MerryMerry…?






注)てきとーどころかけっこーな脳内設定満載な感じなのですが、LASなのは間違いないです?
  多分、うん年後の師走の二人が休日にゆっくりのんびりしっぽりまったりするような…お話だと思います。







AM08:30

スノーホワイト。
眼下に映る全てが白に変わり、見上げる空からは止む気配も無い雪。
車の数も少なく、歩く姿がやけに目に付く。

遅い朝。
毛布を被ったままでベランダに出たアスカは…ぼーっと、くしゃみが出るまで見下ろしていた。

「へっ…っくしゅ。」

同時に白く上る息。
ぶるっと身体を震わせて、食卓へと戻る。
コーヒーの一杯でも飲まないと温まりそうに無い。
もちろん空っぽの胃のことを考えれば、何か食べることも大事だろう。
と、考えることすら面倒になったところで、漸く食欲を目覚めさせる香りに気づく。
するとシンジも気づいたようで声が掛かる。

「おはようアスカ。ご飯、出来てるよ。」
「おはよ。」

とりあえず声に反応して無愛想に返事。
毛布越しに椅子に座ると、もう一度身体を振るわせた。

「っとに、寒いわね…」
「はい、どうぞ。」
「ん、ありがと…」

ずずっ…

今朝はコンソメ風野菜スープ。
胃から身体全体に熱が行き渡る。
優しい味と少し舌を刺激するペッパーの味。
柔らかな野菜と、一口大に切りそろえられたウィンナー。
アスカは少しずつ胃に収めていく。

ありふれた光景に頬を緩ませて、シンジは満足そうにスープに口をつけた。


AM09:00

一息。
薄いコーヒーを一口飲んでは、ぽーっと目の前のシンジを見ている。
食後。
僅かな安らいだ時間は、外の寒ささえ忘れさせていた。

「今日は…あ、休みか。」
「最近忙しかったから、感覚も忘れちゃうよね。」
「ホント、ミサトのやつがこき使うからねぇ…はぁ…」

ため息も、これから束の間の休みをのんびり出来るかと思えば勿体無く思う。
二人で過ごす時間がずいぶんと減った今。
与えられた休日をどう過ごして良いかも解らない。

「外は寒いし、今日はのんびりしましょ。」
「アスカはぐーたら、でしょ?」
「あーもーアンタってだんだん口悪くなってきてるわ!」

本気で言っていないのがバレているように、シンジは僅かに微笑んだ。



AM10:40

ぐったり、いやぐっすりとソファーで眠るアスカ。
朝食の片付けも済ませたシンジは一人、ミサトから頼まれていた仕事に精を出していた。

カタカタカタ…

たいした仕事ではない。
正直、今しなければ間に合わないというわけでもない。
ただ、急を要する仕事と重ならないように出来ることは済ませようと考えていたからのこと。
ミサトも『貧乏籤引くわよ』と半ば呆れながら頼むことにしたのだ。

カタ…カタカタ…

「ふぅ…なんだか、ゆっくり時間が過ぎているみたいだ…」

忙しい年末を控え、休日を貰える事自体喜ばしいこと。
とはいえ…何故だか外の喧騒とは一線を引きたい自分が居た。

皆がすることを、不定休な自分たちがするのは不釣合いなのでは?
どちらかといえば、人通り少ない平日の昼間に二人で街を歩く方が当たり前のような気がする。

「………」
「…んっ…すぅ…」

心地良い寝息のリズムとタイピングの音。
気が付けばもう10時も半ばを過ぎている。
ゆっくり背伸びをすると、残り少ない仕事に目を向ける。

考えを改めよう。
今日はやはり、大切な日なのだ。

「お昼は軽く済ませて…久しぶりに何処か出かけようか…なっ、と。」

色々と模索しながら、時計の針は刻々と刻み続ける。
アスカはもう何度目かの寝返りを打っていた。



PM12:20

早めの昼食はあくまでアスカのご要望。
片付けも済んで、一息ついたところで。

「久しぶりに二人で出かけるってのはどう?」
「…こーんな寒い中に出かけるですって?」
「あ、いや…そのデートのお誘いなんだけど…」
「デート、ね。朝も言ったけど、今日のアタシはのんびりしたいんだけど?」

