇。そして長い首と投げ出された腕、開かれた内腿の眩しいまでの白さは、未経験なシンジに取って、震える程魅惑的だった。
その内腿に触れ、指を滑らせて行く。乳首と喉に愛撫を加えながら、アスカの弱々しい抗いとも言えない程の抵抗を無視して。そして、アスカの中心に指を伸ばす。そこに触れた途端、アスカの足が猛烈に湯を叩いた。

 

「だめっ!そこだけはだめえっ!」

 

思わずシンジはアスカの口を手で押さえ、必死になって膝で足を押さえ付けた。

 

「む、むぐぐーっ。いや、むぐううっ!」
「アスカッ、静かにしてっ。」

 

必死に首を打ち振るアスカの目が、責めるようにシンジの目を見る。涙が溢れている。一瞬怯んだ。その瞬間アスカはシンジの手を振払って身体を丸めた。反対側の浴槽の角まで飛び出して、自分の身体を抱きしめ、びしょ濡れの髪のまま、諤々と震えている。

 

「アスカ・・・。」

 

その愛おしいアスカの姿を見た途端、シンジの猛々しい心が、理性を取り戻した。

 

「ごめん、なさい。シンジ、ヒッごめん・・・。ヒッなさ。い。」

 

震えながら、アスカはこちらを伺って、嗚咽を押さえながら謝った。

 

「恐いの。まだ、だめなの。お願いだから、もう少し。」

 

アスカの怯えた目を見た瞬間、訳の分からない感情がシンジの身体を動かした。優しい言葉をかけたいと思った。なのに、シンジは無言のまま立ち上がると、アスカをそのままにして、バスルームから1人で上がった。

 

「シンジ!・・・シンジィ。」

 

くぐもった嗚咽が、浴槽から漏れた。

 

 

 

 

 

As.-treat me nice 4./2002.01.27