掃除洗濯家事アスカ〜Shinji Side〜




夕日が眩しい頃。
駅から徒歩10分の道のりは険しくて、ようやくたどり着いた我が家。

「ただいま。」

…返事が無い。
ちょっと、慣れてきたのが悲しいなぁ…
きっと居間でゴロゴロしながらポテチかじりつつテレビ見てるんだろうなぁ…

なんて。
アスカの行動パターンがわかってる自分はなんだかんだ言って、

「一番アスカの近くにいるんだもんなぁ。」

と、改めて実感する。
少し恥ずかしいけど、そのくすぐったい感じは嫌じゃない。
やっぱり、近いんだなぁと思って頬が緩む。

「…あれ?」

居間はがらんとしてる。
まぁ、居た形跡はあるけど…どうしたんだろ?

今日はこないだより早いし、朝にも話したし…もしかして寝ぼけてたかな?
う、う〜ん…

「…お風呂、とか?」

なんとなくそう思ったと同時に、卑猥な妄想が頭をよぎる。
僕だって…オトコノコだし。
鼻の下を隠しながら近づいたものの、物音ひとつない。

「どこ行ったのかな…?」

前に住んでいたとことさして間取りも変わりないこの部屋で、見つからないはずないのに…

「な〜にやってんのよ?」
「うわっ、わっ!?」

突然の声に焦って変な声出しちゃった…って、アスカなのはともかく。

「ど、どこいたの?」
「ベランダだけど?」
「めずらしいね、暑かったでしょ?」
「ん〜でも、気分良かったわよ。仕事した後の夕日は目に沁みるけど。」

仕事って…

「まっ、おかえりなさい。」
「ただい…ま…?」
「何で疑問系なのよっ!」

ぶん!

だ、だって珍しさを通り越してちょっと嬉しかったし。
その握りこぶしはしまって欲しいよ。

「っと、それはともかくご飯にしましょ。」
「うん、ちょっと待ってて。」

さ〜て、何つくろうかな…

「ほら、早く早くっ。」
「うん。」

とにかく夕飯の準備をしなきゃ。

…え?

「アスカ、これって…?」
「ふっふっふ。気づいたわね、アタシの力作をっ!」
「り、力作?」

いや〜匂いじゃまだ判断しきれないけど。
この香り…なんだろ?
味噌汁…?

「愛しのシンジ様にぃ〜愛を籠めて作りましたのよぉ〜」
「あ、う…」

その純粋を通り越した笑顔が怖いよ…それと口調も…

「ま、早く席に着いた着いた。」
「う、うん…」

何だか不思議な感覚で席に着く。
食卓にはまだ茶碗が俯いている。

「ご飯、つぐね。」
「こらっ、今日はアタシが主婦してんだからアンタは座ってるの!」

怒られました…なんか、複雑…
いつもはあそこに立っているのが自分なのに…
う〜ん、そわそわする。

アスカといえば、どうやら鍋に火を入れてる様子。
あ…葱入れてる。

「よし、出来たわよっ!」

僕に背を向けたままガッツポーズ(?)
出来たばかりの味噌汁を手際よくよそって、何やら不敵な笑みを浮かべて僕の前に。

「どうぞ。」
「あ、ありがと。」
「ご飯は大盛りね。」

返事を言う前にさっさとご飯も目の前に来てしまう。
う…晩御飯はいつも少なめなんだけどなぁ。

「さぁ、食べましょ。」
「頂きます。」

うん、炊き立ての良い香り。
味噌汁も…

「あれ、具は…」
「玉葱が入ってるでしょ?」

おかしい。
確か豆腐もあったし、菜っ葉もあったと思うんだけど。
箸で底を覗く間もなく、玉葱と葱しか見えない。

「アスカ、具沢山のほうが好きだよね?」
「あ、アンタに合わせてあげたのよっ。」

何故かソッポを向く。

確かに僕は玉葱とかモヤシとか、あっさりしたのが好きだけど。
折角作ってくれたのに…どうして…
わざわざ僕に合わせるって…

「ねぇ、どうして…」
「うぬぬ…この鈍感馬鹿!」

びしぃっ!