どうにも姫のご機嫌は宜しくない様で、すっかり落ち込むシンジ。
項垂れた顔にそっと指が這う。

「だから、二人でのんびりするのじゃ駄目?」
「え、あ…」

見上げると何処か艶かしいアスカ。
這う指はシンジの唇へと誘われる。
優しく撫ぜるように、跳ねた指は本人の唇へ。

「ね、今日はゆっくり…しましょ…?」
「ゆっ、くり…っむ…」

テーブル越しの淡い口付け。
離れる刹那にシンジの上唇を嘗め上げる。

「ほ〜ら、こんなとこじゃなくて…ね?」

冬の風は気まぐれ。
アスカはすっと立ち上がり見下ろしながら、にぃっと微笑んだ。



PM08:50

シンジの腕の中、眠るは栗色の髪の乙女。
濃密な時間はあっという間に過ぎ去り、肌寒さに目を覚ました。

「んぅ…あ…さむっ…?」

見渡すと余りの暗さに時間の感覚が判らなくなる。
じわりじわりと思考が回復すると、なんとか状況に気が付いた。

「げっ…もう真っ暗!?」

目が慣れるのに時間がかかったが、枕元の明かりを漸く付ける。
身体を起こし、毛布をマントよろしく着込んだ。

「…すぅ…」
「…ったく、幸せそうに寝ちゃって…久しぶり、だったけどさ。普通は逆なんじゃないの?」

うりうり。
アスカは頬を突付きながら、シンジに負けず劣らずの笑みを浮かべる。
寝起きの気だるさがなんともいえない心地良さと同化しているようだ。
起きてしまえばまた、いつもどおりの日常…だからこそ、この一時は何物にも変えがたい。

「しっかし…今日が何の日かくらい、覚えておいてもいいんだけどねぇ。」

12月24日。
気が利く上司のおかげで貰えた休みだったはずが、ありふれた休日と消えていく。
昼にはシンジなりに気を利かせて外に出ようと提案してきたのだろうけれど…何か違う。

アタシは『二人の時間』が欲しかった。
時間や場所は関係ない。
寧ろ、誰にも邪魔されず移動など考えず…『ありふれた休日』こそが性に合っているように思うのだ。

だからこそ…これもアリか、と思ってしまう。

もう少しだけ、至福の頬付きを堪能しよう。
起きたら二人だけのイブを…

ちゅっ。



PM09:10

気が付けば、時計の針も規則正しく動きすぎていた。
ぱちっと主夫は漸く目を覚ます。
モーニングキッスすら気が付くこともなく。

「…え…わーっ、ごめん!寝すぎちゃって…す、すぐ夕飯準備するから!」
「はいはい、せいぜい『らしい』ご馳走をよろしくね。」

シンジはバタバタと忙しく着替えを済ませ、寝室から飛び出す。
パタパタと手を振りながら、含み笑いはアスカから。

「ふふふっ…な〜んか、これって幸せよね?」

戸が閉まって少しだけ伸びをして、ゆっくり着替えを始めた。



PM09:45

髪を梳いて、足取り軽くリビングへ向かうとTVをつける。
街もそれはそれは賑やかだと生中継のレポーターは囃し立てている。
キッチンから漂うに匂いのせいで大して集中もせずに流し見ていると、シンジから声が掛かった。

「出来たよ。」
「はーい。」

素直に返事をするやいなや、TVの電源OFF。
食卓へと急いだ。

「ご、ごめん…あんまり良い出来ではないんだけど…」
「アタシは別に急かしたわけじゃないんだけど。ま…上出来じゃない?」
「そ、そうかな?」

食卓に並べられた『らしい』ご馳走は一面に並べられている。
ケーキこそ無いが、七面鳥の代わりにチキンソテー。
色鮮やかなサラダとスープは朝の残り。
ご飯はカレー風味の焼き飯。
ディナーというより…なんというか、出来合いというか合わせ過ぎた夕飯だ。
『らしさ』はチキンソテーくらいだろうか?

