*お子様禁止*


【君がいるだけで外伝・始まりはいつも君】

作・何処







うぅん…


ん…


…未だ夜か…








誰こいつ…





何だシンジか…





…睫毛長いのね…


…あったかいな…


…眠い…





ん…何か…


…え?


…あれ?


…おや?


違和感…何だろう…


眠い目を瞬かせ、私は何か感じた違和感の原因を探す。

目の前でかわい…間抜けな寝顔晒してるこいつは碇シンジに間違い無い、それは確かだ。

しっかし…変わんないわねこいつは…

まあ、14歳の時に比べれば背も伸びたし、遥かに大人らしくなったが、やっぱり幼い顔立ちだ。
最もお蔭で稀に年相応の表情などされると妙に落ち着かないのだけれど…


むう…


おかしい。


やっぱり何かがおかしい。


…何だろ?


ええと…





…よし、疑問点を挙げてみよう。


先ずは…


…何故私はこいつの寝顔を至近距離で眺めているのだろうか?


…そして何故私はこいつの横で寝ているのか?


横…



…へ?



だ…誰が誰の隣で寝てるって?

答え…アタシがシンジの隣で…





“ピシッ!”





音を立てて空気が凍った。思わず息を飲む…てゆうか呼吸が止まる。

…心臓の音が比喩でなく聞こえて来る…






…待て。

待て待て。

待て待て待て。

落ち着けアタシ。

先ずは呼吸、ゆっくり吸ってゆっくり吐く、落ち着け、落ち着け…


よし、先ずは現状把握。



ええと…



アタシはシンジの隣に寝ている。
同じ布団に入って。
しかもアタシはシンジの腕を枕にしている。



え?腕枕?



…アタシの頭の下には確実にシンジの腕が存在している。
うん。それは間違い無いわ。

…間違い無いのが問題なんじゃない!一体何事!?



にしても…



まぁ気持ち良さそうに寝てるわね…

しかし…何故私シンジの腕枕で寝てた訳?



ゾクッ



上意に背中を寒気が走り私は思わず肩を…

肩を…

肩…





え?


あ、あれ?


アタシ…
何故ノーブラなの?



いやいや、それ以前に色々あるだろ私。


ノーブラ以前に全裸じゃないのアタシ。







全裸…誰が?


誰が?って…





改めて状況確認…

観察結果を思考…

…結論。

私達は朊を着てない。






…私達?
って誰?





決まってるじゃないのアスカ。ここにいる二人以外誰がいるのよ。





…二人って…





アタシとシンジ…





…は?





「!?!!!?!?!《


…声にならない悲鳴を上げそうになり思わず自分の口を押さえた時、アタシは自分の左手の薬指に感じた違和感に総てを思い出した…


あ…



…そっか…しちゃったんだよね…アタシ…



安堵の吐息を吐くと同時に私は…その…もう一つの違和感を…つまり…自分の肉体、それも足の付け根からおへその辺りで…





脈拍が16ビート。





…本当に私、しちゃったんだ…



動悸が更に激しくなる。



うわぁお…



実感…

…ヒカリががに股で歩いた理由が判る。なんか未だ…刺さってる…って言うか、挟まってる感じ…何か変なの。



しかし…痛かったぁ…



膣は東洋系は固いから慣れるまで大変だと教わってはいたけど…

そう教えてくれた講師の女性軍医は確か今はスイスにいる筈だ。私が生きていると知ったらどんな顔をするだろう。
軍事教練は私に一通り性暴行に対する対処から何からを…生理前の子供に…教えてくれた。

しかし知識と実践の格差は何と言うかまあ…

エヴァで腕落とされたりするよりマシ…でも無いかな。

エヴァのフィードバック感覚は一応セイフティが掛けられていたから感覚的な痛みは一定以上にはならなかったからね。


…加害者たる碇シンジ君はまぁ安らかな寝顔で…痛かったんだぞこら。

でも…痛いけどもっと一緒になりたくてしがみついて…





…あ。





…後でシンジの背中に薬塗ってあげよ…



改めて左手の薬指を見る。
炭素結晶とそれを支える貴金属リングが常夜灯に輝く。

「…えへへ…《

誕生日にシンジがくれたこれをつけて今日…もしかして昨日…私はシンジを迎えた。

二人きりのクリスマス。

シンジが買ってきたチキンとポテトがテーブルに乗り、私は自作のシチューとサラダを並べる。
シンジの作るガーリックトーストにオニオンスープ。
初めて飲んだシャンパン、初めて作ったケーキ。
そして…

シンジのくれたプレゼントの箱を前に私は言ったの。
「これは受け取れないわ《って。

驚くシンジに私はネックレスを外しながらこう言ったわ。

「これは来年貰うわ。その代わり、今年は別のモノが欲しい。《

戸惑うシンジの前で、外したネックレスをテーブルに置いて私はシンジを見つめた。

「私はシンジが欲しい。だから…シンジを頂戴。そして…私のプレゼント…受け取って。《

私はプレゼントのリボンを外し、チョーカー代わりに首に巻いて微笑んだの…





…待て。


…ねえ…


今のい、一体誰?
だ、大体だ、誰がそんな…そんなは、恥ずかしい事を…



誰って…



…アタシだ…







あう…


あ…うあ…


うああぁぁぁ…


うひゃあ!はわわわわぁっっ!!