うわっ!?
目を貫かんばかりに箸を向けてきた。

「さっき言ったでしょ!アンタに合わせてあげたんだって!」
「そ、それは聞いたけど…」
「むきぃー!」

今度は地団駄…いったいどうしたっていうんだ。
あ、止んだ。
う…視線が痛い…

「いーい?耳の穴かっぽじってよーく聞きなさいっ!」

「こ、これはいつもの礼よ、味わいなさい!」

びしぃっ!

…れい?
お礼ってこと?
な、なんかしてたっけ僕…?

「ぼけっとしちゃってぇー!くぅーこれだから朴念仁の唐変木って言われるのよっ!」
「え、え〜と…」
「いや、ここはちゃんと解りやすく言わないと…」

ぶつぶつ…
なんか考え込んでるみたい…
でも、朴念仁…その上、唐変木って…濡れ衣を着せられた気分だ。
だいたいアスカだって…

「もーいちどだけ…言うわよ。今度こそ解りやすくね。」
「う、うん…」

「あ…あ、アンタのために、こ、心をこめて…作ったの…」
「えっ?」
「あ、アタシのき…き、気持ちなんだから…好きなのを、作ってあげたかったの…」

な、なんかいつもと様子違う。
しおらしいというか…胸に熱さが蘇る。
言葉じゃ上手く伝えられそうにも無いけれど。

「あ…り、がと。」
「ばっ、これくらい大した事じゃないし。」

やっぱり…どうにも落ち着かない。
身体が…先走る。

ぎゅっ…

「し…」

数分前には思いもしない。
でも…形で示すには…

「…味噌汁、冷めるわよ。」

胸の中にいるアスカに、耳元で改めてお礼の言葉を告げた。

「ありがとう。とても…嬉しいよ。」

衝動的なのは誰に似たのだろう?
両の腕で強く…優しく抱きしめる。
アスカの鼓動で癒されるこの感覚は、今までに無く愛おしい。

自然に…重ねた唇から有りっ丈の愛情を注ぎ込んだ。

「今度は、一緒に作ろうね。」
「…気が、向いたらね。」

あくまで素っ気無い声から嬉しさがにじみ出てるのは、鈍い僕にも解りやすい。
優しい時間が味噌汁が冷めるまで…続かないことも。

うん…角が生える前に…美味しい味噌汁を頂こう。

「お代わり、たっくさんあるんだからね?」

味噌汁を啜りつつ、冷や汗がたらり。
どうやら食べ終わるまでここにいなきゃだろうなぁ…
微笑む彼女は、既に角が生えているのかもしれないと…思いたくは無いけれど。
う…胃袋に詰めきれるだけ…頑張ろう。




〜あとがきかな?〜

なんだか復活したのも束の間…いや、言い訳はすまい…
今更ながら終了と相成りました。
どうも、若月でございます。

「1st Flag」の方で投稿しました「Asuka Side」の続きです。

あ〜タイトルなんですけど、一応「炊事洗濯家事親父」から捩った感じです。
一応順序立てて書いてみようと…今更続きでなんですけどね(^^;
サン○クロースから捩ってザ○ダクロスみたいな感じです。
いえ、気にしないでください…

それと何気にローマ字で「Asuka」ってしてます。
ワザと言えばワザとなんですけど、意味とかはないのです(爆)
突っ込まれないので、今更続きの言い訳でした(笑)

苦し紛れでもうひとつ。
ホントは手直ししようかとも思いましたが、やっぱり止めときました…
どうにもこうにも…強引過ぎたのもありますが未熟者には精一杯というか…
私としてはある意味変わった書き方をしたかったもので、こういう前後編という形にしようと思いましたので。

出来れば昔みたくぱぱっとさらさら書き綴ったほうが、私らしく表現できたのでしょう…(^^;
リハビリの一環ということで、次に繋げたいと思っております。
ぐだぐだな感が否めませんが…(--;


長々となりましたが、改めて「アス旗2F」のご開設おめでとうございます。
私めも微力ながらお力添えしたいと思います。
これからもボチボチ書き続けていきたいと思っていますので、こめさん、霧島さん、どうか末永いお付き合いを。

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