「せめてケーキぐらいは準備したかったんだけど…」
「まぁ、そこに『飾ってる』赤いの一、二本空けてチャラにするわ。」
「飾…え、それってミサトさんの?」
「せっかく置いて下さっているんだから、飲まない方が罰当たり…な〜んてね。さっ、グラスはアタシが出すわよ。」

子供のように笑うアスカに急かされて、バツが悪そうに戸棚の奥に閉まってあるそれを取り出す。
うん年物のなんとかだとか、それはもう薀蓄を語る彼女の姿が思い出される。
ただ、グラス片手に笑う姫はきっと何も思うところすらないのだろう。
恐る恐る取り出し、丁寧に慎重に壊れ物を扱うように姫の前へと向かう。

トクトク…

「んーこれは良い香りねぇ。」
「そ、そうだね…」

どう言い訳しようか考えながら、自分のグラスにも注ぐと意を決して口に含む。
正直…味も香りもわかったものじゃなかった。



PM10:30

「あーやっぱビールは旨い!」
「結局、そうなるんだよね…」

もう何本目かの空き缶が所狭しと並んでいる。
見慣れた光景だが、消費者が違う。
シンジも付き合い程度に飲んではいるが、アスカとの差は歴然だ。

「…まぁ、こうして飲めるのも『頑張った』からだよねぇ〜」
「え、あ…違うよ。『頑張ってる』から、でしょ?」
「んくっ…そうね…」

アスカが飲み干した缶で最後。
ストックはもう無い。
彼女が顎で示すは冷蔵庫。
どうやらまだご所望の様子。

「えっと…もう、無いよ?」
「えーケチー冷蔵庫んなか入ってるわよ〜」
「だから、それが最後だったんだよ…」
「じゃ、アンタのちょーだい。」

すっとシンジの缶を奪うとぐっと呷る。

「…ふふふ〜かんせつちゅーだ。」
「あはは…もう、大丈夫…?」
「がーっ!かんせつちゅーをばかにするなー!」

理不尽な怒りがシンジを襲う。
彼も慣れた様子で、姫が落ち着くまで延々と説教を聞くこととなった。




PM11:58

目を覚ますと月明かりが眩く輝いていた。
もぞもぞと動こうとするが、彼の膝枕で寝ていると知るや…恥ずかしそうに声を掛ける。

「お、おはよう…」
「ん…寝ててもいいよ。」
「ううん、今…何時?」
「もうすぐ、日が変わるね。」
「あ…そうなんだ。そっか…」

何故だか寂しくなった。
イマイチ記憶には無いが、悪い酒になったことは間違いない。
…ムードも何もあったものじゃない。
首を傾けると明かりの元と目が合った。

「でも…月が綺麗ね…」
「うん…」

蒼白い月は幻想的で神秘的で…吸い込まれるような感覚に陥る。
掛けられた毛布から、シンジの膝から抜け出るように起き上がると、彼を背中越しに抱きしめた。
腕はお腹の辺り。

「暖かいね…」
「こうするともっと暖かいでしょ?」

二人羽織のように毛布で包む。
膝を立てているため、必然的にシンジの右肩に顎を乗せる。

「痛い?」
「大丈夫…でも、ちょっと足崩すよ。」
「あ…そうね。」

胡坐を掻いたシンジの肩の上に再び感触が戻る。。
丁度、時計が鳴った。

ゴーン…

「クリスマス、か…」
「そういえば、アンタは仏教じゃないの?」
「そ、そんなこと…『今』誰も考えてないよ…」

シンジの、少し冷たい手が重なる。
アスカは指を絡められるように、両手を反した。

「もう少し、このままで…いいでしょ?」
「うん、アスカの膝が痛くなるまでは。」
「ば、バーカ…」


夜は更ける。

月明かりの元で、全ての人に幸せを…



Merry…MerryChristmas











〜あとがきみたいな何か〜

ええと…長らくお休みしていました(笑)
しかし、今回は思いつきで書いたわけですが…少し凝ったつもりで(^^;

クリスマスというと、街の喧騒というか賑やかな『イメージ』があるのです。
しかし、田舎住まいな私にはまったくの『イメージ』でしかないので…
クリスマス演出も微妙に、微笑ましい二人の日常を書いてみました。

調べてみると2023年くらいはけっこー明るいクリスマスのようです。
ちなみにその年だと満月は27日になるようですね。
14+8=24…なるほど、24歳設定ですねー今作では(笑)

今年も仕事だなぁ…来年はどうだろう…?

ずいぶんと暖めているものを吐き出しつつ、出来上がり次第、またお世話になろうと思います。

それでは『MerryChriarms』

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