な、なんて事をアタシったら!

あ…あああああああああっっっ!!!

はっ…はっ…ははは恥ずかしい~~~っっっ!

し…少女趣味にも程があるわよアスカ!!いいい一体どうしちゃったのアタシったら!

し、ししし正気の沙汰じゃなな無いわここここんな、こんな、こんな…

あ!

そ…そうよシャンパン!シャンパンのせいよ!ア、アルコールの酩酊作用がわ、わ、わわわ私をあああんな行為に…行為に…

行…為…

こ…う…


い…





い…嫌ー―――っっっ!

こ…こんな事誰にも言えないっっっ!



「ううん…《

「!?《



恥ずかしさの余り身悶えした拍子に私はどうやらシンジを蹴飛ばした様だ。シンジは寝惚けた様子で…

…ヤバいドキドキが止まらない…



「…むにゃ…《



…又寝た。



…ふう…



良かったぁ…今シンジと目を合わせたら殴るわね間違い無く…

そこまで思考した時点でふと我に帰る。



…照れ隠しに殴るって何よそれ…



シンジは又寝入った様だ。規則正しい寝息に私も眠気を感じる。
頭の下にあるシンジの腕…
私を助けてくれる腕…
弐号機の初陣でも
浅間山でも

…ゼーレの秘密研究所でも…

「ふふっ…えへへ…うふふふっ…《

えい!頬擦りしちゃえ!



…でも腕枕って大変よね…


首を返して周りを見る。布団から落ちた枕を発見、手を伸ばして引っ張り込み、シンジの腕とアタシの頭の間に挟む。

少し見下ろすシンジの顔、キスしちゃおうかな?

「えへへ…《

シンジのほっぺにキス。
そして私は目を瞑りシンジに抱きついた。


ん~シンジだぁ…


あったかーい…





…あ。


…これって…


凄…熱くて…硬…


…じゃ無くて。


ねえ、当たってるわよシンジ。





…て言うか…


まさか…あんた起きてるんじゃ無いでしょうね!?


「…アス…カ…可愛い…《


な!な?ななななな!?!!

ま、ま、待て待て待て。
お、落ち着けアスカ落ち着けアタシ…

再度観察…

…寝てるわね

…考えて見れば起きてるシンジからこの台詞は無いわ…

ほっ。

シンジの寝顔を改めて見る…クスッ、可愛い…

至近距離から見るシンジの寝顔…

「うふっ、クスクス…《

考えてみればアタシの初めてはコイツが沢山持ってきた。
そして…
君の初めてをアタシも沢山あげたんだぞ碇シンジ君!
そう、14の出逢いから始まりはいつもこいつだった。
そして今夜…

「…うにゃ~…《

ワォ、照れるわぁ…




…裸で同じ布団の中で、しかも自分から抱き付いといて何が“照れるわぁ”よ…




…あ、でもやっぱり恥ずかしい…

赤い顔をしてると自覚。

我ながら…女の子してると思う…


布団の温もりが気持ちいい。

もう一度シンジの寝顔にキス。


すっ…ごい…満足感…


私は充足し、満たされ、再び眠りの国へと融けて行った…



うわぁ…



最高…



ああ…



幸せ…



なんか…もういい…



…シンジ…



…ねえシンジ判る?



アタシね、あんたがいいの。



アタシはもうシンジがいるだけでいいわ…



「ん…シ…ンジ…《



…ス…キ…





『おめでとう、アスカちゃん』



…マ…マ…?







◆◇◆


朝…

シンジに抱き付いたまま目覚めた私はシンジにおはようのキスをした。

…うふっ…

あ、起きた。全く寝坊助なんだから…

…ふふっ…

あ…ん…



…え?

…あ、あれ?

な、何よ?え?

あ、あのシ、シンジ?

…ち、ちょっとシンジな、何朝から…え?あ!ま、待っ…ん…あ…だ、駄目…

や!あん!

…あ…



◇◆◇





ん…

はぁ…参ったわ…

…あ…又寝てるし。

…全くこの男はぁ!こんのぉエロシンジぃ~!


…って…その…少し…痛くなかったから…


…うにゅうにゅ…


ハッ!も、もうっ!な、何言ってるのアタシったら!し、仕方ないからあ、相手してあげただけじゃないの!
ほ、本当に全く男ってのはしょうがないわねぇ…え?!も、もうお昼!?!!
ヤバい!起こさないと予約してたレストランに!

ち、ちょっとシン…


…え?


う、嘘…


…何でまだこんなな訳?


…どうしよ…


…この調子だとアタシ…身体持たないかも…


アタシは途方に暮れて寝転けるシンジ…と…その…シンジの……を只眺めていた…



◆◇◆



…結論。

シンジはバカシンジからエロシンジにクラスチェンジしていた模様。

はぁ…やれやれ…



…追記。

斯く言う自分ももエリート天才美少女な“私”から重度の恋愛中毒患者な馬鹿女の“アタシ”に転落していました。はぁ…


…ま、いっか幸せだし。


テヘッ!






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